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真田隆盛記 ~おゆきの戦国日記(ぶろぐ)~  作者: とむ熊 しのぶ
反撃前編
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042 滝川一益

すんでのところで間に合った黒曜。昌幸父さんのご機嫌は急降下に・・。


「わしは沼田に向かうぞ。庄八郎ついて参れ」


凄くつまらなそうに言う父。


「いよいよ出陣ですか!」


堀田さんが景気よく声を上げたが、イヤイヤと言う感じで手を振る父。


「如何なされたのですか?」と当然の質問を左近さん。


「甚八の知らせによれば、おゆきが信忠公を助けに行ったそうだ。忍軍はこれを全軍で支援する事になったそうだ。おゆきめ・・・余程信長親子を気に入ったと見える。いや、倅の方か?これだから十六(数え)の生娘は・・。しかし佐助らはあ奴を止められなかったのか?」


ぶつぶつ言いながら一旦部屋を下がる父。左近さんと庄八郎師匠がそれに続く。


「佐助に姫様が止められる訳が無いでしょう。それを承知で佐助を今回の纏め役に選んだのでは?」


庄八郎師匠が何を今更という感じで答える。


「血気盛んな若手の忍軍が暴走し無い様にと考えたんだがな。今回は逆の目が出たか・・。」


要はこういう事だ。戦好きの若者たちが暴走してしまわない様に、温厚(自称)な私に絶対の忠誠を誓っている佐助をリーダーとする事で、私がこうだ!と思った方向以外には走り出さない様にしたのだ。なんだかんで私の直観力に信頼を寄せていると言う事なのだが、私としても今回の判断が正しかったという事を証明したいものだ。もちろんそれが父の好みかどうかはまた別の問題だが・・。


「甚八の予測では信長公は危ういが、信忠公は助け出せるのでは無いかと伝えてきておる。佐助がおゆきを行かせたという事は、事をしくじるとは思えん。その前提で事にあたるぞ!」


本当は此方も危機一髪どころでは無くかなり危うかったのだが、結果的にはその通りになった訳だ。


父は鎧を一旦脱ぐと、戦袴姿はそのままに、庄八郎師匠を連れて沼田に向かった。



「安房守!それは誠か?!」


戦袴姿で現れた父を怪訝な表情で見ていた一益さんだったが、その知らせを聞いて驚きの声を上げる。


「上様謁見の為、たまたま上洛していた我ら一行からもたらされた情報であります。お知らせしていた様に真田の忍びの者が護衛として同行して居りました故にかなりの速度でこの報は届けられましたが、いずれ滝川様の元へも一報が届けられる筈です。ただ事が事だけに後手に回ると極めて厄介となる可能性が強うございました為、何ものも置かずご報告に上がりました。」


普段の父を知る者からすると目を丸くしたくなる程殊勝な物言いだが、さすが庄八郎師匠はおくびにも出さない。


「それで信長様の安否はわかっておるのか?」


「いや不明です。この報も光秀軍の京への侵入を察知した我ら手の者が、慌てて救援に向かう直前に送られたものですので、その後の続報はまだ・・。ただ光秀めは既に桂川を超えていたとの既述もありましたので、正直かなり危ういやもしれませぬ。」


唸る一益さん。


何故だか良く判らないが一益さんは父の事を全面的に信頼している。自分も忍者の出身(噂)だからか、武田の旧臣に昔ながらの素朴な武辺をイメージしているのか・・。多分後者だろう。父の真の正体を知ったら愕然とするに違いない。


「判った。どの様にでも対処できる様に、儂は軍勢を率いて岐阜まで移動する。沼田は安房守に預けたいが構わぬか?北条の動向が気になるでな・・」


恐らく父は「ラッキー!迂闊に攻めなくて良かったー!」と小躍りしたい様な気分だったに違いないが、ぐっと我慢して「承知仕りました」と殊勝に答え、更に続けた。


「では、木曽から抜けられるのが宜しいでしょう。息子の源三郎に木曽義昌の所まで案内させましょう。我々も既に岩櫃に手勢を集めつつあります故、そちらにお寄りください。」


「うむ。では早速準備をさせる。そなたは先に岩櫃に戻って準備せよ。そうだ預かっているおしの殿も一緒に連れて行くが良かろう。ここも戦場になるかも知れんからな。信長公にも既にご子息を人質に出されているのだから、もはや構わぬだろう」


おしの殿とは言うまでもなく私のお祖母ちゃんの事だ。父は首を垂れて感謝の意を表す。


「ところで権六。いや柴田へはこの件は伝わっておるのか?」


一益さんはさりげなく聞く。柴田さんはいわばライバルだ。気になるのだろう。


「いえ、さすがに柴田殿とは上杉領を挟みます故、我々からは・・。」


それを聞いた一益さんは、そうか、そうかといった感じで頷いていたがふと思いつた様に付け足す。


「そうだ。今海津城に入っている森長可に使いを出してやってくれ。場合によっては援助を頼む」


さすがにそこまで手が回るかなぁ・・。と不安を覚えた父だったが、全く表情には出さず、「善処します」的な事を言ってその場を下がった。


岩櫃へ(心の中で)スキップしながら帰途につく父であった。


庄八郎師匠と無事解放されたお祖母ちゃまは、それを冷めた様な生暖かい様な目で見つめていたとか、いなかったとか。


史実では沼田を奪ってしまったお父さんでしたが、このお話では間一髪で思いとどまります。黒曜ちゃんナイスプレーです。でもこの事が真田を運命をどう変えるのか?或いは変えないのか?(笑)

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