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先生は勇者と共に…  作者: 朱音
第1章
20/65

襲撃

短いです。

 

 シシツキは、自分は死ぬのだと確信していた。


 走馬灯が流れるのは、生きる手段を記憶の中から見つけるためであると聞く。

 その走馬灯が流れる、引き伸ばされた時間の中で、シシツキが捉えているのは、徐々に近づく鋭い犬歯を持つ顔。

 多分、シシツキが今からなにか行動したところで、それは間に合わない。


 けど、まだやりたいことがある。

 まだ、この世界が果たして本当に、勇者達がきた地球なのか、魔王が言っていたあの方とは誰のことなのか、魔王とは一体どういう存在なのか。

 そして、一番の問題は、義姉との約束がまだ果たせてないこと。


 首に、魔族の吐く生暖かい息がかかった。

 引き伸ばされた時間の中でも、あっという間に迫った魔族に、人間との身体能力の差を突きつけられた。

 圧倒的な強者。人間が魔族に圧倒的される理由の一つとして挙げられる、身体能力。

 それが牙を剥いている。


 シシツキは奇跡が起こるはずがないと理解しながらも願った。



 俺はまだ生きたい。



 奇跡は起こらない。シシツキはそれを知っている。

 しかし奇跡は、気まぐれに、シシツキに訪れた。


 突如として現れた竜巻の様な炎の渦に、魔族はシシツキの皮一枚を傷付けただけで、耐えきれず吹っ飛ばされた。

 シシツキは引き伸ばされた時間が、徐々に元の流れに戻っていくのを感じながら、ドアを破壊し驚愕するテルアキのスレスレを飛んで、壁にめり込んだ魔族をに向かって、魔力を練り上げた。

 炎の渦は、魔族を吹き飛ばすと役目は終わったとばかりに、さっさと消えてしまったのだ。

 とどめを刺す為の魔力ではあったが、壁にめり込んだ魔族は、何事も無かったかのように立ち上がった。


「あー、びっくりした。まさか、こんな隠し玉持ってるとはね」

「な、何で…」


 驚いて固まっているテルアキの肩を、魔族はポンと叩いた。

 テルアキは、魔族を見てヒッと息を飲んだあと、その肩をつかむ強さに体を恐怖で震わせた。


「ねぇ、こんなこと聞いてなかったよ?」


 20代位の青年の姿をした魔族は、その人間離れした美しい顔に、微笑みを浮かべた。

 まるで、神の慈愛の笑みの様なそれは、中身は慈愛など詰まっておらず、あるのはただ、下等生物に向ける嘲りのみ。

 テルアキは、黙っていると不味いと感じて、震える声で必死に言葉を絞り出した。


「ぼ、僕もこんなの知らない…」

「知らないじゃ済まされないよ?だって僕達は、質の悪い情報を掴まされたのと、一緒だから。いいの?このままじゃ、魔王様に帰らせてもらえないよ?」


 人の神経を逆なでするような魔族の物言いに、テルアキはただ、体を震わせるだけだ。


 一方、シシツキは自分がまだ生きていることに実感が持てず、何度も手を握ったり開いたりしていた。

 恐らくと言うか確実に、先ほどの炎は、朱雀によってもたらされたものであろう。

 その証拠に、左手首の模様からチロリと炎が漏れだしている。


「先生っ…」


 背中に小さな衝撃があり暖かい腕が胴にまわされた後、後ろから何かを堪えるような震える声でアイカが自分を呼んだのを聞いた。


 ああ、自分はまだ生きている。


 シシツキのぼんやりとした思考が、それを聞いて、スイッチを切り替える。

 クリアになった思考で、シシツキはするべきことを考える。


「アイカくん、非常用のベルを鳴らして。俺たちだけじゃ、魔族は倒せない」

「分かりました」


 アイカが、動いたことにより、魔族の視線はテルアキから、コチラに向けられた。

 その瞳の奥に、強者としての余裕がチラついている。


「何しようとしてるの?」


 魔族の視線がアイカに向かうのを遮るように、シシツキは一歩前に踏み出した。


「お前は、何が目的で、ここにきた?」

「質問に質問を返すなんて…。まあいいや、答えてあげる」


 やれやれと肩を竦めた魔族は、どこぞの貴族様が言葉にするような尊大な態度をとった。


「僕の目的は2つ!1つは、勇者達の数減らし。2つ目は…」


 ジリリリリと鳴り響いた緊急事態を告げるベルの音に、シシツキはアイカが鳴らしたのだと、ホッとした。

 しかし、直後に鳴り響いた、もう一つの非常ベルの音に、顔を強ばらせた。

 魔族は、ベルの音に、驚いた様子もなく、それどころか、面白そうに笑みさえ浮かべた。


「そう言えば、僕がここに来る時、100くらいの魔物を辺りに散らかしてきたから、今頃、凄いことになってるかもね」


 クスクスと笑って、シシツキとアイカの方に一歩近づいた魔族に、シシツキは朱雀を、アイカは手元の短剣を構えて、戦闘態勢をとった。

 しかし、魔族からしたら、それは子猫の可愛い威嚇にしか過ぎない。

 これから起こる、地獄絵図を思い描いて、魔族はニタリと優越感を多分に含ませた口元で、三日月を描いた。


「さあ、殺戮ショーの始まりだよ♪」


 魔族の言葉を皮切りに、シシツキは朱雀を振り下ろした。



お粗末さまでした。

戦闘回になると言いつつ、行かなかった…。

ごめんなさい。戦闘シーンが難しくて苦戦してます。戦闘回は次回です。

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