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はじまり

今までの人生では、何者にもなることが

できなかった人たちが、ここから歴史上の人物になることを目指す話です。


大森(おおもり)南大(なんだい)は、元社畜。


いわゆる、就職氷河期世代だ。バブル崩壊後に就活を始めたものの、希望していた東証一部上場企業には入れず、その後も何十社と受けたものの、正社員にはなれなかった。

一流企業以外は就職先として考えていなかったという、当時の自分には、そんな傲慢(ごうまん)な考えがあったのも事実だ。

なんとか就職はしたものの、自分が身につけてきた技能とはまるでかけ離れた、専門外の、興味も無いような仕事内容だった。


特に働く目的も無く、どうせ自分は社畜だからと、自分を犠牲にして働いてきた。


最後は、上司を殴って退職。


その上司というのが、とんでもないパワハラ上司で、暴言を吐くのが日常茶飯事というか、暴言吐いてストレス発散して、相手の反応を見るのが趣味みたいなやつだった。

同僚に暴言を吐いているところに割って入り、

その同僚をかばう形となり、我慢の限界に達し、カッとなって殴った。

そして、辞表を叩きつけ、辞めてやったというのが、事の顛末(てんまつ)だ。


その後は、あてもなく、路上生活を続けていた。

そして気がつけば、40代も半ば過ぎという年齢になり、この年になって結婚もできず、子供もいない、仕事も失い、出世の見込みも、ほぼ無い。

まさに人生下り坂の一方だ。


どうせこの先、生きていても世の中が悪くなるのを見るだけ、あんなやつが出世して、偉そうにデカいツラしているような世の中なのだからな。

西暦何年の数字と、自分の年齢の数字が動いていくだけの、失われた何十年とやらに、さらに余計に付け足すだけ、

それならいっそ、電車にでも飛び降りようか、

いやいっそ、核戦争でも起こって、世界ごと終わりになったら、

昔読んでいた漫画の世界設定みたいにな。

だったらてめえだけ死ねよ、と思われること、間違いない。


世の中だけじゃない、今までの不甲斐ない自分自身にも腹を立てている。

今まで、こんな人生しか歩んでこられなかった、自分自身にも腹を立てている。

たまに、自分がすっげえ人物になった、ということを考える。

歴史上の人物とか、時代劇ヒーローとか、漫画やゲームのヒーローとか、特撮のヒーローとか、そういう、すっげえやつに自分がなったら、ということを。


そんなことばかり考えながら生きてきた。


そんな中、一枚のビラを受け取った。

そこには、こう書かれていた。


求む!広域調査隊の隊員!

あなたも架空大河ドラマの主人公候補を探す旅に出てみませんか?


なんだこれ?と、最初は思った。

最初は半信半疑で、ビラに書かれていた電話番号に、電話をかけてみた。

もしかして、新手の詐欺か?あるいは、最近流行りの闇バイトか?トクリュウか?

などと思いながら、電話をかけた。


「もしもし、私は現在、住所不定無職の、大森南大と申す者ですが。」


「こちらは、架空人物伝専門チャンネルの、人物!誰でも人物伝!広域調査隊募集係となります。

住所不定無職ですか?むしろ当社としては、あなたのような人物を探し求めていました。大歓迎です。さっそく当社に出迎えたいと思います。」


最初はかなり怪しいと思いながら、他に行くあても無かったので、広域調査隊に応募してみることにした、というのが、自分と広域調査隊との出会いだ。


『架空人物伝専門チャンネル』がどういうところか、『人物!誰でも人物伝!』それから、『架空大河ドラマ』『広域調査隊』というのが、どういうものなのか、聞き慣れない名称ばかりで戸惑ったが、逐一説明を受けることになった。

いったいこれから、どうなっていくのか?

ここで、何をしろと?

かといって、他に行くあても無かった。


ビラに書かれていた住所の場所に行ってみると、なんと高層のオフィスビルが建ち並ぶ一等地だ。

この手の会社は、とりあえず一等地の住所を書いておけば、見た人は信用してくれるとかんがえているのだろうか。


各階の会社の場所が書いてある。その中に、『架空人物伝専門チャンネル』の名前もあった。どうやら、本当に実在する会社のようだ。

エレベーターに乗り、会社のオフィスに向かう。


そこで、運命の女性となる、金子奈美と出会う。


オフィスに入ると、社長室らしき部屋がある。部屋に入ると、女性がいた。

それと、この会社の社員らしき人たちが、何人かいた。


「ようこそ、『架空人物伝専門チャンネル』のオフィスへ。大森南大さん、あなたをお待ちしていました。」


最初に電話対応をした彼女の名前は、

『金子奈美』といった。

彼女について紹介する。彼女は生粋(きっすい)の歴女(れきじょ)、つまり歴史好きの女性である。

なんと、20代にして、『架空人物伝専門チャンネル』の代表取締役なのだ。

彼女のデスクの後ろは本棚になっていて、そこには『学習まんが 日本の歴史』シリーズと、『学習まんが 世界の歴史』シリーズとが、全巻並んでいる。

生粋(きっすい)の歴史好きであるという証拠だ。

いったいどこから、そのための資金が出ているのか、その出所はわからないが、それも、どうでもよかった。彼女とは趣味が合いそうだ。気が合いそうだと思ったからだ。


金子奈美「初めまして!私は当社の代表取締役社長の、金子奈美といいます。」


そして、いきなり、この会社に採用されることになった。否も応も無く、いきなり採用だ。


さらに詳しく説明すると、


『架空人物伝専門チャンネル』


『架空大河ドラマ』や、その他の人物伝などを放送する。『人物!誰でも人物伝!』も看板番組の一つ。

『架空大河ドラマ』は、本家の大河ドラマと同じ放送枠、同じ放送時間帯。

日曜日午後8時から、8時45分まで。

他の人物伝は、主に2時間枠での放送。


『人物!誰でも人物伝!』


この番組は、主に歴史上の人物に関する、知られざるエピソードとかを紹介したり、まだ知名度の低い人物などが、この番組で紹介されたことをきっかけに、たちまち、大河ドラマなどの主人公候補になったりするような効果のある番組だという。


『架空大河ドラマ』は、実際にはその年に放送されていないのに、あたかもその年に放送されたように設定して放送するという。

実際にその当時、本当に放送していたかのような雰囲気はかもし出している。


そして、『広域調査隊』の調査範囲は、なんと世界中の、外務省の渡航自粛勧告が出ているような国まで、調査範囲になるという。


自分も幼少期から歴史が好きで、戦記ものとかも好きで、彼女とは趣味が一致しているようだ。

彼女とは気が合うと、一目見て感じた。


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