NEET 第3種接近遭遇
その日、俺とセリナはステラを連れて町を歩いていた。
ステラの服を買うことが目的だったので色々と見て回っていると、遠くから子ども達の笑い声が聞こえた。
セリナと手を繋いで歩くステラは興味を示したが、嫌な予感がした俺はすぐにステラを抱っこするとセリナに言った。
「セリナ…今すぐ引き返そう!」
俺が声を掛けるとセリナが言った。
「何かあったのですか?」
そう言って首を傾げるセリナに俺は言った。
「説明は後でちゃんとするから早く行こう!」
セリナに慌てて声を掛けたが…既に遅かった。
「やぁ。久しぶりだね!」
俺は声の主を見て溜息をついた。
相変わらずブーメランパンツ1枚の姿で現れた変態は、パンダカーに跨っていた。
その後ろには笑顔の子ども達が列を成していて「早く乗せて!」と駄々をこねていた。
変態は子ども達に水鉄砲を向けると、ピュッと顔にかけて言った。
「みんな!僕の聖水カーに乗せてあげるから、きちんと順番を守るんだよ!」
そう言って1人の幼女を抱きかかえると進みだした。
「おい変態!誘拐は犯罪ですよ!」
その言葉に変態はパンダカーを止めると俺に言った。
「なんて事を言うんだ!僕は子ども達に喜んでもらおうと頑張ってるだけなのに!」
そう言って俺の顔にピュッと聖水をかけてきた。
ダメだ。
下手に関わったらいけない…
俺は怒りに震えながらも、その場を後にしようとしたらステラが言った。
「パパ…わちものりたい」
ステラはそう言って…変態が乗っているパンダカーに目を輝かせた。
俺は…純粋無垢なステラに大切な話を始めた。
「ステラ…あれは「変態」という危ない人なんだよ。ステラみたいな可愛い子どもに近づいて、嫌がる顔を見て喜ぶ人なんだ。だから近付いたらダメだよ?ステラがあの人と仲良くなったら、パパもママも悲しいな…」
そう話すとステラは俺にぎゅっと抱きついて言った。
「こわいよぅ…はやくおうちにかえろ?」
そう言って怯えるステラの頭を撫でると、セリナと一緒にUターンしたその時……
「ピュッ」
…振り向くな…俺。
俺はそう自分に言い聞かせていたらステラが怒った。
「パパにいじわるしないで!」
俺がステラの言葉に感動していると、変態がパンダカーから降りて言った。
「ごめんね…そんなつもりじゃなかったんだ…」
そう言って凹んでいる変態を見て思った。
犯罪者は捕まると口を揃えてそう言うんだよ…と。
俺は変態にノータッチでステラを撫で回していると、変態がボソッと言った。
「どうせ僕は変態だよ…」
そう言ってパンダカーに跨ると、寂しそうに場を去っていった。
俺は少し罪悪感を感じたが、気を取り直すと3人で買い物を続けた。
その後は何事もなく服を買い揃えるとステラが「パパ…おなかすいた」と言ったので、目からウロコ亭に向かった。
するとその道中で…また子ども達の黄色い悲鳴が聞こえた。
一本道のため仕方なく横を通過すると、変態が笑顔で汗を流しながら…一生懸命にかき氷を作る光景が目に飛び込んできた。その光景に唖然とする俺に気付いた変態が声を掛けてきた。
「やぁ。また会ったね!僕はかき氷おじさんとして生まれ変わったんだよ!」
何故だろう…。
かき氷を食べていないのに頭が痛んだ。
そんな俺をよそに、かき氷おじさんは幼女に言った。
「お待たせしました!僕の聖水で作ったかき氷だよ!ご希望通り「甘いドロドロ」をたっぷりぶっかけたからね!」
そう言って幼女にかき氷を渡すと怪しい笑顔を向けた。
…関わっちゃいけない。
そう確信して静かに立ち去ろうとすると、かき氷おじさんは俺の背中に「ピュッ」と水鉄砲を放って言った。
「分かってる!君も僕のかき氷が欲しいんだろ?」
俺にそう言うと氷をシャカシャカ削りだした。
そしてピンク色のシロップをたっぷりかけると、俺達に近付いて言った。
「ほら!おまたせ!」
そう言って差し出されたかき氷をステラが受け取ると、一口食べて言った。
「パパ!ママ!あまくておいしいよ!」
かき氷おじさんは、パクパク食べるステラを満足そうに見つめて言った。
「喜んでくれて良かったよ!」
そう言って製氷機に戻ると、またかき氷を作って子ども達に配り始めた。
かき氷おじさん…俺が間違ってたよ…あなたは変態なんかじゃなかった。
ちょっと怪しいだけの…優しいおじさんだ!
俺は少しの間かき氷おじさんの勇姿を見た後、3人での散歩を再開した。
その最中、ステラが頭を振って言った。
「パパ…あたまがキーンてするの…なんで?」
その言葉に俺とセリナが笑うと、ステラは首を傾げた。
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