どうせ人類は大預言で滅んでしまうんだ。
正男や浩司が子供の頃、オカルト関係のおかしな本が流行っていた。
そこには、未確認飛行物体UFOを始め、ネス湖のネッシー、ヒマラヤのイエティ、あるいは日本のどこかにいるという、ツチノコやらといった、子供たちが大好きな胡散臭いものがいっぱい載っていた。
そういう子供向けの本が、当時は各出版社から色々と出されていたものだった。
その中に、必ずといっていいほど載っていたのが、ノストラダムスの予言である。
1999年の7の月。
空から恐怖の大王がやってくる。
16世紀のフランスの医師で占星術師、ノストラダムスが遺した予言というのが、それである。
子供の頃の正男は、決してそれを鵜呑みにしたわけではないが、1999年7月までの年月を計算し、ああ、自分の命も、もうあと何年だな、などと諦めに似た境地になったりしたものだった。
その日が、もうあと一年以内に迫っていた。
今でも、別に信じてはいないし、世間を見渡してみても、あと一年で人類が滅亡するとか言って、パニックになっている人などいなかった。
実に冷静に、ただのトンデモ説として、ノストラダムスの予言は受け止められているみたいだった。
でも、心のどこかで、正男は予言が本当になるのではないか、そう思うところがあった。
まあ、それはそれでいいけどな。
そう悟った境地であった。
まだ20代も数年過ぎたばかりである。
が、結婚もしたし、子供も誕生した。
仕事も、実家の酪農を継いで、それなりにやれている。
裕福ではないが、田舎で家族が慎ましく暮らしていく分には十分であった。
これから先、大成功して大金持ちになったりする見込みもないし、ずっと同じような日常が続いていくだけの人生なのであろう。
だとしたら、別に今すぐ人生が終わっても構わないではないか。
家族を残して自分だけ死んでしまうのは未練が残るが、人類がみんな綺麗さっぱり消えてしまうのであれば、何も心配することはない。
「ふふっ」
正男はパッケージに載っている、そのカンナという女優を見て、また吹き出した。
人類が滅びるより先に、2026年がやってきたか。
だが、浩司は、それをビデオに興味を惹かれた証と受け取った。
「な、見たいだろ?新作だけど、特別に一週間貸しといてやるよ」
そう浩司に押し切られて、結局、350円を払って借りてきてしまったのであった。




