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029 お披露目会と精霊のお願い(1)

本日2回目の投稿です。

 一章 十八話(1)


 サクラさん専用車である最新型の樹魔(じゅま)車両がついに全てが完成した。


 異次元収納箱の改良に約2ヶ月かかったので、製造期間は約4ヶ月だ。


 それでも、この最新技術がてんこ盛りの動くギルド機密を4ヶ月で完成させてしまうのは、この『入り口の町』の職人、技術者、研究者達の実力がものすごく高いからだろう。




 今日は、そのお披露目になる。製造に関わった各機関の代表が集まっている。


 場所は、案内人ギルドの広場だが、この広場には、最高レベルの結界が張られている。


 メンバーは、案内人ギルドのギルドマスターであるカルミア様。冒険者ギルドの所長であるラウネンさん。樹魔車両工場の責任者であるカルコス親方。パルトの店の魔導具師であるパーソンさん。音波研究所の所長であるツバキさん。魔道具技師であるシンティさん。錬金術師のエルさん。そして、サクラさんと私とつくも(猫)の9人と1匹だ。


 内装職人のパルトさんは、無理がたたって自宅療養中とのことである。また、パーソンさんは、なんと、異次元収納箱を発明した探求者の後継者なんだそうだ。


 あの知識と技術力に納得だ。エルは、パルトさんとパーソンさん両方の弟子という立場らしい。


「なあシンティ。本当に俺がこの場に居ていいのか」


 エルがとんでもないメンバーに囲まれて、オドオドしている。


「何言ってるの。あの、形状記憶樹魔繊維けいじょうきおくじゅませんいを完成させたのはエルでしょう。あれができたから、異次元収納箱と内装の問題が全て解決できたのよ。大功労者よ」


「でもなあ、あれはカナデのアドバイスがあったからだぞ。樹魔を炭素にするなんていう方法は俺1人じゃ思いつかなかったぞ」


「それでもよ!いい、カナデ君の事は気にしなくていいの。あの人は何かがおかしいの。気にしたら負けよ」


 何か酷いことを言われている。


「まぁーなんだ。それじゃー外装から説明始めるぞ」


 カルコス親方が広場の中央に鎮座している白く輝く樹魔車両の前まで歩いて行ってからそう宣言した。




「この形が基本型だ。これが、歩行型、戦闘型、宿泊型、高速移動型に変形するのが今までの樹魔車両だ。だが、この最新型は、この倍の変形ができるようになる。このことについてはツバキが後で詳しく説明するだろうから俺はしないぞ」


 そう言ってから、30センチ四方の白い板をカバンから取り出した。


「これは、アルマジロ型魔物『まんまる』の(うろこ)を魔力で叩いて平らにした装甲だ。厚さ0.5ミリが10枚で5センチの厚さがある。この堅さだとA級魔物の体当たりでもへこまない頑丈さだ」


 そう言って、その装甲のサンプルをハンマーで思いっきりバンバンと叩いた。


「そして、この頑丈さでありながら、このようにくにゃと曲がるほど柔らかいのもこの装甲板の特徴だ」


 親方は、くにゃっと装甲板を曲げて見せた。


「この丈夫で柔らかい装甲が、今回の最新型に使われている。10枚重ねは、戦闘型の時の装甲だ。この最新型なら、きっと8層より深い場所に行けるぞ。とんでもないな」




「次は他の型の説明だ。カナデ、おまえの力をこの装甲に流してみろ」


 親方が私に装甲サンプルを投げた。私はそれを片手でキャッチすると、神装力(しんそうりょく)第三権限貸与の力で指に身体強化を掛け、ピンと弾いた。


 すると、装甲が10枚にきれいに分かれ、縦5枚×横2枚の平らな装甲板になった。


「こんな感じに、あの大きさの装甲がここまで広がる。宿泊型は、この厚さになる……。でだ、この寸分の狂いのない、見事なつなぎ目の装甲にするには、本来なら数百年の修行をしたマスタークラスの職人技だ。それをだ、カナデは2000枚を寸分の狂いなく揃えやがった」


「この最新型は今までのどの樹魔車両よりも、丸みを帯びた車体に仕上がった。それは、この寸分の狂いのないつなぎ目だからできた技術だ」


 そう言って、親方がジトーと私を見た。みんなも同じように見ている。


 サクラさんだけが、


「カナデさんですから当然です」


 いつもと変わらない。女神だ!




「はーぁ、次は私ね」


 ツバキ姉様。なぜ、ため息から説明に入るのですか。


「私は樹魔が樹魔車軸に変形する方法を教えるのが仕事よ。ああ、形状記憶って言うんだっけ、ねえ、カナデ」


 ツバキさんがジトーと私も見た。そっと、目をそらした。


「まあーいいわ。で、今回は双子の樹魔なので、2つの樹魔の動きを同期させなくちゃいけなかったのよ。で、カナデが和音を教えてくれたわけ。それで、大陸で初めての樹魔による同期が完成したわ。あとは、いつもと同じよ。問題なく調整できたわ」


「ツバキ姉様、この間町の楽団の人に聞いてみたら、和音なんて演奏している人なら誰だって知っていると言ってましたよ。研究馬鹿の姉様が知らなかっただけです(私も知らなかったけど……)」


 サクラさんの援護射撃が入った。ありがとう。


「ふん、いいのよ私は研究一筋で……。ああ、型の説明をするのよね。えーと、基本型、高速移動型、歩行型ね。で、歩行の時は2台に分かれることができるわ。後は、戦闘型ね。ああ、戦闘型も2台にできるわよ。そして、基本型を長細くした縦長型。その縦長型から簡易宿泊型。そしてそして、宿泊型ね。今は全部で7つの型になるわ。じゃ、簡易宿泊型だけやってみせるわね。サクラお願い」


 そう言うと、ツバキさんは調整木琴をサクラさんに手渡した。


「はい、分かりました」


 サクラさんは木琴を左手で支えると、右手を何かを受け取るような体勢にした。


「世界樹の枝 和音」


と、つぶやくと、差し出されていた右手には1本の世界樹の枝が握られていた。


「サクラ号、簡易宿泊型よ」


 樹魔車両にやさしく語りかけ、調整木琴を奏でた。


 すると、不思議なことに、そこに見えないばちがあるかのように、一本で叩いているのに発する音は和音になっていた。


 樹魔達も、直ぐに反応をした。メロデーに合わせて、車輪の軸になっている部分がするすると伸びていく。


 太かった麺の塊が伸すことで伸びていくような感じだ。


 車輪になっていた部分は1つの輪が12本の尖った触手のようになり、地面に刺さって、車体を持ち上げる、縦に伸びる、左右前後に移動するなどの役割を果たしている。




 外装も樹魔の動きに合わせて、重なっている装甲が広がっていった。


 そして、演奏が終わるころには、樹魔車両は、横が5メートル、縦が10メートルの車体に変形したのだ。


「これが簡易宿泊型です。中に入って内装もぜひ見てください。パルトさん渾身の作です」


 サクラさんが、ドアを開けると、ステップが自動で出てくる。


 ここら辺の魔道装備は、エルがアルエパ公国から持ち帰った技術だ。みんなでぞろぞろと室内に入っていく。


 5メートル四方のの部屋はそれなりに広い。10人位なら余裕で入れる。



本日3回投稿の予定です。

次の投稿は、17時を予定しています。

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