試練か真実
オリバーたちは村の一室で休んでいた。
初めてのクエストを終えたばかりで、皆少し疲れていたが、村長からもらったフルーツを味わおうとしていた。
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一方その頃、サボンは女性専用の兵舎に戻っていた。
仲間たちが未だに戻らないことに、彼女は深い不安を抱いていた。
このまま待機して、救助隊の結成を待つべきか。
それとも、今すぐにでも仲間たちの行方を追うべきか――
悩みながらも、報告書を書こうとしたが、精神的にも肉体的にも疲れ切っており、ベッドに横になった。
目を閉じると、デハーマ帝国での出来事が思い出される。
「私は外で望遠鏡を使って偵察してたけど、脅威は見当たらなかった。
みんなは前線向きだけど、私は経験不足で……。一緒に行けなかった」
もっと自分に力があれば――そう思いながら、サボンは涙を浮かべた。
ティナちゃん、ミーチ、ベラリザ。無事でいて、と心の中で祈っていた。
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その頃、デハーマ帝国の地下。
高い笑い声がこだまする。
「ヒッヒッヒッ……アッハッハッハッハーー!」
「いいわ、いいわ! これでシャドウブラッド兵の完成が近づくわ!」
謎の人物が叫ぶ。
「おい、メイド一号! 早くお茶を淹れなさい!」
しかし、そのメイドは両腕を前で拘束されており、片方の肩には機械の義手がつけられていた。
口には猿轡がはめられており、無言のまま不機嫌そうな顔で紅茶を淹れる。
「まったく……あんたらはバカだねぇ。この城に侵入しようとするなんて」
奥から、他の二人のメイドが食事の台車を運んでくる。
「ふっふん……デリシャス!」
紅茶の味を堪能しながら、謎の人物は満足そうに笑った。
そのメイドたちの正体は――サボンの仲間たちだった。
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一方、オリバーたちは部屋でリラックスしていた。
皆、床に座り、村長がくれたフルーツを味わっていた。
オリバー「このフルーツ、名前は知らないけど……うまいな、これ」
タツミ「確かに美味しいです。もぐもぐ」
アレックス(ノートに)「うまい!」
メリア「新鮮なフルーツは、どこでも正義よ」
異世界のフルーツを堪能した一同は、やがて食べ終わり――
オリバーが提案する。
「遊びしようぜ!」
「いいよ」と皆が答える。
オリバーはボトルを取り出し、説明を始めた。
「遊びの名前は『試練か真実』。
ルールは簡単。ボトルを回して、飲み口が向いた人が“試練”を受けるか、“真実”を答える。
ボトルの反対側に座ってる人が“真実”を質問できる。たとえば、『好きな子いる?』とか。
『はい』って答えればそれで終わりだけど、答えたくなかったり嘘だとバレたら、代わりに“試練”を受けてもらう。
腕立て10回とか、ちょっとした罰ゲームな。OK?」
オリバー「小さい頃、よく近所の友達とやってたんだよ」
タツミ「な、なるほど……。若干違うけど、まるで“王様ゲーム”みたいね」
オリバー「王様ゲーム?」
タツミ「後で教えるよ」
メリア「それじゃあ、始めましょ!」
四人は輪を作り、ボトルを回し始めた。
最初のターン、ボトルの飲み口はメリアに止まり、反対側にはタツミ。
メリア「早速私か」
タツミ「ええっと……好きな料理は?」
質問のリストをまだ考えていなかったタツミは、軽い質問を投げた。
メリア「イタリア料理よ」
オリバー「おお、イタリアンか! ピッツァとマッカローニが好きなんだーね」
(イタリア人のような喋り方で)
メリア「はいはい、好きですよ」
オリバー「ちなみに、質問された人が次のボトルを回すんだ」
タツミ「じゃあ私が代わりに回します。メリアにはちょっと大変そうだから」
※メリアはまだ妖精サイズ
タツミが回したボトルは、アレックスに止まる。反対側はオリバー。
オリバー「よし、じゃあ質問。今、彼女いるの? イエスかノーで」
アレックス(ノートに)「ノーだ」
オリバー「おっ、マジか! いると思ってたわ~」
「まあいいや、次アレックスの番な」
アレックスがボトルを回す。今度は飲み口がタツミに向き、反対側はメリア。
メリア「じゃあ私が質問する番ね」
(ここは定番のやつをぶっ込むか)
「この場で、気になる相手はいるのか?」
タツミ「えっ、あっ、えっと……パス!」
心の準備ができていなかったタツミは、慌てて答えを回避した。
メリア「じゃあ試練ね。ゲームが終わるまで語尾に“にゃん”をつけること!」
タツミ「わ、わかりましたにゃん……」
それを見てオリバーは――
(ぐはっ、可愛い! お、おちつけ俺! 平常心だ、ポーカーフェイスだ……!
いや、どっかの漫画で“素数を数えると落ち着く”ってあったな。えっと、2、4……いや違う、素数ってなんだっけ!?
うおおおお! 数学の授業で寝るんじゃなかったーー!)
オリバーの心に999のダメージが入った。
タツミ「回すにゃん」
今度は、アレックスとオリバーの番に。
アレックスが質問する。
「好きなものは?」
オリバー「アニメ、漫画、ゲームだな」
そうして、オリバーたちは“試練か真実”という異世界でも通用する(?)遊びに興じていた――。