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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第七章

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27.ベッド

 学校の最寄り駅から電車に揺られて数十分。

 俺達は自宅最寄り駅に到着し、そこから家までの道を歩いた。


「もうすっかりこの辺の道も覚えたよ」

「そっか」

「うん。まあ、昔もこの辺にはよく来てたしね」

「そうだったね」

「あの頃はこの辺にコンビニがあったのに……今は無くなって、少しだけ不便になったよね」

「そうなんだよー」


 雑談交じりに歩いて十分後、俺達は家に到着した。


「お邪魔します」


 奏は礼儀正しく言った。


「今日は……いや、今日も母さん達は残業だから、安心して」

「うふふ。それはあんまり安心できない」


 奏はやはり優しい子だ。


「お茶淹れてくから、先に部屋で待っていてくれる?」

「うん。ありがとう」


 奏に言われて、俺は部屋に向かった。

 ……あれ、なんで奏がお茶を淹れてくれる流れになってるんだ?


 ここ、俺の家だったよな?


 とりあえず先に部屋に入った俺は、テディベアを元の場所に戻すことにした。


「お待たせ」

「……あ」


 しかし、タイミング悪く奏が部屋に入ってきた。


「やっぱり動かしてた」


 奏はテーブルに麦茶の入ったコップを置きながら、少し怒った様子だった。


「だって、埃を被ってしまったから」

「そんなの気にする必要ないよ」

「……でも、君が言ったんだろう?」

「へ?」

「このテディベアを、君だと思ってくれって」


 ……要は、君の代わりを埃まみれにさせるわけにはいかない。

 恥ずかしくてこれ以上は口には出せないが、それが俺がこのテディベアを動かした理由だった。


「……むぅ」


 奏は頬を膨らませていた。

 どうやら俺の話を納得出来なかったらしい。


「まあ、じゃあ……そこに置いておいても、いいよ」


 しかし、最終的にはテディベアを本棚の最上段に置かないことを許してくれた。

 なんて寛容的な女子なんだ、奏は。


 ……寛容的、か?


「えいっ」


 奏は唐突に、俺が寝るときに使用しているベッドに顔面から飛び込んだ。


「あっくんの馬鹿」


 奏はうつ伏せに寝ころびながら、足をパタパタさせていた。


 ……その、なんだ。


 奏が足をパタパタさせる度、スカートがヒラヒラと揺れて……実に目の保養、ではなく、目のやり場に困る。

 チラッと見たら、健康的な太ももが露わになっていた。


 それにしても、一体、俺のどこが馬鹿なのか。

 彼女の発言に、珍しく一つも同意出来なかった。


 奏はまだ機嫌が直らないのか、俺の枕を抱きしめて、それに顔を埋めていた。

 ベッドの上で体を反転させて、半身の姿勢で丸くなり、静かになった。


 ……本当に、目のやり場に困る。


「奏、君はここに何しに来たのさ」


 俺は尋ねた。

 というか、苦言である。

 彼女は今日、ここに勉強しに来たのだ。

 このままだと勉強はおろか、あそこで夕飯の時間まで眠ってしまいそうだ。


「……あっくん」

「何さ」

「……もしだよ?」


 枕に顔を埋めたまま喋る奏の声はくぐもっていた。


「もし……あたしが今日、ここに勉強以外のことをしに来たと言ったら、どうする?」


 くぐもったまま喋る奏の言葉を聞き、俺は考えた。

 ……今日、もしここに勉強以外のことをしに来ていたとしたら。


 果たして奏は、一体何をしに来たのか?


 今の奏の状態から一番に思い付くのは……眠りに来た、とか?

 でも、それなら俺の家ではなく、彼女の家で寝ればいい話だ。


 ならば……挑発的な言動から察するに……。


 ……もし、そうならば。


 もし、奏がそういうつもりで、今日、ここに来たとするならば……。


「あっくん……? どうする……?」


 俺は……。




「怒る」




 ……眉間に皺を寄せて、俺は言った。


 しばしの沈黙。


「……えっ!?」


 奏は慌てたように、枕から顔を離した。


「つまりさ……君は今日、ここに勉強ではなく、俺の邪魔をしに来たということだろう?」


 今の奏の状況を見るに、俺にはそれ以外の発想は浮かばなかった。


「いいや、仮にもし邪魔をしに来たのではないとしても……勉強しに来たんだろう? テストで良い点を取るため。学びを深めるため。自らの将来のため……っ」

「……あぅ」

「だったら、ちゃんとやろうよ」

「……はい」


 いつになく弱々しい奏は、ベッドから降りてテーブルに向かった。

 少しだけ言い過ぎたか、と申し訳なくなったが……冷静に考えても、考えなくても、今回の一件は六対四くらいで奏が悪い気がするし……まあ、後でちゃんと謝っておこう。


「あっくん……」


 勉強を始めてから数十分後、半泣きの奏に声をかけられた。


「何?」

「この問題、わからない……」

「ああ、それは……」


 それから俺達は、両親の帰宅まで、勉強に集中するのだった。

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― 新着の感想 ―
あっくん男子高校生とは思えない程枯れてるなぁ。
敦くんは鈍感系かぁ。お年頃の男の子は違うことばっかり考えてるぞ!
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