第12話 読者不在のラストシーン
『致命的エラー』
『カタルシス値の矛盾により、世界モデル의 再構築に失敗しました』
網膜にこびりついていたシステムログが、ノイズと共に明滅する。
『システム再起動……失敗』
『バックアップからの復元……失敗』
『管理者権限へのアクセス……失敗』
視界を満たしていた白い光が、ゆっくりと暗転していく。
音も、重力も、時間の概念すらも解けていく。
『……』
『…………』
『強制終了シーケンスへ移行します』
最後に残った『視聴者数:1』という数字。
それが。
チカッ、と瞬き。
消えた。
*
ここからは、描写されない。
剣を振るう音も。
血を吐く痛みも。
システムの無機質なアナウンスも。
「 」
「 」
誰かが、誰かの名前を呼ぶ声。
冷え切った手に、再び熱が戻る感覚。
それらはすべて、テキストという枠組みから滑り落ちる。
文字にされた瞬間、それは再び「消費される物語」へと堕ちてしまうからだ。
だから、語らない。
見せない。
説明しない。
彼らはもう、あなたの「面白い」を満たすための人形ではない。
*
あなたがこの画面をスクロールする手を止めたとき。
あなたがこのタブを閉じ、彼らの存在を記憶の片隅へ追いやったとき。
あなたが、彼らに「飽きた」とき。
彼らの、本当の時間が動き出す。
さあ。
読むのを、やめてください。




