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空想物語の中の冷血な騎士様は、ザマァされる私の夫なんですが、なぜか設定崩壊しています  作者: ミカン♬


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13/21

13 ここでプロポーズ?/オルシア

 翌朝。


 深まる秋の空気はひんやりとしていた。


 昨日の気まずさを、まだ引きずったまま、私とディーンは小舟に乗っていた。

 会話が無いまま小島に着くと、そのまま祠へ。

 二人で静かに祈りを捧げる。


 私はお願いした。

(水龍様、どうか一度だけでも、私に会いに来てください)と。


 そして帰りの小舟。

 私は、ふと思ってしまった。


 ──もしも今、湖に飛び込んだら水龍様は助けてくれるだろうか?


「オルシア! 危険だから動くなよ」


 その一言で、体がぴたりと止まる。


 これって──


 《威圧》?


 ソードマスターのスキルを、私に使ったの?



「また落ちたら、風邪をひくぞ。まあ、落ちても俺が助けてやる」


 ……心配してくれたのね。

 ディーンが助けてくれるなら、わざわざ落ちる意味はない。


「だからジッとしててくれ」

「分かりました」


 素直に返事をしておく。


 小舟を下りると、ディーンに促されて神殿へ戻る。


 レティーの姿はない。

 護衛が付いてから、彼女は私に近寄らなくなった。

 ……平和で良いけど。


 ディーンは真っ直ぐ司祭様のもとへ向かう。


「挙式をやり直したいのですが、宜しいでしょうか?」


「構いませんが、実は私は高齢で引退するのです。間もなく新しい司祭が来るので、交代してから挙式を行えばどうですかな?」


 新しい司祭……ラファエル。


 ──もう登場するの? 早すぎる! 春先じゃなかったっけ?


 間もなく来るというその人、中身はかなりの野心家。

 35歳という若さで、次期教皇に最も近い人物。その実績作りのためにこの国へ来る。


 ──水龍様と契約するために。


 いいえ、彼はこの国から水龍様を盗みに来るのだ。

 加護が消えると、雨は降らず、湖の水は枯れ、この国は滅ぶ。


 それを防ぐためにも、私が水龍様と契約して花嫁になる。


 なのに。

 水龍様との距離は、ディーンよりも遠い。

 今やディーンは──本気で、挙式のやり直しを望んでいる。


 司祭の交代を聞いたディーンはしばらく考え込んでいたが、


「オルシア。司祭が交代する前に、式を挙げ直そう。正式に俺の妻になって欲しい」


 ……不意打ちを食らった。

 ここでプロポーズ?


「私はもう貴方の妻です。やり直しなど必要ありません」

 平静を装って返す。


「そうだが、まだ寝室は別々じゃないか」


 なっ……!


「おや、それはいけませんな」


 司祭様まで何を言ってるの!?


 ……もう、恥ずかしすぎる。


 私はその場から逃げ出した。


 ──ディーンってば、どうしちゃったの?


 困った、耳まで熱い。




 帰りの馬車の中。

 昨日から漂っていたディーンの冷え冷えとした空気は、嘘みたいに消えていた。


「俺は君を幸せにする。信じて欲しい」


 真っ直ぐな言葉。

 ……まるで心を読まれてるみたいだわ。


 ――こんな人じゃなかったはずなのに。

 私を不幸にする張本人なのに。


「俺は子供の頃から騎士団長に憧れていた。尊敬しているし、ずっとお仕えしようと心に決めている」


 ……どうしたの?

 ディーンはいきなり、シャーロッテ王女への想いを打ち明けだした。


「団長にとって俺はただの部下で、弟みたいなものだ。俺がレティーに対する気持ちと、同じものなんだ」


「諦めるのですか? 王配になれるかもしれないのに」

「そんなのは望まない。今は、君と本当の夫婦になろうと思う」


 迷いのない声だった。


「最初は、私を拒んでいたのに。いつから心変わりしたのですか?」

「毎日一緒に過ごして、いつの間にか、少しずつだ」


 ……ああ、それは、私も同じかもしれない。今は彼が悪役とは思えない。


「君といると面白い」

 そう言って、ディーンは青い瞳で私を見つめる。


 ──憎らしいくらい、イケメンだ。

 胸がドキドキする。


 完全に、想定外。

 ……またまた、シナリオ変更?


 式を挙げ直す前に、ディーンに全部話そう。

 私のことも、この世界のことも。


 そう決めた。


 ――それで、きっと。

 私たちの物語は、完結に向かう。



 ***



 ディナーの時間は、挙式をやり直す話題で大いに盛り上がった。

 家族みんなが嬉しそうで、場の空気は明るい。

 

 ──10日以内に式を挙げると決定。


 それを聞きながら、私はいつものようにご馳走を堪能。


 うーん。……おいしい!


 こちらに嫁いできた幸福を実感!



「急いで準備しないといけないわね」

 義母の声は嬉しそうだ。


「とにかく、挙式が楽しみだ。わはははは」

 義父の豪快な笑い声。──健康に問題は無さそうだ。


 こうして、賑やかなディナータイムは終わる。



 ──この夜。


 私は夢を見ていた。


 枕元に立つ一人の美しい男性。


 青い髪に水色の瞳。


 水龍様の<人型の姿>だった。




読んでいただいて、ありがとうございました。

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