孤独の魔導士と、優しすぎる剣
夕暮れが、ゆっくりと世界を染めていく。
高台の上。
風が、静かに草を揺らしていた。
「……ここ、覚えてる?」
ルークがぽつりと呟く。
「ええ」
ルナが頷く。
「最初に会った場所の近くだよね」
「……そうね」
短く返す。
あのときは、ただの偶然だった。
関わる必要もなかった。
それでも——
こうして隣にいる。
「……変な感じね」
ルナが小さく息を吐く。
「何が?」
「最初は、あなたのこと面倒なひとだと思ってた」
「今もじゃない?」
「……今は違うわ」
即答だった。
ルークが少しだけ目を見開く。
その反応を見て、
ルナは一瞬だけ視線を逸らした。
「……今は」
言葉を探す。
でも、もう迷わない。
「いないと困る」
あのときと同じ言葉。
でも、意味は全部違う。
ルークは何も言わずに聞いている。
だから、続ける。
「隣にいるのが当たり前になってて」
「それがなくなるの、嫌で」
一歩、距離を詰める。
逃げないように。
「……だから」
ほんの少しだけ息を吸う。
そして。
「好き」
短く、はっきりと。
言い切った。
風の音だけが残る。
心臓の音が、やけに大きい。
でも。
逃げたくはなかった。
ルークが、ゆっくりと息を吐く。
「……先に言われた」
少しだけ困ったように笑う。
「遅いのよ」
ルナがそっけなく返す。
でも、声は少しだけ柔らかい。
「ごめん」
「だから謝らないで」
そのやりとりが、少しだけ懐かしい。
最初の頃と同じで。
でも、全然違う。
ルークは一歩、近づいた。
今までで一番近い距離。
「俺も」
真っ直ぐに、目を見る。
「ルナのことが好きだ」
迷いのない声。
静かだけど、確かな言葉。
それだけで、十分だった。
もう分かっている。
気持ちは同じだって。
それでも——
ちゃんと聞きたかった。
だから。
嬉しかった。
「……知ってる」
小さく呟く。
それでも、少しだけ視線を逸らす。
完全には慣れない。
でも。
もう逃げない。
ルークが、ゆっくりと手を伸ばす。
触れるか、触れないかの距離で止まる。
「……いい?」
小さな確認。
前とは違う。
ちゃんと、待っている。
ルナは、ほんの一瞬だけ目を閉じた。
そして。
「……好きにして」
小さく答える。
それが、今の精一杯。
次の瞬間。
距離が、埋まった。
触れるだけの、短いキス。
でも。
それだけで、十分だった。
離れたあと、
どちらも何も言えなかった。
ただ。
少しだけ、距離が近いまま。
そのまま、並んで立っていた。
風が吹く。
夕焼けが、少しずつ夜に変わっていく。
孤独だった魔導士は、
もう、ひとりじゃない。
優しすぎる剣士は、
もう、迷わない。
二人で歩く道は、
これからも続いていく。
少し不器用で、
でも、確かに繋がったまま。
触れた手を、離さないまま。
ここまで『孤独の最強魔導士は、優しすぎる剣士に絆される』を読んでいただき、本当にありがとうございました。
ここまで読んでくださった方の中に、
二人の関係ややりとりを少しでも好きだと思ってくれた方がいたら、とても嬉しいです。
もしよければ、感想や評価をいただけると、今後の励みになります。
ここまで本当にありがとうございました。
またどこかで、お会いできたら嬉しいです。




