表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かみどろ! -異界転写の女騎士-  作者: 賀来大士
二日目: 準決勝A
PR
70/106

70 驚異への入り口

「いいご挨拶ねぇ!」

 尭史はぎょっとした。ジェローナが、露骨に不快感を表していたからである。

「天鵞絨が泣くってものでしょうに」


「おいおい、どうしたんだよ」

「わたしね、王族って好きになれないのよ。それもああいう勝手そうな輩は、いっそ嫌いと言っていいわ」

 吐き捨てるかのようである。一週間前にでもこんな様子を見せていれば、このカードを捨てていたかもしれない。尭史はそれほどの印象を受けていた。

「ああ……そういう騎士団だったもんなあ」


 言われてみれば、思い当たる節があるのも事実である。バックストーリーにおいて、聖染騎士団は少なからず敵を作っていた。

 それは時に、聖人クィールを追放し、ジェローナの父オルギンが狼煙(のろし)をあげた教会でもあり。

 異教の信者が一国と結びついた神繕騎士団でもあった。

 行く先々の国でも、オルギン達が元山賊であったこともあって、王侯貴族から嫌がらせを受けることも少なからず。

 ただし、そんな中で屈服も迎合もせず、戦い続けた彼らだからこそ、民衆の支持を獲得していけた――という話ではあるのだが。


「だからって、あのFF――セディアルと知り合いってんでもねえだろうに。メンブレンからして違うだろ」

「わかったもんじゃないわ。王なんて、たいていは」

「いやだから、セディアルってのは――」


「乳繰り合っとるんやないでガキども」

 苛立たしげに、逆嶋が挟んだ。

「ピーピー言うとらんでさっさと始めんかい」


 瞬間的に二人は眉をしかめた。

「えっ?」

 かと思えば、ジェローナが不意に不思議そうな声をあげる。


「どうしたローナ」

「あ。ううん、なんでもない」


「プラグから『火山口の勘違い者』以上や」

 聞こえない振りでもするかのように、逆嶋はプレイを始めてしまった。



『火山口の勘違い者』(赤)

プログレーーゴブリン / 火口の住人

 あなたがダイスを振るたび、このカードの上に灼熱カウンターを一つ乗せる。

 このカードのHRは、この上の灼熱カウンターの数だけ加算される。

 このカードのHRが6を超えたとき、これを破壊する。

BP2500 / HR1 / RV(同種族)



「ドロー……ってかローナ、この会話ってふつうの人に聞こえてたりしないか?」

「え、どうかしら」

「ちょっとアンネシーラに確認してくれよ。ついでにセディアルの話も聞いとくといいかもしれないぜ」

「ええっ?」

「プラグからエンドまで」

 ジェローナの疑わしげな目は見ず、尭史は手札をいじった。


「ドロ、プラ、『マントルよりの巨人』」

 かたや逆嶋の側は、見たところまったく会話がない。逆嶋はずっと、眉間にシワを寄せたまま表情を変えなかった。

 普段からこの顔つきなのだろうか。そんな疑問が尭史の頭に浮かんだが、軽く頭を振って切り替えた。余計なことを考えていられる場面ではない。



『マントルよりの巨人』(赤)(緑)

プログレ――巨人 / 火口の住人

 コストを払ってこのカードを召喚するに際し、ダイスを一度振る。出た目に等しい灼熱カウンターを上に乗せる。この際、3の 倍数の目が出た場合、あなたの次のステディフェイズに自身のFmをステディできない。

 このカードのBPはこの上に乗る灼熱カウンターの1000倍、HRは灼熱カウンターの数だけ加算される。

BP0 / HR0 / RV(同種族)



「ダイスロール、5や」

「げ……巨人に『虚空漂着』撃ちます」

「かまわんわ。コンバット、『勘違い者」で攻撃」


「なるほど侮れないわね」ジェローナが言った。

「わかるか」

「ダイスの目次第で、費用対効果がすごく高くなるのね。BP5000のHR5って、4コスト分くらいの価値があるでしょう」

「ん!? ああ、まあね」

「すぐに除去してもFFの魔力は増えてるあたり、爆発力があるというか。あるいは抜け目ないというか、なんてところかしら」

「つくづく最高だよな、きみってやつは」

「でしょ?」

「すぐ調子乗るけどな。で、アンネはなんて?」


「この空間自体は、やっぱりどこか歪んでるみたいね。アンネや中村さんからは、(もや)がかかったように見えるみたい。けど観客からは特に変わりなく映るらしいわ」

「単に創世導師にとって都合のいい演出に過ぎねえってとこか」

「ホント、なんのつもりかしら」言葉のわりに、口振りは感心なさげである。


 聞きながら、尭史はドローする。使用の目途が立たない多色カードである。それをFmにするほか、2ターン目にできることはない。

(セディアルの話は聞いてないのか?)

 一応ブラフとして考える振りをしながら、ジェローナに問いかけた。


「そんなに大事なことなの?」その声は少しだけ低い。

(ちょっと騙されたと思ってくれよ。おれ自身ちょっと、一人で考えたくもあるし)

「……しょうがないわね」

 渋々と言った様子のジェローナに、尭史は口元だけ笑いかけた。



(しかし、まいったな。もう少しマシな引きがしたかったんだけど)

 実際のところ、心から笑う余裕などないというのが真理でもある。頭はもう次の手のことでいっぱいだった。

(向こうはこの調子で中小型のプログレを並べ続けてくるはずだ。それらの攻めを4ターン前後凌げれば、そこからは少しずつこっちのペースに持っていける。問題はそこまでの身の振り方だ。解決策はいくつかあって、それぞれに別の裏目がある)


 ターン終了を宣しつつ、手札に目を移す。

(最も低リスクに、かつ高いヴァリューを得られそうなのは、神代コストで『霹靂』(第20話参照)を顕現することだった。だったけど、初手に引いちまったからなあ。一回目で引いてマリガンしたのに、なんでまた来るんだよ。勘弁してほしいぜ)


「ワシの番か。ドロプラ『孤島住まいの老僧』(第56話参照)や」

 通ります、と言いつつ尭史は考えを巡らせる。昨日のレシピにこのカードは入っていただろうか?

『首狩り陣形』(第64話参照)続けてコンバット」


 3ターン目にして、累計7点のダメージ。総ライフの四分の一ほどだが、尭史は難しい顔をしている。

(『老僧』が地味に対処しづらいな。『勘違い者』とは種族が違うからジェローナの解放3で一緒に倒せない。しかし放っておくと痛いんだ、こいつは。どうする?)


 考える暇を与えないかのように、逆嶋はすぐにターン終了を言い渡す。それでも尭史は必死に頭を回らせるしかない。

(これひょっとして、次のターンに残りライフ全部飛ばされるってこともあるか? もしこっちが何も手を打たなかったら、『命削りの火薬庫』あたりがあると)



『命削りの火薬庫』(赤)(1)

エポック

 このカードが場に出るに際し、ダイスを一度振る。すべてのプレイヤーは、その目に等しいダメージを受ける。

 このカードを破壊する: 次にあなたが顕現するとき、そのコストを(1)軽減する。ただし、0以下にはできない。なお、この効果はあなたのターン中にしか使用できない。



(さっきの『陣形』を合わせて12点。さらに『招雷』でも続ければプラス3点、『老僧』も育つ。『勘違い者』の攻撃とセディアルの効果を合わせると、計24点!)

 冷や汗が背を伝った気がした。これ以上暴れさせるわけにはいかなかった。

 しかし、今その全てを処理する手立ては無いのだ。


(ならどうする。何で、何に立ち向かうかだ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ