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第13話 ハインリヒの決意

 夕食を終えた私たちは、お姉さまの部屋に向かった。


「全員あつまったか?腹黒侍女がいないじゃないか」

「アマラは外に控えさせていますが」

「あいつも呼んでくれ。そのほうが面白い」


 この二人が絡むと話が進まなくなりそうなんだけど。

 少し不安を覚えながらも、アマラを部屋に呼び込む。


「じゃあ今度こそ集まったから始めるか。まずはマリア、初めての長旅ご苦労さん」

「いえ、面白い経験ばかりで……疲れてなんていられません。それに、お姉さまとも久しぶりに会えましたし」


 いつも行商の途中でナッサウ領に立ち寄ってくれていたお姉さま。

 いつかお姉さまの屋敷に行きたいと思っていたので、夢が一つ叶った。


「うれしいこと言ってくれるね。姉冥利につきるよ。だけど、聞いてるぜ?リューネブルクのババアのこと」

「あのお馬鹿さんはホントに馬鹿でしたねぇ」

「リヒ坊が乗ってる馬車に二十弱の数で襲撃するとか……阿呆だよな」

「ええ、少なくとも百ぐらいは集めて欲しかったですね。訓練にもなりませんでした」


 えっ!?お兄様実は戦闘狂?

 百人とか……ちょっとした戦争になっちゃいません?


「お兄様はそんなにお強いのですか?」

「ん?マリアには言ってなかったか。私の魔力は皇族級だぞ」


 初耳です!強いとは聞いていたけどそこまでとは……。

 歩く大量破壊兵器だったんですね。


「ああ、リヒ坊は同年代では最強だったんだよ」

「アリーセ嬢、だったということは、彼ですか?」

「よく気付いたな。二日前に成体を迎えた”完璧皇子”様が最強に君臨したぞ」


 フリードリヒ殿下、只者ではないのは知ってたけどねぇ?

 お兄様といい天は二物も三物も与えすぎでは?


「それだけじゃない。同年代最強じゃなくて帝国最強だ」

「陛下を越えられたか。惜しむらくは皇子ということか」


 今までエリーザベト皇帝陛下が圧倒的な魔力で頂点に君臨していた。

 カリスマ性も持ち合わせており、他の姉妹が帝位継承権を自ら放棄しての皇太女指名騒動、先帝の譲位による成人直後の戴冠など、伝説を創り続けてきた女傑だ。

 その生ける伝説の魔力を凌ぐ皇子の出現。

 成体前から国政に携わり、カージフ帝国内外で優秀と評価されているフリードリヒ皇子殿下。

 だが、王国時代を含めても男性君主は存在していない。男性で貴族家当主すら稀だ。騎士爵を除いて。


「そういうこと。今頃選帝侯たちは頭をかかえてるだろうよ。歴史に倣うか、新時代を築くかをね」

「皇族級の魔力持ち令嬢が殿下に嫁げば可能性がありそうですねぇ」

「アマラ、そのような女性がそう簡単に見つかると思うか?」

「無理でしょうねぇ。なら皇族内でくっつけるのは?」

「教会がそれを認めると思うか?」

「絶対に認めませんね」


 ティエラ教のタブーの一つ。

 近い血を混ぜることは許されていない。


「まあそんな感じで一波乱ありそうなんだわ。商人にとって混乱はピンチでチャンス。腕の見せ所だぜ!」


 商魂たくましいな。お姉さまらしい。

 でも、私たちはそんな混乱の渦中に向かわなければいけないわけで、その中心人物たちの呼び出しなんだよね。

 なんてタイミングで呼び出してくれるのさ……ハァァァ。


「アリーセ嬢、帝都の工事の情報は仕入れていないだろうか?」

「ああ、実はそれが本題だったんだよ。だけどなぁ、お姉ちゃんって呼んでくれない弟分にはなぁ……?」


 なんというあくどい顔だろう。

 チラチラと悪魔の笑顔でお兄様に脅しをかけている。

 汚いなさすが商人きたない。


「くっ!これでつまらない情報だったら許さないからな、お、お、お姉ちゃん……」


 真っ赤になったお兄様可愛いな。

 お姉さまもとても満足げな表情だ。


「よしきた!ベルンに寄ったリヒ坊たちなら学校造るって話は聞いたな?」

「はい。学校についての話なら理解しているので説明は不要です」

「なら話が早いな。なんとその学校は世界初の魔法学校だそうだ!……ってあれ?反応薄いな」


 さすがお兄様。予想的中です。


「お兄様が、学校の噂と今回の皇帝との謁見のメンバーから予測していましたので」

「アリーセ嬢、この程度の情報だと納得いかないのだが?」


 お兄様があきらかに不機嫌だ。

 お兄様が優秀すぎるのが原因ではあるのだが……。


「くっ、対価に見合った商品を提供するのが商人の矜持!ならば……その情報元はどこからだと思う?」

「工事現場の親方とかですか?」


 不機嫌なお兄様の代わりに私が答える。

 普段のクールさはどこへいったのか?


「いんや。殿下の従者がわざわざ商業組合に伝えにきた。それも殿下の魔力測定の直前にだ。この後の殿下の魔力測定をお楽しみにって言葉も添えて」


 へぇぇ、皇子殿下律儀だな。

 ずっと隠してきたのに部下にメッセージまで持たせるなんて。

 ん?メッセージというより予言だな。


「アリーセ嬢、殿下が事前に魔力を測定した形跡は?」

「なかった。組合でも探ったが一切な。なにより、皇族といえど教会が特例を認めるなんてありえない」

「殿下は……どこまで見えているんだ?」

「さあ?まあ、この話が広がれば魔法学校の価値は跳ね上がるだろうな」

「予定調和とでもいうように魔力の頂点に立った殿下。その殿下が主導する魔法学校計画。全世界から注目されるのは間違いないな」


 そのすごい人と、すごいことについてお話をしなきゃならないってこと?

 胃が痛い、今すぐにでも引き返したい……。


「マリア、陛下と殿下との謁見がんばれよ!」


 ひとごとぉぉ。お姉さま、ひどい。


「アリーセ嬢、有益な情報ありがとうございます」

「ああ。リヒ坊も呑まれるなよ?じゃあ、今日は解散!」


 その声で、各々の部屋に帰っていく。


(フリードリヒ殿下が真さんで間違いなさそうだ。”俺”の仕事は決まったな)

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