5 謁見の日/オルシア
今日は陛下との謁見の日。
お洒落なドレスに身を包んで、気分は最高潮!
靴はちょっと窮屈だけど……こんな贅沢、初めてだし我慢!
隣にはディーン。
正装姿も、やっぱり格好いい。
馬車に乗る時は手を貸してくれた。
……ちょっと惚れそう。
でも――
また展開が変わってる。
まず、このドレスに針が仕込まれていなかった。
謁見だって、ディーンは来なくて、本当は義父と行くはずだった。
湖のお祈りも、湖畔になったし。
もう1回、湖に落ちるイベントがあるんだけど、なぜかディーンが櫂を漕いでくれるらしい。
……まさか、彼に蹴り落されるんだろうか。
城に着くと、ずっと黙っていたディーンが口を開いた。
「ここだけの話だが、陛下は読心術が出来るらしい」
「え? 本当ですか?」
「う……嘘ではない! 本当に…本当だ!」
ムキになって。
何か怪しいけど──
本当なら、大変だわ。
心、無にしなきゃ!!
「不敬な事を考えると、処罰される」
「心得ました」
「これは秘密だ。決して誰にも言わないように」
「はい」
――考えない、考えない。
第二王女が、超~我儘とか、絶対考えない!
私が嫁いできたせいで、神殿に寄付をぼったくられてすみません。とかもダメ!
「はぁ……」
え?
ディーンったら、なんでため息?
大丈夫よ、マナーは完璧だから!
陛下は、すごく貫禄のある素敵な方だった。
受け答えは、ほとんどディーン任せで問題なし。
結婚祝いの言葉をいただいて、あっさり終了。
私は――
「この国の平和と安全を祈って欲しい」
ってお願いされた。
もちろん、全力で祈ります!
……でも。
心を無にするの、めちゃくちゃ大変だった。
長い廊下を歩いていると、義父が待っていた。
「どうだった?」
「問題ありませんでした」
父と息子、目を合わせてこくりと頷く。
なんか、通じ合ってる感じ。
「オルシアもご苦労だったな。帰って休みなさい」
「はい、ありがとうございます」
義父は肩を揺らして、奥へ戻っていった。
この国のことを本気で考えている、いい人。
王子がいないこの国で、シビルとの結婚に息子を差し出した人。
……なのに。
私達の夫婦仲がうまくいかないせいで、後々、体調を崩すのよね。
それを――ディーンは私のせいにする。
いや、あんたが反抗的だからでしょ!?
思わず睨むと、ぱちっと目が合った。
ん、見てたの?
「あ、その……足は大丈夫か?」
……え?
靴ズレ、気づいてくれたの? ちょっと優しいじゃない。
そういうの、反則なんだけど。
「大丈夫です」
我慢できるし。
これくらい平気。
――って思った次の瞬間。
ふわっと体が浮いた。
「へ?」
お姫様抱っこ!?
「お、下ろして下さい。恥ずかしいです」
「黙れ。俺だって恥ずかしい」
……ぇ、ぇえええ──!?
両手で顔を覆った。
「腕を俺の首に回せ!」
「はい」
──夢みたい!! 嬉しい!!
速足で歩きながらディーンが言った。
「軽すぎる! もっと、たくさん食べろ!」
──毎回、お腹いっぱい、頂いています!
*
屋敷に戻ると、ナンシーがすぐに足の手当てをしてくれた。
「若奥様、何か不具合があれば、遠慮なく申し付けて下さいね」
「ええ、ありがとう」
優しい……ほんとに優しい。
ほどなくして、今度は義母が部屋に来てくれた。
「足は大丈夫でしたか?」
「はい、もう痛くありません」
心配してくれるなんて……ここ、いい家すぎる。
義母に陛下との謁見の話をしていると、ナンシーが軽食を運んできてくれた。
クラッカーにチーズクリーム。
香りのいい紅茶に、たっぷりのフルーツ。
……幸せ。
嫁いできて良かったかも!
「ふふ、ゆっくり召し上がれ」
そう言って、義母は微笑みながら部屋を出ていった。
「お母様も、一緒に召しあがればいいのに」
ぽつりと呟くと、ナンシーが教えてくれる。
「皆さん午後は自由にお好きなものを召し上がりますから。奥様もお好きな物をお申し付けください」
──へえ、自由なんだ。
「私は好き嫌いは無いから、何でもいただくわ」
三食お昼寝付きなんて、プリンセス気分!
……神殿では、週に一日「絶食」という地獄の日があったのよ。
でも、もういいよね。
ここ、神殿じゃないし!
読んでいただいて、ありがとうございました。




