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かみどろ! -異界転写の女騎士-  作者: 賀来大士
二日目: 準々決勝
55/106

55 二人戦術

「ーー以上が、私の考える最適のサイドボーディングよ。尭史、この通りに入れ替えてくれるわね」


 二本目の開始まで残り二分余り。

 ジェローナは自らのプランを、中村と尭史へと訴え終えた。

 中村は黙っている。尭史を動かすのは自分の仕事ではないと思っていたし、そもそもジェローナを介してでもなければ言葉は届かない。


 更に言えば。

 今しがた聞いたプランに、舌を巻いていたでもある。


(ノウミソまで背景ストーリー通りっつーことか。まったく、とんだ策士ってかよ)

 剣豪オルギンの娘、剣聖ジェローナ。

 彼女は剣術よりもむしろ、知略における活躍が目覚ましかったーーそれこそ、包囲を完成させた神膳騎士団を出し抜くほどに。

(感服だね。ジェローナには逆らわねえ方が良さそうだ。それで鮎川。お前はどうする?)


 尭史はやはり、黙っている。

 手がわずかに震え、顔は完全に固まっている。


(否が応に徴兵された農民が、こんな様子になってたっけ)

 生まれ故郷を頭に浮かべるジェローナ。

(でもあなたなら、乗り越えられるって信じてるわ。だから今だけ、ご免なさい)


 心で謝りながら、一度握った拳を、大きく開く。

「! ……」

 突発的に尭史の手が跳ね、目の焦点が合った。


「手が少し痺れたくらいかしら。あなたの望みを具象化する者として、ちょっとくらいは末梢神経を乱せるのよ。もう少し強くしたっていいわ。その前に、言うとおりにしなさい」


 下唇を噛むジェローナ。

 心の痛みはともかくして、迫る時間に焦りだす。

 残り、百秒。


(バカ言うなよ)

 そのとき、尭史の思いがジェローナに伝わってきた。

 視点が落ちている。ジェローナの側にあるだけで、目は合わせなかったが。

(おれに出来なくて、なんでローナに出来るんだよ。そんな上手く行くか)


 ジェローナはもう、形振り構っていられなくなった。


「自惚れんじゃないわよ! あなたが一人で出来ることなんてタカが知れてるわ。半端なプライドなんて見たくない! そんなモノより私を頼りなさい。騎士の誓いは何よりも強い!」

(何を誓ったって)

「あなたを必ず優勝させると!」


 どこまでもひたむきなジェローナ。

 少し遅れて、尭史に笑みがこぼれた。


(おまえは、本気でそれを?)

「『流星映す剣聖、ジェローナ・メイル』とは私のことよ。当然じゃない」

 そう言う側から、また神経を乱す。尭史の意に反して、その手が少し持ち上がる。


「さあ早く。時間がないわ」

(わかったよ)


 尭史の腕はもう、彼のものになった。

 80枚のうちの4枚を、サイドボードの4枚と入れ替える。

 ジェローナに確認をとる間もなく、インターバルの終了が告げられた。


(これでいいんだな、ローナ)

 尭史のデッキはすでに、一本目とはまた別のスタッフがシャッフルを始めている。

「ええ。大丈夫よ。私を信じて」

(判った。信じるよ、騎士の誓いってのを)


 スタッフがデッキから七枚のカードをテーブルに置く。

 それと同時に、主審が尋ねてきた。

「鮎川さん、先にプレイされますか?」


「「はい、先攻で」」

 尭史とジェローナの声が重なる。

 ゲームはこのとき、二人のものとなった。

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