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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第十章

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47.遅刻

 空港へと向かう電車の中、隣の座席に座る奏がスマホを弄り始めたのを契機に、俺はぼんやりと考え事に耽ることにした。


 高垣さんの弟って、どんな感じの子供なのだろう?


 考え事の内容は、そんなこと。

 先日、高垣さんに彼女の弟の写真を見せてもらったが……凛々しい顔つきながら、その見た目は幼く、小学生に入ったかどうか。そんな年齢帯に見えてしまったのだ。

 だとしたら……高垣さんとの年齢差は少なく見積もって五歳。大きく見積もったら十歳、と言ったところだろうか。


 ……中々、年の離れた姉弟だなぁ。


 まあ、もしかしたら数年前に撮った写真を見せてくれただけかもしれないし、そうじゃなくても思ったよりも年齢差は少ないのかもしれないが……少しだけ興味が湧いた。


 高垣さんと友達になってから、彼女関連のことでここまで興味を抱いたのは、恐らく初めてだ。


「楽しみだなぁ」


 俺は呟いた。

 高垣さんの弟と会えるその時が、今か今かと待ち遠しかった。


「何が楽しみなのかな?」


 そんな俺の呟きは、どうやら隣に座る奏に聞こえていたらしい。

 奏は、いつもより低めのトーンで尋ねてきた。


「……ああ、高垣さんの弟さんと会うことがだよ」

「……」

「……」

「…………」

「…………」

「……うふふ。そうだね。楽しみだね」

「あはは。そうだよねぇ」


 俺達は笑い合った。


「まさか高垣さんにあんなに小さな弟がいたとは、驚きだよね」

「そうだよね。小学生かな? それより小さいかなって感じだったもんね」

「あ、奏もそう思った? うん。それくらいに見えたよね」


 ……俺は微笑んだ。


「早く会いたいなぁ」

「え?」


 奏が小首を傾げた。


「綾香ちゃんの弟さん、今日来るの?」

「え?」


 今度は俺が小首を傾げた。


「来ないの?」

「え、知らない」

「……そういえば確かに、弟さんを連れてくるとは明言していなかったな」


 奏の反応を見て、俺は気付かされた。


「……でも、来るんじゃないかな?」

「そうなのかな?」

「うん。そうだと思うよ」


 それから数分後、俺達が乗っていた電車は空港に到着した。

 俺達が電車を降りた空港駅は、国際線へと続くターミナル駅。


 電車を降りるため座席から立ち上がると、扉の前には既にたくさんの乗客。

 その大半の乗客は、傍らにトランクを提げている。

 ……空港駅に来る度に見れる、お馴染みの光景だ。


 まもなく電車の扉が開き、俺達はこれからどこかに旅立っていく人達と一緒に電車を降りた。


 空港地下道を歩いて、エスカレーターに乗って、向かった先は出国階。


「待ち合わせ場所は、出国ゲートだったよね」


 発案者は奏だ。


「相変わらず、結構な距離を歩かされるね」

「そうだね。でも、空港内は綺麗な上に広いから、歩き甲斐はあるよ」

「うふふ。あっくんったら、いつになくポジティブだね」


 その言い振りだと、俺がいつもネガティブなように聞こえるんだが……。


 ……事実、か。


「それにしても奏、どうしてわざわざ出国ゲート前を待ち合わせ場所にしたの?」


 待ち合わせ場所をここに決めた時点から、ずっと気になっていた疑問を、俺は奏にぶつけることにした。


「え? だって、なんとなくわかりやすいかな、と思って」


 思ったよりもわかりやすい理由だった。

 ……まあ、空港内を長年探索した身からすると、ここ以外にも待ち合わせ場所に相応しい場所はいくつかある。


 でも、あんまり空港に来ない人からすると……確かに、ここはある意味わかりやすい待ち合わせ場所かも……?


「そういえば、さっき電車の中で連絡があったんだけど」


 唐突に奏が切り出した。


「綾香ちゃん、ちょっと遅れるって」

「え、そうなの?」


 ……こっちにはそんな連絡、全然なかった。

 交友期間は奏より俺の方が断然長いのに……。ちょっと悲しい。


「うん。ちょっと前の予定が押してるんだって」

「前の予定?」


 なんの予定だろう。


「……というわけで」


 奏は微笑んだ。


「あっくん。しばらくの間、暇になっちゃったね」

「え?」

「……うふふ。あっくん。ここがどういう場所か、覚えている?」


 ここは出国ゲート。

 つまりは……俺と奏が、一度別れた場所。


『ただいま、あっくん』


 そして、俺達が本当の意味での再会を果たした場所でもある。


「この前のあれ。すっごい感動したなぁ」

「……あはは」


 俺は苦笑した。

 あの時は俺も感情のままに色々彼女に教えたけれど……今になって思うと、少しだけ気恥ずかしい。


「感動したなぁ。感動したなぁ」


 ……奏、一体何をするつもりだろう?


「というわけで、あっくん。この前のあれ、もう一回しない?」

「えー……」

「……」

「……」

「……そう。もうあたしへの想い、冷めちゃったんだ」

「うわあー。違う違うっ!」


 項垂れる奏を見て、俺は慌てた。


「わ、わかった。やろうか」

「本当!? 嬉しいなぁ。嬉しいなぁ」


 ……まあ、ここまで喜ぶ奏を見たら、少しの恥くらい、どうってことないか。


「……じゃあ、あっくん。ジッとしててね」

「え?」

「ジーっとしててね?」

「えぇ……?」


 奏は唐突に俺に近寄った。

 彼女の艶のある黒髪がふわりと靡き、彼女の匂いが間近にやってきて、俺は少しだけおかしな気持ちになりそうだった。


 この前のあれをもう一回やるだけでは?

 そんな疑問は……顔が熱くて、今は言えそうもなかった。


「……っ」


 思わず、俺は目を閉じた。


「……んしょ」


 ただ……どうも思った展開と違った。

 目をゆっくりと開けると、奏は俺の首元に黒い何かを付けていた。


「奏、これは?」

「んー?」


 奏は黒い何かを付け終わると、俺から離れた。


「ピンマイク」

「……ほう」


 なるほど。

 これがピンマイク。

 ……実物を見るのは初めてだ。


 いや、中学校の時、生徒会の仕事で使ったか? どうだったか。イマイチ定かではない。


「はい。じゃああっくん。早速やろう」

「え? ああ、うん」


 奏は微笑んだ。


「ただいま、あっくん」


 ……奏の満面の笑みに一瞬浮かれた後、俺はハッとして続けた。


「おかえり、奏」


 ……奏は。


「……」

「……?」

「……うーん」


 難しい顔をして、首を傾げていた。


「あっくん。もう少し吐息多めでいける?」

「吐息多め?」


 俺はスーッ、ハーッと息を吸って、吐いた。


「そうそう。その感じでもう一回行ってみよう」

「わかった」


 俺は頷き……。


「おかえり、奏」


 もう一度言った。


「……」


 奏は……。


「…………」


 また難しい顔をしていた。


「…………」


 今度は腕まで組んでいる。


「……」

「……」

「…………」

「…………」

「……うへへぇ」


 あ、だらしない顔つきになった。


「オッケー?」

「オッケー。さすがあっくん。完璧だよ。完璧なキャスティング。完璧なロケーション。完璧な演技だよ」


 べた褒めだな。


「ああ、どうしよう。あっくんの声が変わってなければ、もう一回、頑張ってって言ってほしかったのに」


 それは確か……奏を見送ったあの日に、俺が彼女に言ったセリフ。


「……いやワンチャン、声変わりした後だからこそ見える景色もあるか?」


 ……。

 …………。


 奏、なんだか楽しそうだなぁ。


「あんた達、何やってんの?」


 遅刻してきた高垣さんは唐突に俺達の目の前に姿を現し、大層ドン引きそうな顔をしていた。


 一体、何故?


「あ、綾香ちゃん。もう少しゆっくりでも良かったのにー」

「ね。……今、激しく後悔をしているところ」


 酷い言いぐさだな。


「……はぁ。じゃあ、早く行きましょう」

「うん。そうだね」

「あ、待ってよ。二人とも」


 ……あれ。

 高垣さん、弟さんは連れてこなかったのか。

ヒロインの奇行を主人公にどう弁明させるか考えるのが一番大変だったりする

まあ、さすがにこれくらいの奇行なら、主人公も動じないんだけどね


!??!?!?!?!??!?!?!?!?!?!????!?!??

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― 新着の感想 ―
音響監督、ASMRを始めるの巻
よく考えたらコレを爽やか青春劇風っぽく読ませてるのってすごく技術的難易度高い!? でも振り返ってみると、傍から見ていたら爽やか青春カップル爆発しろ!!!としか感じないであろうあっくんと奏ちゃんなのであ…
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