東方鋼魔伝 ストーリー001
異世界転移、転生。思えば様々な作品に勇気や希望、笑いなど日々の活力をたくさん、たくさん頂いてきました。素晴らしい数々の神作品。尊いです。ですので、私も、自分なりにそんなストーリーを作ってみたくなりました。それにしても皆様、こぞって西欧的な世界へお旅立ちですね。日本はお嫌いですか?
私はとにかく日本が大好きなんです。というわけで、転移前も日本、転移後も日本。そんな異世界転移もあっていいんじゃないかと思いまして、異世界の日本を描いてみました。時代背景は、我々の世界で言うならば明治時代。様々な海外勢力との対峙が必要となった時代です。また、科学も進歩し、戦場では新式の銃火器が次々に導入されていきました。そんな世界観をご想像ください。
さて、本小説は異世界転移、異世界での戦記をベースとしたファンタジー作品ですが、多分に現在の世界情勢や日本の出来事を過激に風刺してもおります。その対象の際どさから、21世紀において、最も危険な小説として忌避される可能性もあります。それでも私の筆は止まらなかった。それは私の心の中に、ある種の愛国心のようなものがあり、それに突き動かされたからでしょう。今の日本はとてつもない苦境に立たされているように、今の私には見えます。さまざまな要因があるでしょう。でも、大元になっているの一番の害悪は?
苦境に立たされる今の日本と、異世界の日本。それを重ね合わせ、希望の結末へとぜひ導いてまいりたいと思っています。異世界に旅立った主人公が、その害悪を葬り去る。そんな痛快な軍記もので、異世界転移で、ジパング伝説でかつ異能バトル。処女作にして、ちょっと盛り過ぎ感もあります。そして暑苦しい作品でもありますが、どうぞ負けじと熱い応援、宜しくお願いします!
~プロローグ~
英雄の教壇
梅雨の訪れの気配も遠く、五月のさわやかな風が須磨の浜から上がってくる。心地よい風が講義室の開け放たれた窓から入ってくる。その風に乗って吹奏楽の演奏が耳に届いた。
「ブリティッシュ・グレナディアーズか。良いものだな。」
教壇の塚原醍醐はつぶやくと、講義をいったん中止して、開け放たれた窓から差し込む日差しに目を細めた。陽気な光の旋律が風の五線譜に乗って届けられる。イングランドの軍歌だったか。かつてそれが連想させたのは、圧倒的な攻撃力、襲い来る銃弾の嵐。でも今流れてくるそれは・・吹奏楽隊が練習をしているのだろうか?アレンジされているそれは、原曲よりも優しく華やかで、何か別の曲を聞いている気さえする。
近く歓迎式典でもやるのだろうか?と彼は想像をめぐらした。
かつて、我が国に国家的な危機が訪れたあの頃と比べて、平和を謳歌する現在、その音色は全ての人々への祝福のように響いている。
本当に良いものだ。過去を振り返り、現在を思えば、より深く幸せな気持ちが胸に溢れる。塚原はその屈強な上半身を、教壇を抑えつけるように置いた分厚い両掌で支え、しばし聞き入っていた。屈強な塚原がじっと動きを止めていると、まるでギリシャの彫像か何かのように思えてくる。今年で82歳になる塚原だが、190cm近くはあろうかという筋骨隆々たる肉体は未だに見る者を圧倒する。しかし、その人柄は温厚かつ知性的で、若い士官候補生たちからはまるで祖父のように慕われている。
毎年度、彼、塚原が続けているのは、ここ須磨にある士官学校にて、若い士官候補生に手向ける「戦史学A」と銘打った講義だ。この講義では、かつて我が国が国家的危機に陥った「あの頃」、未だ文明開化の匂いが色濃く残るその時代が語られる。この須磨の地も、さらに西の国内各地も、その国家的危機、「くにつかみ戦争」の舞台となった。
彼の立つ教壇の後方左の壁に掲げられたカレンダーは『正暦1855年/明照60年』の5月となっている。世界各国が協調の道を歩み始めているこの現在、正暦1855年から遡ること約50年。正暦1798年~1810年(明照3年~15年)の約13年間、その「くにつかみ戦争」は続いた。
幾度か部分改築されたものの、文明開化当時に建築されたこの講義棟は依然としてその当時のままの浪漫的な造形が残されてもいる。そのため、この講義室で彼の講義を受けると、その時代にタイムスリップしたかのような気持になるのだ。
そうだ、それは塚原がまだ若い駆け出しの軍人だった頃である。「くにつかみ戦争」で幾多の戦績を重ね、生き抜いて、彼は今に至る。だから塚原はすでに伝説の英雄の一人として、軍部だけでなく世間、いや世界中から認知されている。講義室にすし詰め状態になっている士官候補生からは憧れと尊敬を込めた視線が幾重にも注がれる。健康とは言え高齢。年齢を理由に、ひとたびは完全引退も考えた彼、塚原だった。それでも、まだまだ若い次世代に歴史を、真実の物語を伝えていくべきだと思い直した。
あの時代をリアルに生きた彼ならば、迷わずに言える。この平和な時代だからこそ、平和ボケすることなく、歴史を見つめ直さなければならない。我が国、「日本帝国」に起きた一度だけの奇跡。それはもう二度と起こることはないだろう。過去の真実を嚙み締め、その奇跡の結晶である現在の、いや、これからの我が国を、現代の人々が、自らの力で守っていかねばならない。その精神を若い世代に、毎年入ってくる士官候補生に訓示する。それが自身の使命だと。
自身も英雄だとして祭り上げられてきた。だが、それは彼の力だけでないと分かっているのだ。本当に世界を変えた人物は、異世界から転移してきた一人の男だった。その転移者こそが英雄だと塚原は確信している。そして自分はあくまで「英雄の親友」であったと。真の英雄が起こした奇跡をありのままに伝えること。老いた自分の最後の仕事として悪くはない。
その決意、想いを再確認した塚原は姿勢を正し、講義を再開した。
それは過酷にして熾烈な戦争体験でもあるが、懐かしい思い出話でもあった。
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そうだ。まずはひどい時代だった。ちょうど53年前のことになる。事は天変地異から始まった。
ユーラシア大陸の東端、韓半島から海を隔てて我が『日本帝国』は存在し、古来、文明がこの地に発生して以降、常に独立を保ってきた。我らが帝国と名乗るのは、常に自治、自由のもとで古来より生きてきた自負である。それを可能にした最も重要な要因は、地理的要因、すなわち島国であるという恩恵だった。
ところが「明照2年」春、その天変地異は起こる。異世界からの転移としか思えない大量の堆積物が韓半島と我が国の間に飛来したのだ。あるいは忽然と現出したのかも知れない。堆積物は、かつて対馬海峡と呼ばれていた海域を完全に遮断、細長い陸路をそこに現出した。なんと、地続きとなった我が国の九州島は、ユーラシア大陸から連なる半島の先端と化したのだった。
のちに「黒道」と呼ばれることになるその忌まわしい地峡を伝い、大陸から陸路で九州島に到達することが可能となった。「黒道」を挟んで存在していた両国はこれに手を伸ばした。その活動は、当初は調査目的であったが、じきに何らかの経済的恩恵、営利を求めるようになった。当時、韓半島はすでに中華圏を中心とする亜大陸国家『地球連邦』の一部であったので、韓半島側から「地球連邦」が、九州島側から我が「日本帝国」がこの新しく出現した陸地に迫った。
ありきたりな小事件をいくつか経て、両国の関係は緊張、悪化の一途をたどる。翌「明照3年」、「地球連邦」は突如「日本帝国」に宣戦布告し、「黒道」に大軍を派遣してきた。「黒道」はあきらめるしかない。我が国の諸団体はもともとの領土、九州島まで退いた。
だがそれで終わりではなかった。「連邦」は「一部九州島に渡った自国民の保護」だのなんだのと
それらしい口実をいくつも作ると、九州島にまで攻め込んで来たのだ。後に明らかになることではあったが、「連邦」は初めから我が国を侵略する計画だったのだ。
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講義をする塚原の声が震えた。その奥底に潜むであろう義憤を感じ取り、生徒たちに刹那の緊張が走る。それに気づいた塚原は自らを宥めた。あくまで冷静に、客観的にあらねば、歴史授業ではない。
呼吸を整え、再度語り始める。
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陸上兵力を十分に持たない我が国は、圧倒的な兵力の「連邦」に次々と領土を侵略されていく。その魔手は九州島だけに留まらず、中国地方、近畿地方へと伸びてゆく。維新以降、九州島は丸ごと「日向」県と行政区分されていたが、その北半分はすぐに陥落した。無数の避難民が県内の南部地域を目指して逃亡したという。「多々良関門」海峡を隔てて東に隣接する中国地方の南側、
「岩国」県は日向県の北部とは目と鼻の先であった。連邦軍はその勢いのまま東進して、岩国県の県庁所在地である岩国市を攻略した。岩国市は10日ともたずに完全に陥落。知事も拘束された。
連邦軍は、さらに東に隣接する中国地方東部の「播磨」県をも脅かす。一方中国地方の北側を進む連邦軍精鋭は、古くは出雲と呼ばれた地域を中心とする「青海」県を少しずつ侵食していく。
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塚原は時折、背後の黒板に掲載された地図を指し示しながら講義を続けるが、その日本列島は「令和の日本国」の日本列島と海岸線の形や、都市、地域の配置もところどころ異なっている。それでも地理に疎い人ならば、その細かい違いには気づきもしないぐらいにお互いは酷似している。自然的な摂理かも知れないが、都市、地域の名前も全く同じものがちらほらと見受けられる。そして、温暖な中緯度の位置に恵まれ、湖沼や細かい襞にように隈なく走る河川の存在から、極めてよく似た、水と緑に満ちた美しい自然環境の国土であることが推測できよう。
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「青海」県は古い神話の聖地も多く、帝国人として心の拠り所である。また、維新以降、西欧化も進み、それまでの農業、漁業に加えて商工業の発展も目覚ましい。大切な領土をこれ以上無抵抗で渡すわけにはいかないと我々帝国軍は奮起した。今更に、動員できる余力の全てをを結集、投入して連邦軍に立ち向かった。だが、敵の軍略と銃火器の多さに圧倒され、塩冶原にて決定的な敗北を喫した。青海県の県庁所在地である青海市もついに陥落し、帝国軍は四散した。そのうち本戦の主力でもあった第11師団は南東に隣接する播磨県の内陸部に本拠地を移す。だがここにもさらなる追撃が迫る。こうして、劣勢の帝国軍はどこまでも追い回されてゆくのだった。
開戦から既に2年近くが経過している。「明照5年」、泥沼の戦況の中、じりじりと奪われていく領土と人命。絶望的な「くにつかみ戦争」は続いていた。まさしく国家的危機。我が国にとって失意の時代だった。異世界人「タケル」がこの世界に出現したのは、失意に打ちひしがれた、その戦線のひとつだった。その後「タケル」が捧げたその能力により、我が国は苦しみながらもその勢いを取り戻すことになる。
そして最終的には失われた国土回復という、途方もない奇跡ですら手にすることが出来たのだ。
今一度言おう。これはあくまで歴史的事実である。だがそれはもう二度と起こり得ないに違いない。
だからこそ、奇跡であり、伝説と呼べるものなのだ。どうか胸に刻んで欲しい。
さあ、今こそ語り継ごう。現代を生きる若き世代に、その伝説を!
前書きにも触れましたが、人生初の小説、初投稿になります。ペンネームは素人の意味の「とうしろ」に「日本人としての志」の意味合いを込めて、この名前に決めました。プロローグ、如何でしたでしょうか?次回からいよいよ本編。(老)塚原の講義する50年前の戦記が、主人公「タケル」視点を中心としたストーリー展開で語られてゆきます。乞うご期待ください。今後の目標としては、戦記ものでありつつ、繊細な人々の心情も織り込んでいけたらいいなと思っております。
構想から3年以上かけて思考実験を繰り返してきました。ストーリー、地図や設定を細々直していたら、『戦記もの』イベントについに間に合いませんでした。でも焦って半端なものを提供したくない、という思いが第一です。無い知恵を絞って、練り上げて、『いい年した大人でも本気で楽しめる』面白い作品にしていきたいと願っております。よろしくお願いします。




