第5話 先生にも分かりません。
先生も大変だな~(すっとぼけ)
朝。
職員室。
始業前の職員会議が始まろうとしていた。
「それでは、朝の連絡事項を始めます。」
教頭が資料を開く。
今日も普段と変わらない内容だった。
各学年への連絡、生活指導部からの報告、校内行事の確認――いつもの朝の職員会議である。
「続いて、転校生についてです。」
その一言で、職員室の空気が少し変わる。
「二年二組へ、本日一名の転校生が入ります。」
二年二組の担任である佐倉先生は資料へ目を落とした。
「鈴野……真弥?」
初めて見る名前だった。
教頭は静かに続ける。
「少し特殊な事情がありますので、最後まで説明を聞いてください。」
職員室が静まり返る。
「鈴野さんは、海外……。」
「ではなく、異世界からの来訪者です。」
「…………」
誰一人として反応しなかった。
いや、できなかった。
数秒後。
「……はい?」
ようやく一人の教師が口を開く。
教頭は真顔のまま頷く。
「異世界です。」
「え?」
「異世界来訪者保護支援室による正式な身元確認が完了しています。」
そう言って一枚の書類を掲げる。
そこには、
『身元確認済』
『日本国内での生活・就学を許可』
という文字が並んでいた。
「なお、関係省庁との手続きも完了しております。」
職員室は静まり返る。
誰も突っ込めない。
「質問はありますか。」
全員がある。
しかし、何から聞けばいいのか分からない。
やがて一人の教師が恐る恐る手を挙げた。
「……異世界、ですか?」
「はい。」
「本当に?」
「はい。」
「夢じゃなく?」
「現実です。」
教師は静かに座り直した。
「そうですか……。」
理解はしていない。
諦めただけである。
教頭は続ける。
「なお、本人の希望により、一般生徒として学校生活を送ります。」
「一般……?」
誰かが思わず呟く。
教頭は資料を一枚めくった。
「続いて、本人の経歴です。」
その瞬間。
職員室の空気が変わった。
「リオス帝国・大公家当主。」
「帝国大学創設者。」
「半人半神。」
「国家最高位研究者。」
「皇帝直属顧問。」
「…………」
誰かが資料を閉じた。
現実逃避である。
「教頭先生。」
二年二組の担任、佐倉先生が、おそるおそる口を開く。
「……これは、本当に高校生なんですか?」
教頭は数秒だけ沈黙した。
「先生にも分かりません。」
教頭は咳払いを一つした。
「知的好奇心が非常に旺盛であり、未知のものを発見すると周囲が見えなくなる傾向があります。」
職員室中から生暖かい視線を感じた。
「……それは安心できませんね。」
「以上です。」
教頭は資料を閉じる。
「それでは二年二組担任の佐倉先生、よろしくお願いします。」
「……はい。」
返事はした。
だが。
(……今日からお世話になりそうですね。)




