王都への道中1
「父さん母さん! 早く早く!」
僕が七歳になってからしばらくして、僕は子供たちを集めた披露宴のため王都に行くことになった。もちろん父さんと母さんと一緒に。
「ノア〜〜! こんなに本を荷物の中に入れて! 少しは減らしなさ〜い!」
見つかったのは僕のカバンに所狭しと詰めいれられた冒険記や英雄譚、図鑑の数々だった。
それで母さんに怒られたんだと分かり項垂れてそちらの方に向かう。
玄関の方から声がしたのでゆっくりと近づいていくと、荷物の山を見ながらぶつぶつと呟く母さんと馬車の御者さんと話している父さんの姿が目に入った。
ゆっくりと、だんだん母さんの方に近づくと母さんが僕に気付いて困ったような顔して僕に本の入ったカバンを差し出してきた。
「ノア、持っていく本の数は二冊か三冊にしなさい。王都には一週間もかからないんだからそれで十分よ」
僕は口をへの字にしながらしぶしぶカバンを受け取りどの本を持っていくか考え始めた。
僕たちのやり取りに気づいた父さんと御者さんがこちらに近づいてくる。
「ノア、馬車の中で本を読むと揺れて酔ってしまうから本を読む時間は少なくなると思うよ」
「そうですぜ坊ちゃん。それに本はそれなりに高価なもんですから、旅の道中で傷んでしまっては大事じゃないですかい?」
父さんと御者さんに諭され僕もハッとする。確かに馬車酔いもあるし、本も大事にしたい。それと王都の帰りに何か新しい本を買ってもらえるかもしれない。
そう思い直すと急いで僕は持っていく本を吟味し始めた。
「エファーリ男爵様、なかなかに聡明なお子様でございますねぇ」
「ええ、母に似たヤンチャも少なくて喜ぶばかりです」
「アナタ? 何かおっしゃいました?」
「......いえ、何も」
「そう。ねぇあなた、最近盗賊が出てるって言う噂があるのに護衛もなくて大丈夫かしら」
盗賊という単語が出てびくりとする。持っていく本を図鑑系だけに絞って選んだ本を詰め入れながら話を窺う。
「うーん、多分大丈夫だと思うんだけどねぇ? 一日ごとに村を転々としていく予定だし、貴族の馬車をわざわざ狙う輩なんていないと思うよ。……あと、お金がない…」
最後のはともかく、それならなんとかなりそうだった。
「坊ちゃん荷物は詰め終わりやしたかい? それじゃあいきましょうか。旦那様は御者席はどうぞ」
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