家族でお出かけ
「ミリア様ーーー!! おかりなさいませ!! いかがでしたか? やはり私がお供した方が良かったのではないですか?」
屋敷に入ると、フィオナが矢継ぎ早に質問してくる。
まあ、こうなるのは目に見えていた。
「ミリアっ!! おかえり! 護衛の人達がすぐ帰ってきて驚いたよ。ああいうことは何かあった時対処できないからやめてね」
やんわりと注意されてしまった。
ぷくっ、と頬を膨らませて兄は怒りを表現している。でも、全然怒れてないぞ。たまには怒った所も見てみたいと思うが、こういう風に心配されるのも悪くない。少しずつだが、この温かい空気に慣れてきてしまっているようだ。
「そうだ! みんなと話してたんだけど、久しぶりにピクニックに行くのはどうかな?」
「ぴ、ピクニック……それは、あれか? お弁当を持ち寄って、草むらにシートを広げて日向ぼっことかするあれか!?」
「えっと、そうだよ? 子供の頃に行ったきりだったから忘れちゃったかな?」
みんながその様子にポカンとしている。
あたしとしたことが、つい興奮してしまった。
「あ、いや。まあ、行ってやらんこともないが……」
兄の顔が見れずに、顔を逸らす。
「やったーー!! ピクニックーーーー!!」
「フィオナ、はしゃぎすぎない。お行儀悪いわよ」
「そんなこと言っちゃっていいんですかぁー? ルーシィさんだって張り切ってピクニック用のお弁当の中身考えてたじゃないですかー! 私ちゃんと見てましたからね〜」
フィオナは、ニヤニヤしながらルーシィを煽っている。
わざとだろうか。
案の定、ルーシィは強制的にフィオナを部屋の奥に連れて行ってしまった。
コトの成り行きを見ていた兄は、何事もなかったように「明日の準備しとくね!」とまるで子供のようにウキウキしながら、自分の部屋に戻っていった。
あたしも明日の弁当を思い浮かべた。
絶対外せないおかず……そうだ! 定番の唐揚げと卵焼きを入れてもらおう。ちなみに、卵焼きは砂糖を入れて少し甘めの味付けが好きだ。
そもそも、この世界に定番のおかずは存在するのか? まあ、なければあたしが作ればいいだけか。そう思い厨房へと足を運んだのだった。
今日はゆったりとした服装でいいと、兄からお許しがでたので、あたしの第二号リメイク版の初披露だ。
上はワインレッドのドレスの裾を切り裂いて、ノースリーブ寄り&丈短めチュニックにした。そして黒のベルトをアクセントとして取り入れる。
下は短パンデニムが理想だったけど、デニム生地がなかったので仕方なく、兄のジャケットを拝借して短パンに仕上げた。生地は本来ジャケット用だから少し分厚めだが、その分丈夫で何かあってもすぐに破けないだろう。
快適さ、動きやすさを重視して作ったら、「これから冒険に出発する少年に勧めたい一着!」が出来上がった。ドレスと比べ戦闘力は皆無だが、エモいのであたし的には気に入った。せめて髪はポニーテールにでもして強く見せようじゃないか。
着替えを済まし、ドヤ顔でみんなに披露する。
あたしの姿を見た兄やルーシィは言葉を失っていた。兄なんか顎が外れそうなくらい口を開けていた。フィオナだけが異様に食いついて「きゃーー!! なんですかそれは!? 素敵です〜〜!!」と引くくらい興奮していた。
兄はため息をついて、街に出るわけでもないし、人の目に触れないなら……ということでOKを貰ったが。
「あれ? なんかその模様、見たことあるような気がする」
おっと、まさか気づくのか? いや、自分のジャケットが短パンに変身したなんて思いもよらないだろう。そもそも、街に出た時も思ったが、貴族の女の人は重そうなドレス。平民の子は丈の長いワンピース姿がほとんどだった。きっと短パンなんて見たこともないはずだ。
女が生足を晒すのは破廉恥らしい。
向こうではみんな晒しまくりだったけどな。
腹見えの服なんか作ったら兄は卒倒するかもしれない。
少しずつ耐性を付けさせてから作ることにしよう。
そこまで露出したものをあたしは好んで着ないが、試しに作ってみたい気持ちはある。フィオナかルーシィに着せるのもアリかもしれないな。
あ、そうだ。もう一つの自信作。日焼け対策のアームカバーっぽいやつも黒の薄い生地で作ってみた。これはルーシィにも好評。二人とも欲しいというので、余分に作っていたものを分けてあげた。
ここでは日焼け止めというものはないようで、日焼け対策は日傘でしかできない。しかも高価な物の為、平民にはとても手が出せない。だからルーシィ達は日焼けや、肌トラブルに困っていると漏らしていた。
日焼け止めは欲しいけど、どう作ってるのかあたしには分からないし、それを調べる術もない。美容開発の人とかが転生してたら、日焼け止めが作れたのかもしれないけど、こればっかりは、あたしじゃどうにもならない。
ってことで、アームカバーで我慢してくれ。
準備万端なあたし達は、日差しが照りつける太陽の下に出た。晴れ晴れとしたピクニック日和だ。あたしは大きく息を吸い込んだ。
「あれ? ルーカス様、今日はいないみたいだね」
兄はキョロキョロしながらそう呟いた。
当然だ。あたしが昨日追っ払ったからな。
「あっ、えっとその……ミリア、大丈夫?」
兄があたしの顔色を伺う様に聞いてきた。
何であたしがルーカスに振られたみたいになってんだ。
「……それより今日は仕事しなくていいのか?」
「うん! 何とか昨日で終わらせたよ。ミリア達と出掛けたかったからね」
……お兄様。
頼りない奴と言って悪かった。あんたは立派な兄だ。
心の中でこっそり謝罪した。




