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シネコン

89話 シネコン

 

 都内の某シネコン。


「マイ、やっぱオレホラー映画って」

「へえ〜阿倍川あべかわ君。怖いの? でもコレ妖怪映画だよ怖くないよ」

「そうなのか。やっぱり最終じゃなく、昼間に見ればよかった」

「ホント、怖がりなんだから。遅い方が空いてるからって言ったの阿倍川君じゃない。でも、ホント、ガラガラね」

「一番後ろの席の髪の長い女さぁあの髪型で映画見えるのかなぁ。顔も見えねぇ」

「昔の映画のなんとかってお化けみたいね。そうそう、お母さんに聞きたんだけど。昔ね、あるホラー映画の上映時にお化けの格好で来れば料金半額になったんだって」

「半額かよ、映画の日より安いじゃん」

「で、ある日半分以上の客がお化けだったんだって。たまたまデートで見に行ったお母さんとお父さん、そのお化け仮装のクオリティの高さに映画より怖かったって」

「ホントかよ映画より怖い仮装って……」


  ブギァアアアーン


「なんの音だ?」


   キャアアア


 スクリーンの前をチェーンソー持って、面を付けた男が女を追ってよこぎった。


「なんだアレ!」

「アトラクションかしら? こんなガラガラでもやるんだ」


 上映後。


「ホントだな、映画は怖くなかった。でも、上映前のチェーンソー男が女を追うのリアルに怖かっよ。見えなくなっても音だけでチェーンソーで女を襲ってる音が、凄かったな。リアルでチビリそうになったよ」

「ナニそれ? 音だけで……そんなの聞こえた?」

「マジカよ、マイには、聞こえなかった?」

「なんなのその音って……。ウソぉ聞こえたよ」

「なんだよ、マジビビったよ」


 うっへへへ


「あ、お母さんからメール入ってる」

「気味悪い着信音だな」


「今夜は泊まりかぁ。お母さんさぁ雑誌の編集やってんだぁ。残業は多いけど泊まりはさすがに珍しい。よかったらウチ来ない?」

「親父さんは?」

「中二の時に離婚してんのウチ」


 マイの自宅前。


「マイって、一条っていうんだ」

「え、言わなかった?」

「ああ、初めて会った時は名前しか」

「そーだっけ。忘れた。あ、そういえば阿倍川君。下の名前は?」

「オレも言ってなかった? サラオ。阿倍川沙羅男だ」


「あのさ、シネコンで話したお化けの仮装の時に両親が見た映画、あるんだDVD。見ない? あたしさぁ好きなんだ」

「ホラーだよな」

「怖くないから」


「ね、おもしろかったでしょ」

「まあ……あのさ最後に妖怪が沢山出てくる中にさぁシネコンで見た女」

「ああ一番後ろの席の髪が長いの」

「そう。今見た映画に出てたのあの女じゃねぇ」

「そうね……この映画、本物が出てるって都市伝説になってるの。あの女は、もしかしたら……」

「そうなのかぁ……おどかしてない?」

「ホントに怖がりねぇ妖怪なんか、この世に居ないわよぉ。あんた肝っ玉小さいっ」

「肝っ玉? なんだソレ。尻子玉なら知ってるけど。マイの尻子玉くれないか?」

「えっ? なにそれ?!」

「実はオレ河童なんだ」

「ウソッ! やめて、なにするのよ。あっ何処に手を入れてんのよ。へんた〜い」


               つづく

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