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かみどろ! -異界転写の女騎士-  作者: 賀来大士
二日目: 準決勝A
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71/106

71 定業

(苦しいけどドロー噛ませなきゃ次に繋がらねえ。ローナ!)

 呼びかけると、ジェローナはびくっと跳ねた。

(二枚引っ張ってくれ)


「ターン貰います。ドロー、プラグから、『苔むしたブリキ兵(第50話参照)』」

 その瞬間、逆嶋の目元が動いたのを、尭史は見逃さなかった。

(なんだ?)

 気にはなったが、問い質してどうなるものでもない。


召喚時効果(CIP)でドローしてエンドまで」

 BP5000の壁と、単体火力があれば当座は凌げるだろう。そう思っていた。


「ドロウ」

 対し逆嶋は、その大きな口をわざとらしく吊り上げる。

「『打ち抜き好みのゴブリン』召喚」

「……は?」



『打ち抜き好みのゴブリン』(赤)(1)

プログレーーゴブリン

 このカードが場に出たとき、呪縛をもつプログレを一体選ぶ。それを破壊する。

BP3000 / HR2 / RV(同種族)



 尭史は開いた口が塞がらなかった。

 こんなものの出現など、まったく想定していなかった。


(呪縛持ちなんて、大した採用率しちゃいない。その対策にしかならないカードが、なんでここで?)

 しかも三回戦終了時のレシピの中に、このカードは含まれていなかった。となれば、今日のためにわざわざ組み込んできたということになる。

 戦闘力(スタッツ)も平凡だというのに。積極的に肯定できるだけの理由が、常識(セオリー)の中に存在しない。


個人対策(ひとよみ)だってのか? でもメインに入ってるってことは、これを抱えて準々決勝も戦ったってことになるんだよな)

 尭史の顔つきはより厳しいものになっていった。


「指定は『ブリキ兵』。ほんで『不快な掘削者』を召喚」

「カットイン『招雷』! 『勘違い者』を除去ります」

「『老僧』でコンバット、以上や」


(『綻び』だ!)

 尭史の指示は早かった。

(逆嶋は場に三体出して手札は一枚しかない。全体除去するならここしかない!)


 だが意外なことに。

 話しかけても、ローナは反応を見せなかった。


(ローナ、『綻び』だってば。ローナ?」

 指でつつく。飛び上がるように驚いた。

「え、あ、え……何?」

「いやだから、『綻び』を引っ張ってって」


 ああはい、とジェローナは素直に従う。

(セディアルの話に熱中してるのか?)

 意外な一面だと思うと同時に、騎士の警戒心はそんなものかと不思議がる。

(まあ、いいけどな。ここは一人で戦いたいし)

 すかさず右の指に力を込める。


「ドロー、『乱暴な瀉血』プラグから『綻び』を顕現!」



『綻び』(黒)(黒)(2)

エポック――ファーリーチ

 顕現に成功したとき、すべてのプログレを破壊する。



「ほう」

 逆嶋はそれだけ言うと、黙って三枚を裏返す。

(余裕ぶりやがって!)

 そんな対戦相手を見て、尭史はどこかゾクゾクしたものを感じだしていた。


「ワシの番か」

 ドローしたカードをちらと見ると、そのままFmに置く。

「『偶奇待ちの探索』」



『偶奇待ちの探索』(黒)(赤)(2)

スプレー

 Fmになるときアンステディされる。

 ダイスを二回振る。あなたは出た目のどちらかを指定し、その数だけドローする。その後、もう一方の目の数だけ手札を捨てる。



 セディアルの目が光る。

 出た目はむろん――1と6である。

「ほんで手札コストを払って『勘違い』と『掘削』を復活さすわ。『断絶』は墓地へ」


 それらを処理したあと、逆嶋はふと尭史の顔に視線を移す。

 胡散臭がる気持ちが、そのまま声に出た。


「なんや、その顔は」

「えっ?」

「何がおもろいちゅーねん」



 必死の一手を容易く返された中、尭史は。

 中途半端に目を細めて、ニヤニヤしていた。

 その笑い方があんまり下手なので、逆嶋は言外に警戒するほどだった。



「いややられましたよ。ここでドローされなかったら多分そのまま勝てたのに。さっきから抱えてたんすね」

 逆嶋は相槌を打つでもない。

 だがそんなことは尭史にとって些細なものだった。


「なんたって手札コストを払えば復活ができる。それがSNoWの特徴だ。全体破壊されても再展開のときにテンポを失いにくい。復活のケアが勝敗を分けることだって往々にある」

「ふん」


 逆嶋は決して友好的な態度ではない。ややもすれば、ひと睨みで人を怯ませる凄みがある。

 だが尭史は、どこか待ってましたと言わんばかりに。

 目を輝かせて、こう言った。


「やっぱりおれはSNoWが好きだ。面白いですよ。このゲーム」





(気色悪いやっちゃな)

 逆嶋はもう声に出すことを止めた。ただ白けた顔をして、手札をいじるだけである。

(いい歳こいてトーシロくせえ自分語り並べおうて)


「別にイイじゃない。アタシは嫌いじゃないね、ああいうの」

「あァ?」


 逆嶋は単に、感想を頭に浮かべただけのつもりだった。予想外にそれを聞かれたのが、妙に気にくわなかった。

「セディアル。お前には言うてない。黙っとれボケナス」

 カッとした風の逆嶋に、セディアルは短く溜息を吐いた。

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