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フィナの最初の証言
移動先の廃礼拝堂で、リオルは班長と向き合った。
卓上には八年前の記憶固定剤と、受領印を写した紙がある。班長は最初、印は盗まれたものだと言い張った。
リオルは能力を使わず、薬包の封を開いた。内側には七色の糸の細片が貼られている。フィナが受け取った証拠として残したものだ。
「なぜ妹へこれを飲ませた」
班長は長い沈黙のあと、摂政府の役人が月に一度、フィナへ質問していたと語った。十二年前の三日間に何を見たか、誰の名を聞いたか。忘れさせる薬を使う一方、特定の記憶だけを固定して何度も証言させたという。
「何を見た」
「王立誓約院の地下で、五人が一枚の契約へ血印を押すところだ。お前もいた」
リオルの失われた三日とつながる。
班長は、その契約の保管番号を知らなかった。だがフィナが毎回同じ言葉を繰り返していたことは覚えている。
《王冠は権利ではなく、返せない借り物》
リオルは七色の糸のうち、まだ意味の分からない白を見た。妹は記録を残しただけではない。建国時の誓約に関わる何かを、十二年前に知っていた。
地下牢脱出は終わった。だが牢へ至る三日間の扉は、今ようやく細く開き始めた。
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