表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空想物語の中の冷血な騎士様は、ザマァされる私の夫なんですが、なぜか設定崩壊しています  作者: ミカン♬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/21

11 ディーンの決意/ディーン

 城へ戻り、団長の執務室へ向かう途中だった。廊下の先に、レティーが立っているのが見えた。


 俺とオルシアを見るなり、レティーはわずかに目を細める。


「二人で出かけていたの?」


 いきなりの問いかけが、なぜか不快だった。



「そうだ。オルシアに沼地を土砂で埋めてもらったんだ。水龍に頼んでな」


「水龍様が現れたの?」


「俺は目を閉じていたので分からん」


 そう言うと、レティーはぱっと表情を明るくした。


「それならきっと、水龍様に私の祈りが届いたのよ。ねえディーン。私、シビルになるわ! そして貴方の花嫁になりたいの」


 ――何を言っているんだ!

 思わず眉をひそめた、そのとき。



(これこそ、設定どおりだわ)

(レティーの気持ちは一貫してるわね)

(さあ、なんて答えるの? ディーン)



 ――オルシアの声。

 本人はいつも通り、すました顔。本当はお喋りなのに、いつまで隠すつもりだ?


「ディーン、聞いてる?」


 レティーの声で意識が引き戻される。

 思考が分断される感覚に、軽く頭を振った。


「ああ、この国にはもうシビルは必要ないだろう。オルシアがいるんだから」


「でも離婚するんでしょう? みんな言ってるわ! オルシアさんはいらないって!」


 食い下がるレティーに、俺はきっぱりと言った。


「離婚はしない。オルシアは水龍と接触できる偉大なシビルだ。みんな誤解している」


 その瞬間、また頭の中に声が響く。



(え?)


(離婚しない? どういうこと?)

「ディーン、どうしたの? 最初から離婚するって、怒ってたじゃないの」


(そうよ、離婚して、後になって真実を知った貴方は、死ぬほど悔やむのよ)

「ディーン! 私のこと嫌いになったの?」


(貴方は、ザマァ! されるのよ。そんな結末が待ってるの)

「何とか言ってよ!」


 ……うるさい。


 レティーの声と、オルシアの心の声が同時に押し寄せて、頭の中をグルグル回る。


「ちょっと二人とも……黙ってくれ、頼む」


 いや。


 待てよ。

 ――オルシアは何と言った?


 俺が『死ぬほど悔やむ』だと?


 冗談じゃない!



 俺は二人をまっすぐ見据え、はっきりと宣言した。


「レティー、言っておく。俺は離婚しない。例え、君がシビルになっても花嫁にはしない」


「オルシア。俺は結婚式をすっぽかした酷い男だ。君が望むならもう一度式を挙げ直そう」


 言い切った瞬間、二人の目が同時に見開かれる。


(うっそ──!)

「噓でしょう?」


 重なる驚きの声に、俺は首を横に振った。


「嘘ではない。これが現実なんだ! 気づいてくれ!」


 ――俺は、覚悟を決めた。

 オルシアを、受け入れる覚悟を。


 『ザマァ』なんかされて、たまるものか。



「オルシアさん、貴方、ディーンに何を吹き込んだの?」


「吹き込む? 人聞きの悪い事は言わないでください。貴女こそ、ある事ない事、言いふらさないで欲しいわ」


 珍しく、オルシアが声を荒げている。


 ああ、俺は――こういう彼女が見たいんだ。

 本音を隠さない、まっすぐなオルシアを。



「レティー、最初に言っておいたはずだ。オルシアには構うなと。シビルになるのは君の勝手だが、俺は既婚者だ。俺にとって、君はただの友人だ」


 はっきりと言い切ると、レティーの瞳が揺れて、じわりと潤む。

 ……申し訳ないとは思う。だが、この気持ちは変わらない。


 少しの間、この場は静まり返った。



「おいおい、まだここにいるのか? 団長が待っているんだぞ」


 場の空気を切るように割り込んできたのは、ガルだった。


「兄さん、聞いてよ! ディーンったら酷いのよ」

「お前も邪魔するな。ほらディーン早く行けよ」


「ああ、すまんな」


 助かった。


 俺はそのまま、オルシアの手を掴んだ。

 振り返らず歩き出す。



(ねえディーン、貴方もしかして、私が好きなの?)


 ……っ。


 だから、それを――声に出して言ってくれ。

 そんなふうに、頭の中にだけ囁かれるのは、困るんだよ。


 この場合、なんて答えればいいんだ?


 ──嫌いではない。

 いや、これは違う……。


 どう言葉にすればいいのか分からない。


 ただ一つ分かっているのは。


 俺はもう、引き返せないって事だけだ。



 ──団長の執務室。


 ドアをノックした。


「ディーンか? 入れ!」


 その声に、冷静な俺がいる。

 以前は団長に名を呼ばれただけで、胸が熱くなったのに。


「失礼します」


 ──団長は本当にベビーフェイスが好みなんだろうか。


 そんな、くだらないことを考えながら、俺は部屋に入った。




読んでいただいて、ありがとうございました。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ