覚醒(2)
ぱあらあ
時間をとめれば流石にスキルも発動できまい。そのような考えは甘かった。
甘すぎたのだ。
彼女は、一瞬時間の檻に囚われたかと思われたが、抜け出してきた。まさかその刈り取りというスキルは時間という檻ですら閉じ込めることはできないのか。
2号はタイムマジックを破ったと同時に跳び、壁に体重を乗せ、その反発力を利用してエドワードに鎌で突こうとする。
カンッと言う音と共に二人の武器が目にも止まらぬ速さで連続でぶつかりあう。
ただ前と少し違うのは、2号のほうがおしているということだ。
私がおされている?最強であるこの私が?
理解が追いつかない。なぜ、こんなにも彼女の剣は重い。なぜ彼女の剣は鋭く、剣筋が見えない。前よりも格段に…強い。
勝てない…。負ける?負けるのか?
今まで感じたことのない感覚に襲われた。
いや、まだ終わっていない。大丈夫だ、打つ手がないわけではない。
「分かった、認めてやろう。貴様は強い。このまま押され続ければ私は負けるだろう。」
エドワードは2号の鎌をいなしながらそう言う。
「自分の置かれている状況がよくわかってるじゃない。てっきりプライドが高いから認めないかと思ったわ。」
私を挑発することで私が怒り、隙をつくって攻撃することを狙った作戦なのだろうが、それに乗るほど私も愚かではない。
いまかろうじていなすことが出来ているが、それも時間の問題だ。このままいけば壁にぶつかる。そうなったらもう袋の鼠だろう。
あれこれ考えているうちにエドワードは壁に追いやられ、ついに逃げ場がなくなった。
…仕方がないあれを使うか。
2号がエドワードの胸部を狙った斬撃を放とうと鎌を上げたとき、その一瞬を狙って動く。
「かかったな。その身でくらえ!スキル、クラウドコントロールを発動!」
「なっ…!」
2号はエドワードが放った黒い針状のものを身体を捻って躱そうとしたが距離が近すぎたため、背中に当たってしまった。
まさか隠し玉を持っているとは彼女も思わなかったのだろう。この至近距離での命中は大きなアドバンテージになる。
「お前……、何をした。」
「お前が食らったそれは物理ダメージを与える魔法ではない。私はお前に枷をつけてあげたんだ。」
エドワードの表情にまた笑みが浮かび始める。
「しかもそれは特別なのさ。……お前が受けたそれはな…、お前が動くと爆発するんだ。心臓がな!」
いいね。その絶望した顔。勝てると思っている相手に打ちのめされたその表情。
私はこれが見たかった。
これを見るために生きていると言っても過言ではないくらいの愉悦感。味わえたのはいつぶりだろうか。
「さあ!我慢比べていこうじゃないか!私が時間が尽きて死ぬのが先か、お前が動けずに斬られるのが先か!」
エドワードは今まで見たことがない程の笑顔で2号に襲いかかった。
「なぜお前は笑っていられる。時間が経てば死んでしまうんだぞ。」
2号はかろうじてエドワードの剣をいなしてはいるものの、動けないという誓約が徐々に彼女を追い込んだ状況にしていく。
「お前のその顔さ。」
「お前のその苦しそうな顔!絶望にのまれそうな顔!それが見れたのなら死んだって構わない!それぐらいそれは私を駆り立てるものなのさ!」
その時の彼は狂気そのものだった。
「正真正銘のクズね。私には到底そんな感情は分からないわ。」
「いつまでそんなことを言ってられるかなぁぁぁぁ!」
そう言いながら彼の剣の刃先が防戦一方な2号の服の至る所を少しずつ削っていく。
実際ほんの少しでも気を緩めれば致命傷を負い彼の勝利は確実というところまで来ていた。
刈り取りの効果によってエドワードが死ぬのはあと5分というところである。
通常は発動してから3分で死ぬはずなのだが、彼女が未熟なうえにエドワードが手練れであったため効果が薄いのである。
まあその時の彼女は知る由もなく、エドワードのしぶとさに困惑していたのだが…。
「おいおい、守ってばかりだがどうしたんだぁ!つまらないなぁ。もっと俺に向かって積極的に攻撃してみろよぉぉぉ!」
そしてその後も状況は変わらず、ついに二号が隙を作ってしまった。
「隙ができたなぁぁぁぁ!」
エドワードは確信した。紛れもない勝利を。
隙をついた剣を防ごうとするだろうがもう手遅れだ。お負けに今あいつは動けない。私の勝ちだ!
エドワードは剣を突こうとした。剣は彼女の腹部を貫こうとする。
切れる!
そう思った。
たが
「なっ!」
剣が全く通らなかったのだ。
なぜだ。なぜ通らない!いままでは切れていたではないか!
二号も何が起きたか分からず困惑していた。
「その剣では二号の体は切れないよ。」
背後から声がする…。……まさか!?そんなはずがない!私は確かに致命傷を負わせたはずだ!
「一号!どうして!?なぜ貴方がいるの!?致命傷を負って倒れているはずじゃ…」
驚きと困惑の表情で二号は言った。
「いやあ、危なかったよ。もう少しで死ぬとこだった〜。」
「貴方縛られてたはずじゃないの?」
「いやあ〜それがさ〜、致命傷を負って放置されたあと、流石にこのままじゃ死ぬ〜って思って。ある力全部を振り絞ったら〜、抜け出せたんだよね〜。」
あれこいつやんちゃなキャラじゃなかったっけ…。多重人格?
というツッコミは置いておいておこう。
「よそ見してると死ぬぞぉぉぉぉ!」
といって振り被ったエドワードの剣も、虚しく、二号の身体に当たった瞬間真っ二つに割れてしまった。
焦っているエドワードに対して一号が言った。
「スキル硬化。聞いたことあるよね〜。指定した物体の表面を硬くさせるAランク防御スキル。」
ほんわかした喋り方をしているが彼女がだす声には明らかにエドワードに対する殺気が混ざっていた。
しかしそれも当然である。彼女はエドワードに相当なことをされたのだから。
「なんで動けるの〜って顔だね〜。教えてあげるよ。私にあった残り少ない魔力をぜーんぶつかって深い傷だけ直して抜け出したんだ〜。」
抜け出すとこは力ずくなのかよ…。こいつの脳は筋肉か何かか!……じゃない。今すぐこの状況を打破する方法を…
「隙だらけだよ!」
「ぐはぁ……!」
二号が放った衝撃波にあたり、致命傷を負った。
…痛い…。…あまりにも……痛……すぎる!
口から血が出ている。意識も朦朧として動ける時間も残り少ない。
死ぬのか?本当に…。
いや。
「まだ…。終わっちゃいないぞ…。」
「いい加減あきらめなさい。もう時期刈り取りの効果も現れるはずだわ。」
「そうだよ〜。刺されて死ぬよりもあきらめて静かに死ぬほうがいいんじゃないのかな〜。」
一号と二号は口々にエドワードに向かって言い放った。
正直彼女の言うことが本当なら残された時間はあと二分もないといったところだろう。
だがもうこのような状況になってしまったからには仕方がない。私の全身全霊を尽くして最強の一撃をはなつ。
これに賭けるしか無い。
大事なのはタイミング少しでもずれればまたあのような強固な防御をされてしまうことだ。
殺気を押し殺して一瞬の時間で技を放つ!
「あーやっぱりもう無理だ。降参だ降参。おとなしく静かに死んでやるよ。」
「ああそれはよかった。けど一つまだ私に伝えてないことがあるわ。」
二号は強い口調で言った。
「なんだ?言ってみろ。」
「私にかけた動いたら死ぬ呪い、どうやって解くか教えて。」
二号はエドワードを睨みながら真剣な眼差しでそう言葉にする。
「それは俺にしか解除できない。そのスキルは俺とリンクしているからな。鍵と鍵穴の関係だ。スキルを使った本人にしか解くことができないようになっている。」
もちろんこれは嘘だ。敵が死ぬ直前であれば本当のことを言うなんていうのは馬鹿げた考えだ。当然殺すために利用させてもらうさ。
「じゃあ早くときなさい!それとも道連れにしようとかいうしょうもない魂胆で最後まで愚かに死ぬのかしら。」
「分かった。だが時間がない。動けないから私がそちらへ行くがいいか?」
二号は切羽詰まった状態だからか、私が殺気を押し殺しているのに騙されたのかやすやすと承諾した。
エドワードは鎌を肩に担いでいる二号に近づく。一号は二号の近くで少し警戒してその様子を見ている。
「じゃあ解除するぞ。………なんていうと思ったかぁぁ!」
今しかなかった。硬化はまだ続いているが彼女が無防備になっている今を見逃すわけには行かない。
エドワードはその一瞬にすべての魔力をこめ、二号に向かって渾身の一撃を浴びせる。
案の定予想してなかったのか鎌で応えるも不利な体勢になってしまった。すぐさま一号が硬化を強化させ、さらにエドワードに向かってスキルを使おうとするもあらかじめ警戒していたので放った白い玉によって突き飛ばされてしまった。
「どうだ?私の全力のスキル、デモニックスラッシュの味は!」
「二号…。もう…硬化が持たない。耐えてくれ!お願いだ!」
一号の必死な声が空間全体に響く。
「私は…二号として…こんな…ところで…!」
「諦めるわけには行かないんだぁぁぁぁぁぁ!!!」
彼女のその声とともに鎌がエドワードが発している魔力を吸収していく。
「なんだ…これは!なにが…。なにが起こっているんだ!」
「お前は…!これで…!終わりだぁぁぁぁぁぁ!!!」
彼女の鎌はエドワードの剣を圧倒し胸部に最大の一撃を入れる。
彼はとても大きな悲鳴を上げた後パタっと後ろに血を流して倒れた。




