表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
真田隆盛記 ~おゆきの戦国日記(ぶろぐ)~  作者: とむ熊 しのぶ
京前編
PR
32/268

030 春長軒

おゆきを呼び止める春長軒。語られたのは甲州征伐がもたらしたある一つの不幸についてだった。


信忠さんが心無しか嬉しそうに、小姓を連れて退場した後、私は「すいませんね~」と言いつつきりを介抱していたのだが、居残っていた春長軒さんから、ちょっと良いかな?と声を掛けられた。


お前調子に乗ってんじゃねぇぞ!とかお小言を言われるのだろうか?どうもこのおじさんは苦手だ・・。


「お主。上様いや信忠様の事をどう思っている?」


ん?どういう事?


「儂の見立てでは信忠様はお主に明確な好意を持っておる。そしてそなたも恐らく・・」


爺さんが、ぶっこんで来た!


ちょっおまっ?!何言ってんだ!



・・・いや正直な所、私も薄々は考えなくもなかったよ。私はそういった経験が皆無と言って良いので、明確に言われるまでは、意識できなかったのだが、そう確かに私は、信忠さん、いや奇妙さんの事をあの伏見の夕焼け以来好きになっていたんだと思う。


ただ、春長軒さんの問いかけの意図が今一つ掴めず、返答に窮していると、私の返事を待たず、春長軒さんが続けた。


「お主に話しておかなければならぬ事がある」


何?何?ちょっと怖いんですけど!


「信忠様はお松殿という正室を迎えられておる。また、そのお方との間に三法師様と言うお子も作られておる。」


正室?そうなんだ。もちろん私の姉ではない。奥さん持ちと言うのはちょっと残念な気はするけど、天下人(予定)の正室がどうとか私はそう言う野心はないですけど?


奇妙さんの事は多分好きだけど、織田家惣領信忠様の事は正直わからんよ。大分面倒臭いなぁという気もしなくもない。


「三法師様は今、安土にて帰蝶殿と暮らしておるのだが・・。」


帰蝶さん?確か信長様の正室だっけ。あまり表に出てこられない方みたいだけど、聡明な内助の功的な女性で通ってるよね。そうか三法師ちゃんは、お祖母ちゃまと暮らしてるのね。あれ?お松さんとやらはどうした?


「お松殿は実はもうこの世にいない。信忠様が甲州征伐で武田をうち滅ぼしたのを恨みに思って、抗議の意味で自刃して果てた・・。全く馬鹿な女だ・・」


春長軒さんは吐き捨てるように言った。


なんかどんどん話が聞きたくない方向へ行く。何とか逃れる術はない物かと思案するが、成す術無くただ聞くしかない私。春長軒さんは続ける。


「お松殿は武田信玄とその正室三条の方のご息女。勿論、政略結婚だったわけで、正直信忠様との仲も冷めたものだったのだが、その様な事戦国の世では珍しくもない話だ。」


確かにそうね。うちの両親の様なケースの方が珍しいと言っても良いだろう。


「ところが、お松殿の憤死は、予想以上に信忠様を深く傷つけた様だ。元々女性にお優しいお方だが、良くも悪くも善人なのだ、あの方は。理屈では理解出来ても感情では中々割り切れなかったのだろう。甲州征伐を終えて、この事実を知った時の落ち込み様は周囲をかなり驚かせるものだった。」


うーん。伏見稲荷で父親の後を継ぐしか無いといった時の寂しそうだった顔は、恐らくそう言った感情があっての事だったのだろう。


本当に馬鹿な女だ!!なんか急に腹が立ってきた私。とは言え恨みを晴らすと言う目的は確かに果たしたとも言える。


「所がここ数日、その上様が妙に上機嫌でな。今から思えば京の何処やらでお主とであった日以来だったのだろう。」


ん?其処へ繋がるのか。


あの睨め付ける様な視線はもしかしてその所為?いやあの段階では幸村=おゆきの正体は知ら無い筈だから、其処までではないか?恐らく信長さんから事前に私が女だと知らされていて、私が信忠さんを篭絡しに来た性悪女じゃないか見極め様としていたのかな?


「お松殿は、三条の方の息女と言う事で公家は勿論皇室にも連なる者が多い。その為外聞を考えて、俄かにはその憤死の事実は公表出来ないでいる。だから仮に信忠様がそなたを室に迎えるとおっしゃられても、側室以上の地位は与えられん」


だから私はそんな野心めいたものはないって。というか話が飛びすぎだろう、信忠さんは私をお嫁さんにするなんて一言も言ってないよ!


うーんでも春長軒さんの立場としては、だから信忠さんの事は諦めろって事が言いたいのかな?


だが、次の春長軒さんの一言は、私の予想とは全く逆だった。


「それでもお主に頼みたい。もしお主が信長様や信忠様の見立て通りの者なら、どの様な形であれ信忠様を支えて貰えぬだろうか?少なくとも信忠様は其れを望んでいる筈だ」


私に一言も発する事を許さないまま、それだけ一挙に言って、春長軒さんは立ち去った。


結局何が言いたいんだ?あんた?!っていうかその話、重過ぎるんですけど!!


私が心の中でぶっこみ爺に散々悪態の限りを尽くしていると、突然きりが目を開いた。


お前さては狸寝入りしていたな。まぁ確かにあんな重い話をされている最中突然起きるなんて出来んわな。


「姫様!恋は盲目!頑張りましょう!!」


横になったまま小さなガッツポーズまで作って、物凄いいい笑顔でそんな事を言い出した。




お前まで一体何を言ってるんだ?!



京編もいよいよ本能寺の変に突入します・・・?かな でもその前に予想より長くなったので一度中書きを挟もうかと思います。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ