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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第九章

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42/49

42.夏休み前日

 奏と一緒に通学路を歩き、俺達は学校に到着した。


「一ノ瀬さん、おはよう」

「おはよー」


 教室に着くや否や、奏は友人の方へと向かって行った。

 少しだけ疎外感を覚えつつ、俺は自分の席に腰を下ろした。


「……萩原君、おはよ」

「ああ、高垣さん。おはよう」


 俺が椅子に座ったタイミングで、隣にいた高垣さんが挨拶をしてくれた。

 俺は会釈を返したのだが……彼女は何故か、周囲を警戒しているようにキョロキョロとあたりを見回していた。


「どうしたの。まるでこれから犯行を行う泥棒のように周囲を警戒して」

「馬鹿ね。本当の泥棒ってのは、周囲を無闇に見まわしたりしないから」

「どうして?」

「周囲を警戒している人ってのは、どうしても怪しく見えるでしょう。だからこそ、泥棒という犯罪行為に手を染める人程、普通の人と擬態をするのよ」

「ははー。なるほど」


 俺は素直に感嘆した。

 ……君は泥棒に詳しいんだね、と言いたくなったが、さすがに酷いと思ったから口をつぐんだ。


「で、なんで周囲を警戒しているの?」

「あんたの幼馴染に睨まれないように」

「奏に?」


 チラリと奏を見ると、彼女は門倉さん達と楽しそうに談笑していた。

 ……あの笑顔を見ていたら、機嫌もよさそうだし、高垣さんを睨むとはとても思えない。


「睨むってのは表情の話じゃないからね」

「……うん?」

「とにかく単刀直入に話すから」

「はい」

「明日から、皆が待ちに待った夏休みでしょう?」


 期末テストも終わった我が校は、明日から夏季の長期連休が始まる予定だった。

 故に今日は終業式を執り行った後、半日で帰宅となり……その後は高垣さんの言う通り、しばらくの間学校は休みとなる。

 まあ、休みとは言っても先生は出勤しているし、部活動をしている生徒は学校に来たりするから、小学校に比べてば自由時間はそこまでないと言った感じではあるのだが……。


「それが?」


 高垣さんは一体、どうして夏休みの話を俺に振ったりしたのだろう?


「あんた、予定は?」


 ……予定?

 俺の夏休みの予定……。


「ないけど」

「ぷ……っ」


 素直に答えたら笑われた。

 彼女、もしかしたら俺を煽るために夏休みの予定を聞いてきたのか?


 おいおい、だとしたらさすがの俺も……。


 まあ、別に怒ったりはしない。夏休みの間、友達がいない俺に予定がないのは今年に限った話ではない。


「ごめんごめん。……ないだろうなーと思いながら聞いたわけだけど、本当にないって言われたら、ちょっとおかしくて」

「何がおかしいのか?」


 怒ってはいないのだが、ツッコミ待ちみたいな言い方をされれば、さすがにツッコまざるを得ない。


「……ふう。ごめん。落ち着いた」

「そう?」

「うん。じゃあ、予定のない夏休み、バッチリ謳歌しなよ?」

「うん。わかった」

「……そこで素直に頷かない」


 高垣さんが俺を睨んできた。

 ……ここまでの会話、相手に対して不満を抱くのは、どちらかと言えば俺の方が大きい気がするんだけども。


「……じゃあ、萩原君。明後日、少しだけ時間もらえる?」

「え?」

「時間……。どう?」


 ……俺は思考を巡らせた。

 高垣さんは一体全体、明後日、俺に何をさせるつもりなのだろう?


 ……具体的に思いつくのは。


 宗教。

 マルチ。

 闇バイト。


「ごめん。実は明後日だけはどうしても外せない予定があって」

「嘘つけ。夏休み三十日暇な奴が、三十日中一日だけピンポイントで予定があるわけないでしょう」

「いやいや、さすがにそれは対人の経験値が少なすぎだよ」

「お互い様でしょう?」

「俺だって中学の友達に明日遊べるか連絡したら、誘ってから三日後にスマホ充電切れてた悪いってことくらいしか経験ないのに。さすがにそれは……」

「ここで悲しいエピソードをひとつまみしないで」


 高垣さんは呆れた顔を見せた後、首を横に振った。


「話を逸らさないでよ、もうっ」


 高垣さんは少し怒っていた。


「話が長引けば長引く程、こっちは寿命が縮まる思いなんだよ?」


 そういう割に、最初に話を長引かせるような雑談から始めたのは君だろう?

 さっき君は単刀直入に話すと言っていてのに、話が脱線しすぎて、こっちだって少し困惑しているんだ。


「……もう。あんまりあの子に目をつけられたくないのに」

「あの子って誰?」

「あなたよっ! ……きゃあっ!」


 知らない間に隣にいた奏を見つけて、高垣さんは怯えた顔を見せた後、飛び上がった。


「……ねぇねぇ。綾香ちゃん。綾香ちゃん」


 奏の瞳の光は消えていた。


「な、なに……?」


 それにしても……。


「……あたし、高垣さんのこと、友達だと思ってんだけどなぁ」


 奏の瞳の光って、よく点いたり消えたりするよなぁ……。




「高垣さんは、あたしのこと友達だと思ってくれている?」




 ……部屋の明かりがあれくらい点滅してたら、俺だったらライトを交換する。

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― 新着の感想 ―
高垣さんは翌日無残な姿で発見された…
高垣さん、奏の恐怖を知ってるのになんでまだあっくんと関わるんだ。ひょっとしてあっくんのこと好きなんかー? 命の危険を冒す程好きなんかー?
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