アレインの推察
「と、とりあえず……お互いの素性と状況を共有しませんか?
今の僕は第三王子アレイン・レオニスですが……向こうにいた時は坂口秋斗という高校生でした」
「あたしは清水亜耶。同じく高校生だった。
今はミリア・ヴァルディス男爵令嬢として過ごしてる」
「えっと……ここじゃこっちの呼び名がいいですよね。
誰かに聞かれた時に不思議がられるかもしれないので」
うむ、それには同意だ。
「ミリア……はどうしてこの世界へ?」
「あたしは電車の事故で、多分死んだ」
「多分?」
「ああ、線路から仲間が引き上げてくれた記憶はあるが……間に合わなかったのかもな。で、目が覚めたらこの姿になってた。窓から見えるのは明らかに日本じゃないし、メイドや見覚えのない兄までいる。挙句に婚約者がいるとか言われてさ……」
はぁ、と溜め息を吐く。
「……本当のミリアさんは?」
「自殺だ。自分で毒を飲んだらしい」
「毒を……」
「ああ。で、お前は?」
「僕も毒です。女の子からもらったお菓子に毒が入っていたみたいで……」
「二人とも毒かよ……」
「いきなり王子だとか、毒殺されそうだったとか聞かされたんですよ! 僕はただのオタクだっていうのに……」
「あたしなんか! 変な服着てたんだぞ!! ヒラヒラした恥ずかしいやつ!
……ん? お前、オタクって言ったか?」
「は、はい、まあ……」
「じゃあ、こういうのにも詳しいのか?」
「え、えっと、異世界転生もののラノベは一通り読破してますけど……」
「ラノベ? ってのはよく分からんが、この世界の事とかあたし達の状況について何か分かったりしたのか?」
アレインが何もない目元へ指を添え、クイッと押し上げるような仕草をした。
「何してんだ?」
「あ、すみません。前は眼鏡を掛けていたので癖がまだ抜けなくて……。
その……この世界の事はまだ詳しく分かっていませんが、僕達って本当に転生したんでしょうか」
「は?」
「一般的な異世界転生と、僕達の状況はいくつか相違していると思うんです。
どちらかというと……転生より、憑依に近いのかもしれません」
「転生じゃないならあたしらのタイトルはどうなるんだ! 『憑依した件』に変えないといけないぞ!」
「……な、なんの話ですかそれは……」
「で、転生と憑依って何が違うんだ」
「流した!? というか、そこからですか!?」
こいつ、あたしのことを無知だと思ってるな……。
「あ、えーっとですね。転生は新しい命として生まれ変わること。
憑依は既に存在している人の体に別の魂が入り込むこと……と考えれば分かりやすいです。なので僕達は、死にかけていた別人の体に、魂だけが入り込んだ状態に近いんじゃないかと思うんです」
「つまり、どういうことだ」
「少なくとも、僕の知ってる作品の中では……僕達のように別人の体へ魂だけが入り込んだ状態から、元の世界へ戻った例は思い当たらないという事です」




