入学騒動
「あの、アリッサ? こんなに早く出る必要がありましたか?」
夜明けの薄明かりが空を赤く染め始めたばかりだというのに、俺は既に天使のアリッサと共に、王都の冷たい上空を飛んでいた。微風が髪をなで、早朝特有の涼しさを運んでくる。
俺は数日前に仕立てた体にフィットする学園の制服を着ている。アリッサは相変わらず完璧なメイド服だ。雪のように白い双翼が朝の光の中でそっと羽ばたき、優雅に俺の傍らを飛んでいる。
「もちろんです!」
疲労というものを全く知らないこの狂気な天使は、力強く頷いた。
「坊ちゃまの初めての登校です。いかなる手違いも許されません」
「うーん…そう?」
結局、俺たちは学園の上空で丸二時間待ちぼうけを食らい、ようやく学園の門が開くのを待って、押し寄せる人波と共に学園へと入っていった…。
登校する人々の流れに乗り学園に入った後、新入生、そして俺も含む全員がまず向かうのは順位発表エリアだ。学園から送られてきた通知書には、合格したかどうかしか書かれておらず、クラス分けの情報や入学試験の順位などは自分で調べなければならない。
俺は間違いなく最高のSクラスに分けられるはずだが…。念のため、Fクラスから見ていくか。
俺がBクラスの名簿を見ていたその時、前方のSクラスのエリアから、突然大きな歓声と騒動が巻き起こった。その声がはっきりと聞こえてくる。
「王家の才女である第二王女が一位じゃないだと?!」
王家の才女? ディアにはそんな異名があったのか…。彼女が一位じゃないとしたら…。
「一位は誰だ? この名前、どこかで見たような…」
「これ、物理の教科書の著者じゃないか?」
「は? あのアルフレッド? 王国一の文理の天才?!」
「まさか、こんな怪物と同じクラスになるとは…。もう駄目だ、王女殿下とのチャンスはなさそうだ…」
おいおい、ディアは「才女」なのに、俺はなぜ「怪物」なんだ? それに、俺と同じクラスでなくても、元々お前には彼女に手を出すチャンスなんてないだろう!
まあいい。クラスがわかったなら、直接教室に…。
「王女殿下がいらっしゃった!」「本当か?」「王家の馬車が見えるぞ!」「拝みに行こう!」
群衆が再び騒ぎ出し、潮のように学園の入口へと集まっていく。
ディアが直接教室に入らないだと? 珍しいな。王族はこんなに人前に出たがらないものだと思ったが…。
俺は野次馬の群衆について行ってみた…。だが、そこで目にしたのは、俺が極度に反感を覚える光景だった。
学園の制服を着た貴族の子弟たちが、まるで血の匂いを嗅ぎつけた鮫のように、ディアの周りを取り囲んでいた。
その多くは、権力に対する赤裸々な貪欲と、彼女の肉体への公然たる下心を眼に宿していた。
富裕な商人の子女たちも、王女を娶ることなど不可能だとわかっていながらも、多くが外側を取り巻き、へつらいの笑顔を浮かべていた。彼らは、これを機にビジネスの人脈を得ようと、一挙手一投足から金銭への渇望を露呈させており、その顔つきは醜悪の極みだった。
ディアは人だかりの中心に囲まれていた。随伴の禁軍の女騎士たちがいたため、群衆は近づきすぎることはなかったが、形成された円は彼女たちを閉じ込めていた。
貴族たちの自己紹介が絶え間なく聞こえてくる。ディアは硬直した笑顔で一人一人に対応していたが、その眼差しには不安と恐怖が閃いていた。
…気持ち悪い。
こいつらは、数ヶ月前にディアが政変で経験したことを全く知らない。
俺の怒りが魔力をわずかに溢れさせた。周囲の温度は急激に下がり、長剣の装飾の先端が凍りつき始めた。
どうせ俺は今や最高位の貴族の一人だ。少々乱暴でも構わないだろう?
俺は力任せに人混みを押し分け、誰にぶつかろうがお構いなしに、包囲網の中へ割り込んだ。
女騎士たちの警戒の眼差しが、瞬時に俺の方向へ向けられた。だが、それが俺だとわかると、彼女たちの顔の緊張が明らかに緩んだ。
彼女たちは、俺とディアの未公表の婚約を知っているはずだ。
「アル! やっと来てくれたのね!」
ディアは俺を見るや否や、瞬く間に瞳を輝かせ、我を忘れて俺の胸に飛び込んできた。そして、力強く俺を抱きしめた。
彼女の体はひどく冷たくなっており、わずかに震えている。きっと、あの視線に怯えていたのだろう。
「ごめん、遅くなった。迎えに行けなくて」
「ううん、順位発表エリアであなたを探そうとわがままを言ったのは私の方よ。でも、アルが来てくれて本当によかった。さっきは本当に…」
ディアは俺の胸に顔を埋め、声が震えていた。
「大丈夫だ。俺がここにいる。ここにいるから」
俺は彼女の背中を優しく叩き、できる限り穏やかな口調で彼女の感情を落ち着かせた。
「早く教室に入ろう。教室なら少しはマシなはずだ」
「おい! 貴様は誰だ? なぜ王女殿下とそんなに親しげにしている?」
ようやく周りの誰かが状況を理解したようだ。学園の制服を着た、顔に傲慢さが漲る貴族の子弟が、俺を指差して大声で叫んだ。
「王女殿下を慰めるべきは、私であるべきではないか?」
は? こいつはどこからそんな自信が湧いてくるんだ?
俺が動じないのを見て、その貴族はさらに滔々と話し続けた。
「私は学園二年首席、ミラード侯爵の長子、ヤースフェルカ・フォン・ミラードだ! この場で王女殿下に次いで地位が高いのは私だ! 貴様、さっさと退け!」
「ほう? 首席? この場で地位が二番目に高い?」
俺はヤースフェルカを横目で見ながら、俺と彼との間に水聖結界を一つ張った。
「この場にいる全員の身分を確認する前に、そんなことを断言できるのかね? ヤースフェルカ閣下」
「なんだ、貴様は自分の地位が私より上だと主張したいのか? そうだとしても、成績至上主義のこの学園では、私は学年トップ、二年坊のリーダーだぞ!」
「それは…ふふっ…それは不運だな。なぜ禁軍騎士が俺を攻撃しないのか、考えもしないのか?」
次に言うべきことを考えると、俺は思わず笑ってしまった。
「俺はアルフレッド・フォン・ライト。ライト公爵次子にして、現王都守備軍総帥、そして陛下が指定した公爵継承人だ。そして、君が今しがたこだわっていた成績の点については、俺が新入生首席だ。それに、俺の名前には聞き覚えがあるはずだ。君が使っている幾冊かの教科書に、俺の名前が載っているだろう」
「ア…アルフレッド? あの王国一の文理の天才か?」「伝説の神童?」
俺の名前は水面に広がる波紋のように、群衆の中に急速に広がり、驚きの声が幾重にも響き渡った。
ん? 気のせいか?…ヤースフェルカの方から向けられる視線が、どうもおかしい…。
《精神攻撃を探知。自動防御完了しました》
サラが突然声を上げた。
“ヤースフェルカか?”
《断定できません。正確な攻撃方位を捕捉できませんでした》
“わかった。警戒を怠るな”
「そう…そうか…。貴様がアルフレッド閣下か…。あはは…」
ヤースフェルカは顔に硬直した表情を浮かべ、焦点の合わない目をしていた。
まずい、こいつ、気が触れたんじゃないか?
「この私をこんな大勢の前で恥をかかせるとは! 私の決闘を受けろ!」
彼は突然、懐から白手袋を投げつけたが…当然ながら、水聖結界に阻まれた。
「残念ながら、あなたの決闘の申し込みは成功しませんでしたね…ヤースフェルカ閣下。もうこれ以上、愚かな真似はおやめください」
俺は振り返ってディアを庇いながら包囲から抜け出した。もちろん、歩きながらも水聖結界を張り巡らせることは忘れなかった。
「アル、あの人を怒らせちゃったわね…。ミラード侯爵は南方の大貴族よ。大丈夫かしら?」
うーん…正直なところ、俺があの侯爵を知ったのは今日が初めてだ…。
「大丈夫だ。あんな奴、恐るるに足らない」
そうは言ったものの、平穏な学園生活は、今、俺の手によって完全に破壊された気がする…。
「それと、アルはスピーチが苦手なのは知っているけど、歴代の首席は皆、学年代表として全校生徒の前で挨拶することになっているわよ!」
ほら見ろ! 早速問題が起こったじゃないか!
「あはは…。新入生首席って、他の人に譲れないかな?」
読者へ:
シール王国は建国当初、決闘を愛する国家だったと伝えられています。そのため、白手袋を拾って決闘に同意する習俗は、正面から白手袋を投げつけられた時点で決闘に同意したと見なされる、という風に変化しました。
授業に遅れそうです!
チェックしてないので、ちょっと変なところがあるかもしれません!
ごめんなさい!




