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ジークとシア 2人の選んだ道 前編

「……だから。俺と結婚しよう」


夜の静寂に包まれる森にその声は響いた。

すると高鳴る胸の鼓動を感じながら、シアはセリナの言葉を思い出した。


そして心の中に自然と浮かび上がってきたこの感情の名前はきっと……


シアはジークを見つめると答えを口にする。


「あ、あたしは……」



……


遡ること数時間前。

町をぎこちなく歩くジークとシアの姿がそこにあった。

ジークは俺と考えたデートコースをなぞるように歩いているが、全く会話が出来ていないジークの横をシアは無言で歩いていた。


「焦れったい!手ぐらい握らんか馬鹿野郎!」

思わず口に出たその言葉にセリナが言った。


「ダメですよ!?2人を見守りましょう!」

セリナはそう言うと2人に視線を戻した。


……そう。

俺達は2人を尾行している。

部屋を出たシアを確認するとセリナが「さぁ!私達も行きましょう!」と言って準備を始めた。

俺達もデートに行くのかと思ったら、準備を終えたセリナは俺を引っ張るとシアの尾行を始めた。


これがなかなか面白い!

俺達は2人を見守りながら尾行を続け現在に至る。


様子を伺っているとジークが何かを話し始めた。話は聞こえないがナイスだ!

俺がそんな事を考えながら尾行してる事に気付かないジークは話を始めた。


「シアは覚えてるか?みんなで肩寄せ合って生きてたあの頃を……」

そう聞くジークにシアは答えた。


「覚えてるのじゃ。あたしがいて、ジークがいて、お姉ちゃんや仲間達と楽しく過ごした日々は1番の思い出じゃ」

そう言って笑顔を浮かべるシアにジークは話を続けた。


「そうだな。みんなで稼いだ僅かな金を集めてメシを食ってたあの頃は……幸せだった」


「だけど俺の1番幸せを感じたのは、まだチビだった頃シアが食べさせてくれたパンだ」

その言葉にシアは笑みを浮かべると言った。


「あの話か。確かに少しの間じゃが、あたしがパンを盗んでジーク達に食べさせとった時期があったのぉ?」

そう言って目を細めるシアにジークは話を続けた。


「いつも腹が減ってダダをこねる俺達の為にシアはパンを食べさせてくれた。あのパンの味は死ぬまで忘れない」

その言葉にシアはパン笑いながら言った。


「大袈裟なヤツじゃな?あんな粗末なパンの味を生涯忘れぬとは……」


「絶対に忘れない。それに……俺達にパンを食べさせると笑うシアの顔がずっと好きだった。」

突然の告白に顔を赤くするとシアは聞いた。


「じゃがジーク!お前はあたしに対してツンケンしとったじゃないか?あたしはてっきり嫌われてると思ってたのじゃぞ?」

そんなシアの言葉にジークはバツが悪そうに答えた。


「それはノワール様との約束があったからだ。シアと話していると俺は正体をバラして想いを告げたくなる。そうなったら俺はノワール様との約束を破る事になるから敢えて距離を置いてたんだ」

理由を聞いたシアは納得したのか表情が明るくなった。



一方で俺達の尾行は続いていた。

話は聞こえないが、次第に良い雰囲気になってきた事をセリナと喜んでいると、ジークはその店に辿り着くとシアと中に入っていった。


「うわぁ!綺麗なのじゃ!」

店に入ると光り輝く宝石達を見てシアが目を輝かせている隙に、ジークは素早くメモを取り出すと内容を確認した。


「ここでシアにプレゼントを買う……だな!」

ジークはメモをしまうとシアと一緒に見て回った。

するとそこにうさ耳の店員さんがタイミング良く登場すると接客を始めた。


「いらっしゃいませ!何かお探しでしょうか?」

店員さんの問いかけにジークが答えた。


「あの子に似合う指輪を探しているんだ。金額は問わないから「唯一無二」のものを頼む」

そう伝えるとジークは少し離れた場所で宝石を眺めているシアを指差した。


店員さんはジークの言葉に「とあるVIP」と同じ匂いを感じるとすぐにバックヤードを確認した。

そしてジークの元に駆けつけるとベアリングを見せた。


それを見たジークは……即決した。

シンプルな指輪の中心に輝く宝石にシアの笑顔の煌めきを感じたからだ。


懐から財布を出すと大金貨を取り出し「これで足りるか?」と店員さんに渡した。

すると受け取った店員さんは震えながら聞いた。


「だだだだ大金貨?本物?間違いなく本物……お客様、むしろお返しできるお釣りが足りないのですが……」

その言葉に「釣りは要らない」と言って指輪を懐にしまうとシアとしばらく宝石を眺めて店を後にした。


店員総出のお見送りにシアは「なんじゃ?」と疑問を浮かべていたが、2人は気にせず歩き続けた。


そんな2人の尾行を俺達は切り上げた。セリナは「もう心配いりませんね!」と言って俺の腕に手を回すと俺達のデートが始まった。


俺は一度だけ振り返るとジークの背中を見て呟いた。


「頑張れ。シアをしっかり最後までエスコートしろよ!」



するとジークは軽く手をあげるとそのまま歩いていった。


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