驚きの結末
王宮に私的に呼び出されたレオニスは、国王陛下と交渉を行うことになった。
その結果。
リーデライナーの件は、公にしないということになった。
代わりにレオニスは、探偵が彼に報告していた、私の過去の行動記録を国王陛下に提出。その上で、パトリックが指摘した、私が媚薬で三人の令息を誘惑した件の検証を依頼した。つまり本当にそんなことがあったのか、秘密裡に調査するようお願いしたのだ。
するとパトリックの近衛騎士も、宰相の息子も、公爵家の令息も。周囲の聞き取り調査と本人の申告が一致しないことが判明した。それどころか三人とも、度々ティアラと密室で二人きりで過ごしていることが、明らかになる。
逆ハーを楽しんでいたティアラは、この三人とは際どい関係を持っていたようだ。国王陛下の取り調べに対し、どこの使用人たちも嘘をつけなかった。密室で何をしていたのか示すような証拠の隠滅に、使用人が加担していたこともバレてしまったのだ。
これを踏まえ、本当に私が媚薬を使い、誘惑したのかを問い詰めると、三人は「パトリック殿下とティアラに頼まれ、偽証した」と認めた。三人が嘘をついたことは、国王陛下により、大々的に発表された。何の罪もない公爵家の令嬢の名誉を貶めたのだ。裁判にはならなかったが、社交界から彼らは干されることになる。さらに対家同士の話し合いが行われ、それぞれ以下のようになった。
パトリックの近衛騎士は、近衛騎士の任を解かれた。さらに騎士の地位を剥奪され、我が家に対しては、自身の所有する銀山の採掘権を譲渡することで合意した。
宰相の息子は、宰相補佐官を辞職し、自宅謹慎。さらに我が家に対しては、父親である宰相が所有する貿易船一隻が、譲られることになった。勿論、フルメンテナンスをしたものを。
公爵家の令息は、勘当された。困った彼は、ありったけの貯金をかき集め、隣国を目指す。ところが途中の森で、消息を絶っている。我が家に対しては、令息の父親から多額のお詫び金が支払われた。
パトリックに対しては、レオニスが決闘を申し込み、それは国王陛下により認められる。決闘といっても、それは名誉の回復のために行われるもの。相手を殺傷することが目的ではない。
ゆえに決闘は騎士であれば軍服、それ以外であれば身動きやしやすい服装で行われていた。令嬢の決闘では、ドレス姿で行われることもあるぐらいだった。
だがパトリックは何を勘違いしたのか、兜に甲冑に巨大な盾と、ガチガチの防御態勢。決闘の相手は、王立イーグル騎士団の団長だ。パトリックは、自身が害されるかもしれないと、本気で思ったようだ。
繰り返しになるが、この乙女ゲームの世界での決闘は、名誉回復が目的。殺傷は禁じられている。しかも誇り高き王立イーグル騎士団の団長であるレオニスが、パトリックの命を取るなんてこと、するわけがない。さらに言えば、この決闘は、国王陛下も観覧している。
結局、この決闘は、開始と同時にパトリックが尻もちをつき、ひれ伏すように謝罪をすることで終わった。開始一分以内で終了している。しかも国王陛下が観覧したぐらいだったので、広場には王都中の貴族が集合していた。
パトリックは王族としても、一人の男としても、大恥をかくことになった。逆にレオニスは、尻もちをつき、号泣するパトリックに手を貸した。パトリックを立ち上がらせ、励ますレオニスの姿は、賞賛の的になる。婚約者の名誉のために決闘を行ったが、弱すぎた決闘の相手を蔑むことなく、手を貸したのだ。しばらくは美談として、社交界で話題になった。
一方の国王陛下は、この情けない姿を見て、心底パトリックに失望することになる。もはや王族と認めないと判断し、早々にティアラと結婚させ、男爵位を与え、王宮から追い出すことを決めた。
そのティアラの父親であるマネースキー伯爵は、爵位剥奪と財産没収が決まっている。ただ、我が家へのお詫びとして、マネースキー伯爵家が所有している大理石の鉱山だけは、我が家に譲渡されることが決まっていた。
ティアラの実家は爵位剥奪になる。だがティアラは、パトリックの婚約者であることに変わりはない。そして悪女の称号は、ティアラが得ることになった。さらに王族の婚約者でありながら、宮殿で開催される舞踏会・晩餐会・お茶会への参加は、禁じられている。こうなると他の貴族も誰もティアラに招待状を送ることはない。しかも結婚後、男爵位を得るが、その領地は……呪われた土地と言われるアントロープだ。アントロープはかつて処刑場として多くの罪人の血が流れた場所だった。今は、墓場ばかりの土地だ。
すべての元凶がティアラであることを、国王陛下も分かっている。ティアラを断頭台に送ることもできると、レオニスは国王陛下に言われていた。でも私はそこまでを望んでいなかった。ティアラには、生きて罪を背負ってもらうため、今回の処遇にしてもらったのだ。
煌びやかな生活を好むティアラが、美しく着飾り、ちやほやされるための舞台である舞踏会や晩餐会に招かれないことは、相当な苦痛のはず。しかも新婚生活は、血塗られた歴史を持つアントロープで送ることになるのだから……。
これがヒロインのエンディングなのか。
自らが逆ハーを選んだ結果ではある。
それでも前世ゲーム知識を持つ私としては、この結末には、ただ、ただ、驚くしかない。



















