第一話『元神童』ジスカル・リオン・バルザック
ジスカル・リオン・バルザックが“無能”と呼ばれたのは、五歳の春だった。
王国東の端を治めるバルザック辺境伯家は、代々強力な属性魔法の使い手を輩出してきた名門だ。炎、水、風、土、闇、光、いずれかを極め、戦場で武功を立て、王家を支えてきた家系。
リオンもその家系として父のジスカル・レイン・バルザックから重い期待をされてきた。
三歳の時から優れた観察力を持ち、四歳には剣術では大人にも引けを取らない腕力を、勉強では既に魔法高等の範囲まで理解していた、同い年の子たちとは比べ物にならない程に成長をしていたのだ。
「リオン様、早くしなさらないと遅れてしまいます!」
この人はベル、バルザック家の古参の執事さん
「大丈夫!きっと僕には才能がある!」
「父様や母様も、きっと認めてくださる!」
僕には才能も何もかもがある。5歳まではそう思っていた。だからそれまで努力などしたことがなかった。
自分には力があると思い込んで、未知数な未来を過信して。
幾度も見た。何も無い澄んだ空、それを見て僕は王国に仕えてこの大地を守るそんな思いを持っていた。
ギリギリで大広間に着いた。屋敷の大広間には一族が揃っていた。
父、辺境伯ジスカル・バルザックは炎と闇の二属性を操る戦場の英雄。
母、エリシアは光魔法の使い手で、治癒と結界を司る才女。
兄、アルトは風魔法を既に覚醒済みの学年首席の天才。
次男、セインは若く土魔法と炎属性の2つの適性が既に現れている逸材。
そして――三男、リオン。
「では始めよ」
魔導士の合図と共に僕は水晶に魔力を流す。
眩い光とともに水晶が魔法で彩っていく、、、
魔導官の合図と共に僕は水晶に魔力を流す。
兄のときは、鮮やかな翠の光が広間を満たした。
セインのときは、力強い黄土色が脈打った。
だが、リオンの番。
水晶は一瞬だけ、淡く灰色に揺らいだ。
「……これは……?」
魔導官の顔色が変わる。
水晶の内部に浮かび上がった紋様は、どの属性陣とも違う、複雑な多重陣。
「これは、、、戦術………?」




