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余命宣告を乗り越えた幼馴染の愛が重い  作者: ミソネタ・ドザえもん
第六章

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21.前途多難

 土曜日。

 俺はいつもより少しだけ早い時間に目を覚ました。

 昨晩はいつもより長い時間勉強をしていた。今週は奏との再会など、イベント尽くしで疲労も溜まった。


 睡眠時間は多くない。

 しかし、それでも俺はいつもよりも早く目を覚ました。


「……デート当日か」


 昨日の放課後、俺は奏とデートに行く約束をした。

 いや、俺としたら奏とデートの約束をしたつもりなどなかったのだが……気付いたら、デートに行くことが決まっていた。

 あまりの展開の早さに、しばらくの間、脳が理解を拒んだが……脳が復活して以降は、色々な感情が渦巻き始めた。


 ただ、とにかく一番強く芽生え始めた感情は……粗相は起こしちゃいけない、というもの。


「寝ぐせはちゃんと直してから行こう」


 今日はとにかく、奏に呆れられないように、粗相のないように一日を過ごそう。

 そんな考えから、いつも以上に身だしなみには気を遣おうと思った。


 俺は寝ぐせだらけの髪の毛を直すため、一階の脱衣所に行こうと思い、自室を後にした。

 こんなだらけた姿、奏には見せられない。


「あ、おはよう。あっくん」


 ……見せられないって言ったばかりなのにっ!

 

「おはよう。……えと、奏、どうしてウチに?」


 奏は最早、ウチにいるのが当然だとばかりに、リビングで朝食であろうパンを齧っていた。


「んー? よく考えたらさ、集合場所も時間も決めてなかったな、と思って」


 言われてみると、昨日のデートの約束後は、奏が一足先に帰った影響もあり、デートの集合場所、時間はおろか……向かう場所さえ決めていなかった。


「スマホで連絡取り合って決めればよかったのでは?」

「うふふ。折角なら、家に行っちゃえばいいかなー、と思って」

「……」

「……」

「……なるほどなぁ」

「うふふ。でしょぉ?」


 確かに、わざわざ互いに初めて行く場所で集合するよりも、相手の家に集合した方が話は早い。

 奏の奴、時短の天才だな、おい。


「あ、ちゃんとおばさんには、おばさんが出掛ける直前に許可を取っているよ?」

「あ、そうなの?」

「うん。あっくんの分の朝食を机の上に置いておいたから、朝ごはんにそれを食べなよって言われた」

「あ、そのパン。元は俺の朝食だったんだ」


 ……ウチの母は、相変わらず俺に冷たい。


「え……。ということは、俺、朝食抜き?」

「うふふ」


 奏はパンを食べ終わったのか、立ち上がった。


「あっくん。実はあたし、今日は家でちゃんと朝ご飯を食べてきたの」

「えっ」


 食べてきたのに、俺の朝食を食べたの……?


「でも、おばさんのご厚意に甘えて、胃袋が小さいのにパンを頂きました」

「頂いたんですか」

「うん。おかげで、お腹が少し痛いです……」

「痛いんですか……」


 結構情けない上に、理解しがたいことを言っていると思うのだが……。

 奏、どうして君は、そんなにドヤ顔を見せられるんだい……?


「……無理して食べなきゃよかったのに」


 正直、それ以上の感想が浮かばない。


「うふふ。無理して食べないといけない理由があったのです」

「あったんですか?」

「うん」


 奏は立ち上がり、キッチンへ。

 ……まさかっ!




「あっくんの朝食は、あたしが作ってあげるね」




 ハニカむ奏を見て、俺は彼女の意図を完全に理解した。

 奏の奴、これから一緒に出掛ける俺のために、母が用意した食パンではなく、ちゃんとした温かい料理を振舞ってくれるつもりなんだ……っ!


 だから奏、食品廃棄をさせないためにも、お腹がいっぱいなのに食パンを食べたんだ……っ!


 くそっ。

 奏の奴……っ!


「うふふ。ちょっと待っててね?」


 お腹いっぱいなら、俺に食パンを食べさせた上で、朝食を作ってくれればよかったのでは!?


「あっくんの朝食、すぐ作るから」


 男の方が女よりも胃袋大きいし、そうすれば奏も苦しむことはなかったのでは!?


「あっくんはソファで待っててね」


 ま、いいか……。


「朝ごはん、何を作ろうかなー」


 何にせよ、奏の振舞ってくれた料理を頂けるのだから。


 俺はソファに座り、テレビを付けた。

 ワイドショーを見始めた俺の耳に、奏が冷蔵庫の扉を開けた音が聞こえてきた。


 ……それから、奏の方から音がしなくなった。

 食材を出す音も、調理する音も……何も聞こえないのだ。


「……奏?」


 テレビへの意識を外して、俺はキッチンに視線を向けた。

 奏は、冷蔵庫を開けたまま、微動だにしなくなっていた。


「どうかした?」


 俺はソファから立ち上がって、キッチンへ。


「……あはは」


 奏は乾いた笑みを浮かべていた。


「あっくん。……朝食は、近くの喫茶店でもいい?」

「え?」


 一瞬、意味がわからず困惑する俺だったが……冷蔵庫の中身を見て、全てを理解した。


「すっからかんだね、冷蔵庫の中」

「……すっからかんです」


 どうやら母は、食材を使い切った状態で仕事に出掛けたらしい。


「ふぇぇ。あっくん、ごべぇえん」


 奏は涙目で取り乱しだした。


「あはは。大丈夫。大丈夫だよ、これくらい」


 しばらくの間、俺は奏を必死に慰める羽目になるのだった……。

これは良いポンコツ

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― 新着の感想 ―
奏はまだ、男子高校生の食欲を知らない! 将来、旦那が食い尽くし系とか言い出さないことを祈ります
クスリ盛られた時になんか暗示とか掛けられてません?
えっと、時間前の日に十時って決めてたよ? あっくんもポンコツ気味かもね・・・いや寝不足か?
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