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エピローグ
ミモザの屋敷の事件から10年が経った日本の鹿鳴館。貴族や貴婦人達が集まっていた。そこに白い軍服に身を包い長い黒髪を1つにしばった青年がやってくる。いや青年というには語弊がある。
「ご覧になって。遥伯爵よ。」
「確か結婚をなさらずにご自身がお父様から爵位を継がれたそうよ。」
「ええ、日本で唯一の女伯爵ですわ。」
「お仕事もお父様と同じ外交官だったわ。」
春花は日本に帰ると父の仕事と爵位を継ぎたいと言ってきた。社交界の集まりにもドレスではなく軍服を着るようになった。名前も女らしい春花から遥に改名した。まるで女を捨て男に生まれ変わったかのように。
遥は淡いピンク色のドレスに白いリボンの少女に声をかける。
「お嬢さん、私と踊って頂けますか?」
「はい、」
令嬢は遥の手を取る。遥の周りは花の香りで包まれていた。
「遥伯爵のあの、素敵なお香りが。」
「ありがとうございます。実は香水を少々つけておりまして。宜しければこの後私の家にいらっしゃいませんか?貴女にも差し上げましょう。ミモザの香水を。」
FIN