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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第十章

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49.朗らかなヤンデレ

 奏に睨まれるというよくわからない現象に見舞われはしたものの、その後の俺達はいつも通りの雰囲気のまま、空港ターミナルの移動を開始した。


「へえ、シャトルバスに乗って移動するんだ」

「うん。こっちの向こうのターミナルだったら徒歩移動が出来たんだけど、国際線があるこっちのターミナルは繋がってないんだよね」


 俺達はやってきたシャトルバスに乗り込んだ。


「……す、すごい混んでるね」

「インバウンドの影響だねぇ」


 シャトルバスの車内は、日本語以外にも英語、フランス語、それ以外の言語も飛び交っていた。

 それくらいの多言語が飛び交う車内であることからもわかる通り……つり革を掴むことで精いっぱいで、足の位置を変えることすら容易ではない。


「うわっ」


 シャトルバスが急に動き出したため、高垣さんはバランスを崩して俺にぶつかってきた。

 柔らかい感触が、俺の胸板当たりに接触した。


「ご、ごめん……」

「大丈夫」


 こんなに混んでいたら、これくらいのことは致し方ない。

 個人的には気にも留めていなかったが……勝気な性格をしている高垣さんにしては珍しく、彼女は恥ずかしそうに目配せをしていた。


「……うふふ」


 高垣さんが離れた後、奏が俺にぶつかってきた。


「ごめん。あっくん」


 流れるような謝罪。


「大丈夫」

「……あっくんの体、意外と男らしいよね」


 流れるようなお触り。


「……奏、公共の場では勝手に人の体を触ったら駄目だよ」

「どうして?」

「ハラスメントだから」

「うふふ。じゃあ、公共の場ではなかったら大丈夫ってことだね」


 流れるような揚げ足取り。


 ……いやはやまったく、奏は元気だなぁ。

 かつての弱り切った彼女の姿を知っている身としては、今の彼女の姿には微笑ましさを覚える。


「……あなた達、あたしがいること忘れてるよね」


 高垣さんは俺達へ向けて目を細めていた。


「何言ってるの、綾香ちゃん。勿論、忘れてないよ」

「……それにしては二人の世界に浸り過ぎ」

「うふふ。逆に聞くけど、綾香ちゃんがいたら二人の世界に浸ったらいけないの?」

「……大丈夫でしゅ」


 あ、また弱気高垣さんが出現した。

 ……それにしても奏、一体、いつ俺から離れてくれるのだろう?


 ま、いいか。


 色々な疑問を一旦放って、俺はシャトルバスの車窓から見える景色をぼんやりと眺めることにした。


 さすが空港内を走るシャトルバス。

 少し外を見れば、離陸する飛行機や着陸する飛行機が轟音を立てて移動している姿を拝むことが出来た。


 ……あの飛行機、一機一機は、これから色んな国の色んな街を訪れる。

 地球のサイズ感で考えたらちっぽけなあの鉄の塊が、十数時間後には地球の真裏にいることが出来るだなんて……本当、人類の技術力の高さには感嘆の声をあげざるを得ない。


「それにしても一ノ瀬さん」

「何、綾香ちゃん?」

「あなた……いつまで萩原君にくっついてるの?」


 あ、俺も疑問に思いながら、声に出して尋ねることが出来なかったことを高垣さんが聞いてくれた。


「うふふ」


 奏は微笑んだ。


「逆に、ずっとくっついてたら駄目なの?」

「逆って何?」

「うふふふふ」


 ……あー、なるほど。


「奏、車内がぎゅうぎゅう詰めで動けないなら、あんまり無理して離れようとしないでも大丈夫だよ?」


 つまり奏は、あまりに車内が混雑しすぎて……身動き一つ取れない、とそういうことを言いたいわけか。


「……動くことくらい出来そうだけど、萩原君がそれで納得しているなら、これ以上は何も言わない」

「……うふふ」

「ついに笑っているだけで問題解決しちゃったわね、一ノ瀬さん……」


 高垣さんはため息を吐いた。


「あなた達、本当に仲良しよねぇ」


 そして、呆れた様子のまま、そんなことを言い出した。


「当たり前だよ。何せあたし達、お互いのことを大切な存在と認識しあっている上で一度死別しかけているからねっ!」

「満面の笑みで言うことじゃないから」


 高垣さんは朗らかな奏にツッコミを入れた後……。


「死別しかけた、か……」


 どこか遠い目で、そう呟いた。


「……高垣さん?」


 俺が呼びかけると、彼女はハッとした様子を見せた。


「ごめん。なんでもない。忘れて」


 そして、気を取り直してそう捲し立てた。


 高垣さん、一体、どうしたのだろう……?


 幾ばくかの疑問に駆られた俺だったが、まもなく国内線ターミナルにシャトルバスが到着したため、一旦ラッピング飛行機の方へと思考を切り替えることにした。

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