古書店
85話 古書店
東京に帰ってきて、そうそう。飛縁魔みずち先生のとこに原稿取り。
タコ焼きと交換のように意外とあっさり渡されてバス停まで帰る途中。
あれ、こんなトコに古本屋なんてあったかな。
な、場所に店が。
よく通る道なのに気づかなかった。
入り口が人ひとり入れるくらいのセマさ。
ちょっと覗くと奥行きはある。
古本屋好きなボクは入ってみた。
「古文堂」と入り口にあったから、おかたい本の古書専門店かと思えば。
入り口付近にあるのは、いわゆるエロ本って、ヤツだ。
SM物とか、同性愛専門誌なんかもある。まあこういうので儲けている店もよくある。意外と売れてるそうだ中古のエロ本。
次は百均の文庫本だ。もっと奥に行くと、これまたガラッと変わる書種。おかたい文学書や経済書に政治学書。辞書なんかも棚に。
年代物の和とじ本が棚に平置きしてある。
いつの時代の本なんだ?
「愛川流恋愛指南書」って、昔からあるんだな恋愛のマニュアル本みたいなの。
手にとって見ると流れるような筆文字でナニが書いてあるのやら中を見てもわからない。
でもコレ印刷本ではないよな。
高価な古書だろうに、書店よってはショーケースとかに入れて有りそうな本だ。
「いらっしゃいお客さん。気に入ったのがあったら遠慮なく見ていいよ」
突然現れた店員は、この店に合わない若い娘。
十代に見えるけど。
今時、ハタキを持ってる。まあコレは古本屋ぽいアイテムだけど。
首からかけるエプロンに素脚が。エプロンの下はミニスカートか、短パン? ロングヘアにバンダナを巻いているというか、かぶっている。
目がキラキラした子だ。こんなカワイイ子がレジに居たら手前のエロ本とか、ボクには買えない。
「その本、どうです? 江戸のベストセラーになった恋愛小説です」
コレはマニュアル本ではなく小説なのか。
「あ、コレはちょっと読めないから無理」
「お客さん、学生? 古文とかは読めない?」
「まあもう学生ではない。古文は苦手だったかな」
「なら子供でも字を知ってれば読めるコレなんかどうかなぁ」
「こぶみさん、お客様に押し売りみたいな事しては駄目ですよ」
奥にあるレジの方から声がした。
見るとロングヘアーの綺麗な女性が。
若く見えるが美魔女という感じで年齢不詳だ。
「ゴメン姉さん、なれてないから」
姉さん。この子はあの人の妹なのか。
すすめられた本も和とじで表紙にやはり筆書きで「物の怪記録絵図」と。
唐沢さんに見せてもらった鳥山石燕の画図百鬼夜行みたいなものか?
中を見てみると絵図というわりにこの作者絵が下手だ。字は平仮名のみで読みやすいが。
でもコレも手書き物みたいだ。印刷物じゃないんじゃきっと高価な古書だろう。
唐沢さんに見せたらなんて言うか。好きそうだからなぁこういうの。でも、高そうだから手が出せない。
「面白そうだけど、いくら?」
「後ろに値札が」
「後……十円ってホントですか?!」
「ああ、よく十年前のお値段でとか、通販とかでやってるだろ。アレと同じでウチは百年前の値段で売ってます。だよね、姉さん」
「ええ」
「ほら」
「だけど百年前の十円の価値だろう?」
「そんなの関係ない十円は十円だよ」
まて、入り口前のエロ本は三百円って書いてあったよな。この古書が十円って、あのエロ本より安いのかコピー同人誌じゃないんだから。ありえない。
「本当に十円でいいの?」
「はい。いいんだよね、姉さん!」
「ええ」
コレ凄いお買い得じゃなかったのか。
神田の古書店持っていったらいくらになるんだ。
帰りの電車でパラパラと見た。
ホントに絵は小学生のちょっと上手い子程度だ。ろくろ首なんか女と男のが判別が出来る程度。
文字では「うつくしい」とある。
池袋で下車。
買いたい物があったし、確か老舗の大きな古書店もあったはず、妖怪本の鑑定でもしてもらおうと。駅から出た。
電車内で見てたら先も見たくなり、つい歩きながら。
「二口女」頭の後ろにも口がある。
わたしからみたら、ろくろ首より若く美しい」と、この本の著者は自分の目で見た感想を書いている。霊能者みたいな人だったのか?
「おっと」
通行人とぶつかり本を落としてしまった。拾おうとして腰をまげたら。
「オイ、ニイちゃん」
後ろ首を掴まれた。
ヤバッ! 危ない人だ。
つづく




