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真田隆盛記 ~おゆきの戦国日記(ぶろぐ)~  作者: とむ熊 しのぶ
反撃後編
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058 山崎の戦い その1

にらみ合う信忠さんと明智さん両軍。いよいよ山崎の戦い開幕です。


信忠さん率いる主力全軍が山崎に着陣した。明智勢とは永荒沼を挟んだ様な状態で向かい合った形になっている。


件の大山崎はどちらも取れず。狭隘を挟んでの陣地が構築されている。


戦術的にはどちらかと言うと明智さんの望んだ形に近いのだが、明智さんを山崎に誘引する事を優先させた為であるので、強ち失策とも言えない。



狭隘の出口西側には、摂津勢と中国勢先陣が並ぶ格好で陣が置かれ、その後に、中国勢主力がずらりと並ぶ。


中国勢主力のうち、官兵衛さんの部隊だけは分派され、細川さんの部隊と並んで天王山を回り込んで来る部隊(来るかどうかは判らないが)に備えている。狭隘を正面に南⇒北⇒西に鍵型の陣が引かれ、その中に信忠さんの本陣がやや北よりに置かれる格好だ。




本陣はやや小高い場所には置かれているが、それ程本陣に適した場所とは言い難い。場所取りに負けて、贅沢は言えないと言った感じだろうか。


もちろん、私と佐助、女衆(男装中)、青海は信忠さんの側に控えている。十蔵はやはり、戦場調査の為一旦離れ、戦闘開始には間に合わなかった。


「斉藤利三が居ない?」


信忠さんが、戦場の状態を探っていた者達(非忍者)が持たらした情報に首を捻る。


そんな筈は無い。と言いたい所だが可能性があるとすれば主戦場とは別の所で重要な役割を遂行中という事だ。


「堺勢方面に分派した一隊があります。それを率いているのでは?」


確かに光秀さんは、山崎に陣を敷く直前に、二千という割と大きな部隊を分派させ堺勢に向かわせている。これ自体は至極全うな判断といえる。万一堺勢に後に回りこまれたら、それで一巻の終りだからである。


二千の兵でも、伏兵等を配備しつつ遅滞戦闘を行わせれば、結構厄介な兵数と言える。これに、歴戦の勇将である利三さんを当てるは至極全うな判断と言いたい所ではあるが、主戦場の方で彼を欠いたが故に負けたのでは本末転倒である。


堺方面に分派した二千の動向は十蔵自らが探りに行っており、実は今彼が居ない理由はこの為である。普通の情報収集なら兎も角、大規模の戦闘集団の詳細を探る為にはかなりの手練れで無いと難しいからだ。


物凄く気になる事ではあるが、我々も正直手が足りない。利三さんの行方については通常の斥候さん達に任せるしかないだろう。



そして戦場に銃声が鳴り響く。前線で戦闘が始まったのだ。


次々と背中に幌を担いだ侍達が報告と伝令の為、信忠さんの前に現れてはまた戦場に消えて行く。その戦況報告を聞く限り、戦況は全く互角、摂津勢も中国勢先陣も歴戦の兵達だが、それは明智勢も変わらない。


錬度も戦闘ドクトリンも殆ど変わらない織田勢と元織田勢同士なので、戦闘力にはほぼ差が無く、戦況が動き難いのだ。そして、この段階で信忠さんの仕事は余り無い。


戦場を横に広げられない為、数の有利は生かせない。正に光秀さんの思い描いた通りの展開になっている。


秀吉さん率いる中国勢主力は先方の摂津勢や中国勢先陣と見事な機動で入れ替わりながら、新鮮な戦力で明智勢の圧迫を計るが、その見事な部隊機動も今の所大きな成果を上げていない。一応これも想定の範囲内ではある。只管これを続ける事によって相手の疲弊待つというのが今回の基本戦術だからだ。我慢の為所なのだ。


しかし、只本陣で待つ身としては、中々精神的にしんどい状況ではある。



信忠さんは自分が歴戦の勇将たちに比べ、戦場においては圧倒的に経験不足である事は知っているので、開戦後は秀吉さんを中心として現場の判断に委ねる方針を取っている。


「俺が役に立つとしたら、この戦場で勝った時か、負けた時ぐらいだな。と冗談を言っていた程だ。」


正直私は自ら戦場に飛び込んで、状況把握に走りたいと思ったのだが、勿論そんな事をやっても何の意味無い事も重々承知している。ただやはり戦局の報告を聞きながら焦れている信忠さんを見ると何かやって上げたくしょうがない気持ちになってしまうのだ。


周りの忍軍を見ると、女衆は勿論、青海ですら目の前で繰り広げられてる本格的な戦争に只見入っている様だ。佐助は割りと平然としている。別に彼がこういった戦争に慣れていると言うわけではない。只興味が無いのだ。


私はふと思い出した様に信忠さんに語りかけた。


「信忠様これを覚えておりますか?」


私は、女衆によって纏められた髪に刺さっている朱塗りの簪を信忠さんに見せた(普段私は郷でもあまり垂髪で過ごす事は無く、いつも後ろで髪を縛った下げ髪でいる事が多いが、今日は女衆が纏めたので、下げ髪と玉結びの中間の様な凝った髪型になっている)。もちろん簪の先には白い梟の鈴が付いている。私がそれを信忠さんに向けた事で、小さくチリンっと言う音がした。


実はあの日以来、私はこれをいつも懐に忍ばせて持ち歩いていた(あの妙覚寺からの脱出行の時すら)のだが、山崎に着き、本陣が置かれ、いざこれからと言う時、何となく気合が入れたくなって、懐からこれを取り出し、挿してみたのだ。鏡を持ち歩いてないので正直どの様に挿さっているか判らないが、女衆が何も言わない所を見るとそれ程変って事はないだろう。


正直今の今まで忘れていたが、信忠さんの気を紛らわすネタを考えていて、ふと思い出したのだ。


それを見た瞬間、それまでかなり険しくなっていた信忠さんの表情が和らいだのが判った。予想以上に効果があった様だ。やったね!


「勿論だとも。今だから言うが其れを渡す時は凄い覚悟でだったんだぞ。一目ぼれしたほぼ初対面の相手に何かものを渡すなんて経験、俺の人生で初めてだったからな。無事渡せたまでは良かったんだが、その後舞い上がりすぎて連絡先を聞き忘れた事に後で気付いた時は酷く落ち込んだものだ」


また、そういう事を恥ずかしげもなく・・。しかもよりにもよってこんな時に言わなくても良いじゃないかと思わずには居られない。とは言え、多少なりとも気を紛らわす事が出来たのであれば、作戦大成功である。


何故か女衆からキラキラビームが飛んできたが、君達今男装中だろう。乙女スイッチを入れるのは止めなさい。


そして、佐助からも物凄い不機嫌オーラが飛んで来たが、そっちは気付かない振りをした私であった。


おゆき目線だと中々(特に大規模な)戦争を描くの難しいですね。実際序盤における本陣ってこんな感じじゃないかと想像して書いてます。特に今回は秀吉さんが事実上の司令塔をやってますからなお更です。おゆきも信忠さんもヒマ~な感じなので、あの日の思い出をこんな感じで無理くり挿入してみました。それにしても信忠さん、おゆきちゃんの事好きすぎですよね(^^;A

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