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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第六章

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22/28

22.健康祈願

「ふう、美味しかった」


 喫茶店で軽食を頂いた俺達は、お店を出て駅に向かった。


「あっくん、本当にごめんね」


 奏は今朝の一件以降、ずっとこんな調子だ。


「本当、大丈夫だよ」

「……ごめん」


 俺は苦笑した。

 恐らく、奏の調子は……今後もしばらくはこんな感じになるのだろう。


「そ、そうだ。折角なら、高垣さんへのプレゼントを買う前に、どこか別の場所に寄って行かない?」


 この様子の奏と高垣さんのプレゼント購入の旅に向かうのは、少しだけ気まずい。

 そう思った俺は、彼女の気晴らしにでもなればとそんな提案をしてみた。


「……どこかって、どこ?」

「え?」

「……どこに行くの?」


 ……さて、どこに行こうか。

 生憎、これまでの人生……デートと呼べるような行いを異性としたことなどない身。こういう時、パートナーを連れていけるような場所はまったく知らない。


 そういう時は、パートナーを自分がよく行く場所に連れていく、とかもいいかもしれない。


 俺がよく行く場所といえば……空港。

 駄目だ。

 そこは先日、奏と既に行っている。


「……あっくん?」

「とりあえず、電車に乗ろうか」


 仕方ない。

 こうなれば電車に乗っている間に、どこに行くか考えておこう。

 俺達は電車に乗って、行く宛もないデートを始めた。


「そういえば、奏は高垣さんに何をプレゼントするつもりだったの?」


 何かしらのヒントになればと思い、車内で俺は尋ねた。


「ん? んー。あんまりちゃんとは決めてなかった」

「え……?」

「あっくんと一緒にどこかに行って、その場所で良さそうなものがあれば、それを買おうかなって」


 ……なるほど。

 行き当たりばったりだったのは、どうやら俺だけではなかったらしい。


「それで、どこに行こうか?」

「うーん」


 俺は腕を組んで唸った。

 俺が悩んでいる間に、一駅、二駅と電車は進んでいき……。


『次はー』


 車内アナウンスから次に到着する駅の名前を聞いた時、俺は閃いた。


「奏、次の駅で降りよう」


 そして、俺は立ち上がった。


 電車を降りた俺達は、地下鉄ホームへ降り立った。そして地上へ出て、数分歩いた。


「ここって……」

「神社だよ」


 俺達がたどり着いた場所は、都内でも有名な神社だった。


「あたし、ここ、一回来てみたかったんだ」


 朱色を基調した提灯を前に、興奮気味に奏が言った。


「あっくんはここへはよく来るの?」

「……」

「あっくん?」

「え? ああ。……たまにね」


 俺は苦笑して、人混みを避けながら神社内へと進んでいった。

 提灯を過ぎると、本堂の前に立ち並ぶたくさんの商店。そして、商店の商品を物珍しさそうに見ている観光客に、少しだけ辟易となる気分だった。


「け、結構狭いね」

「そうだね。はぐれないでね?」

「うん」


 この通りは、商店の商品を買うお客。商品を見物するお客。冷やかしのお客で列の進みが遅く、常態的に渋滞している場所だった。

 俺と奏は、本堂に到着するまでの間に、とにかくはぐれないようにするのに必死だった。


 ……が。


「奏、大丈夫? 着いてきてる?」


 背後から奏の返事がなくなって、俺は慌てて後ろを振り返った。


「いない……」


 どうやら無事、俺達ははぐれたらしい。


『ごめん。今、どの辺にいるかわかる?』


 俺はスマホで奏にメッセージを送った。


『わかんない……』


 奏から返ってきたメッセージには、半泣きのスタンプも一緒に添えられていた。


『本堂は見える?』

『うん』

『この人混みの中で再会するのは骨が折れるし、本堂の方で集合しよう』

『わかった』


 ……大丈夫だろうか?

 少し不安だったが、奏は力強いグーサインのスタンプも添えていたので、まあ大丈夫だろう。


 ……とはいえ、折角商店で一緒に何かを買おうと思ったんだけどな。

 まあ、それは帰りでいいか。


 俺は人混みを避けながら、本堂を目指した。


「うわあ、本堂の方も人でいっぱいだ」


 これは……奏との合流は、骨が折れるぞ。


「あっくん」

「わっ」


 と思ったら、急に背後から聞き馴染みのある声が聞こえてきて、俺は飛び上がった。

 振り返った先には、奏がいた。


「……奏、よくここにいるってわかったね」

「ああ。それは……」


 奏はスマホ片手に何かを言いかけて……口をつぐんだ。


「運命だねっ」


 出た。

 奏との再会以降、彼女がごり押しワードとして使用しがちな『運命』。


 何かにつけて運命というワードを使われる度に、運命というより必然での結果だろう、と言いたくなるのだが……。

 まあ、今回に限っては、この人混みの中での再会だし、運命と呼べる……のだろうか?


 なんだかすこし、裏を感じるのは気のせいか?


「そ、そうだ。あっくん、お守り買おうよ」


 何かを取り繕うかのように、奏が提案してきた。


「ほ、ほら、厄除けに心願成就に、交通安全なんてのもある」

「そうだね」

「ここ、色んな種類のお守りが売ってるね」

「そうだね。健康祈願なんてのもあるよ」


 まあ、健康祈願のお守りがない神社の方が珍しいか。


「へー。真っ先に出るってことは、あっくん。もしかしてこの神社でよく健康祈願のお守り買うの?」


 俺は目を丸くして、口をつぐんだ。


「……あ、図星だった?」


 俺は返事をしなかった。


「ふうん。……自分用?」

「……いや」

「……ふうん」


 奏の声のトーンが下がった気がした。


「じゃあ、誰用に買っていたのかな?」


 奏の冷たい声と視線が……少し痛かった。


「君用だよ」

「へ?」

「……君がフランスで元気にしていればいいな。君といつか再会出来ればいいな。そんなことを思いながら、買ってたんだ」

「……買ってた?」

「うん。毎年ね」


 ……というか、有名どころの健康祈願のお守りは、大体一度は購入経験がある。

 その中でもこの神社は、有名な上に電車で一本だから、購入しやすかったのだ。


 だからこそ、神社の最寄り駅に着く手前で、この神社に一緒に行こうなんて選択肢も出たというカラクリだ。


「……ただ、まさか本当に効果があったとは」

「意外だった?」

「スピリチュアルには……基本的には頼らないたちなんでね」

「そっか。……基本的には、か」


 奏は授物所に向かった。

 そして、何かを購入してきたみたいだ。


「あっくん」

「何?」

「あたしもね。スピリチュアルは信じていない口なの」

「そうなんだ」

「うん。……一時期はウチの親も、あたしの容体が全然快復しないから、現代医学に頼れないとか言い出して、新興宗教へのお布施だったり、そっち方面に傾倒しかけた時期があったみたい……」

「え……」


 そうだったの?


「あたしが知ったのは、帰国直前だったんだけどね? あんたの命が助かるなら、数十万なんて安いものよって、両親ともに笑ってて……複雑だった」

「……そっか」

「まあ、結局は効果がなかったから、止めちゃったみたいだけどね」

「……つまり、君が身をもって、実証したわけだね」

「偉いでしょう?」


 ……。


「だから、あたしもスピリチュアルは信じてない。でも、もし君がこの神社の効力を信じていると言うのなら……あたしも信じてみようと思ったの」


 奏は微笑んで、そうして俺にお守りを手渡してきた。


「受け取って。あっくん」

「……いいの?」

「うんっ」


 奏が送ってくれたお守りは……。


『学業守』


 少しだけ目頭が熱くなった気がした。


「あ。でも、あっくん。勘違いしないでね?」

「え?」

「あたし、まだ……あなたの目標を下げさせること、諦めてないから」

 

 奏の宣戦布告に、俺は苦笑した。

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― 新着の感想 ―
混雑では手繋ぎがマストなのにと思っていたらスマホ関連のためでしたぁ。最近ではAirTagみたいなのもあるから、小さいぬいぐるみをプレゼントというのもアリかも?
スピリチュアルは信じてないけど運命は信じてるんだね……。 全然関係ないけどあっくんはGPSって知ってる?
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