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かみどろ! -異界転写の女騎士-  作者: 賀来大士
一日目: 閉会後(夜)
44/106

44 分かち合う発見

 要件が済むと、「健闘を祈る」と言って早崎は去った。

 盗み聞きについて中村が問いただしたげだったが、(かたく)なに拒んでいた。

 彼は彼なりに、尭史を困らせることをしたくなくなったのだ。


 その後二時間ほど、二人は能力を前提とした調整を行った。

 本当はそれでも足りないくらいだったのだが、寝不足でプレイに支障が出ては意味がない。

 ということで、中村は日付をまたぐ前に帰って行った。


(いよいよ明日だな)

 洗面所で歯を磨きながら、ドアの向こう: 机の上のジェローナに念じる。

「そうね。早く寝なさい」

(なんだよ、つれねえな。ちょっとは駄弁ろうぜ)

「中村さんの厚意を無駄にしたいの」

(だから何をそんなツンケンしてんだ。オレ悪いことしたか?)

「ほっといてよ!」

(えー)


 尭史はただ、高揚した気分を明かしたかっただけだったのだ。

 そこを出ると、仕方なくスマートフォンを手に取る。そしてまた洗面所に戻った。


「も、もしもし。あ鮎川くん」

「おう。今いいか?」

「えと、あの、こんばんは」


 月居はまるで待っていたかのように、すぐ電話に出た。

 そのほころんだ顔は、もちろん尭史には見えていない。


「さっきはありがとうな。おかげで無事に部屋着けたし、デッキもなんとかなった」

「そうお! よかったぁー」

「安心したらなんか、目が覚めちゃってさ」


 時刻も零時を回ろうというのに、月居はまるで眠気を見せない。

 気をよくした尭史の口から、どんどん自分の話が流れる。

 月居はそれを静かに聞いていた。


「そうそう。さっき、早崎と話してさ」

 部屋に来た経緯はぼかしながら、彼の話をそのまま聞かせる。

「……ってことで、絶対焔村を倒せって言うんだ。どう思う?」


 二、三秒の沈黙の後、月居はこう言った。

「早崎くんの気持ちは判るよ。自分の居場所を奪っていった人を怒んのは、当然だっけ」

 だけど、と言いづらそうに。

「それを鮎川くんが引き受けるかどうかは、別の問題じゃないかな」


「というと?」

「必ずしも早崎くんの言い分を聞かなくたって、鮎川くんの損失にもならなければ、目的にも関わらないでしょーよ」


 人情がないって嫌わないで欲しいんだけど、と前置いて。

「鮎川くんいま、早崎くんの言う通りにしなきゃって思ってねーけ?」

「そりゃ、思ってるよ。目的が一致してるわけだし、断る必要がない」

「ほんとにそーけ。わたし、こういうことにもなりうる気がするよ――」


「焔村くんが、賞金()()()()()()()()()()()I()D()()()()()()()って」


 尭史は息を飲んだ。

「オレだって、その考えが浮かばなかったわけじゃないよ。焔村の目的が、自分の手でゲームを炎上させ、崩壊させることだとしたら! 賞金にはまったく目もくれないかもしれないって。でも」

「金額のケタが違うからありえないって?」

 月居に先を越されて、ひるむ。


「優勝者には実質600万で、準優勝者は300。確かにすごいお金だよ。でもお金はお金。焔村くんがこれまでしてきたコトとはなんの関わりもねーべ。むしろS.N.o.W.みたいな大きいコンテンツを炎上させるには、それくらいの代償は必要って考えてくるかも。900万を明け渡したヒトが、『サリストム』にしたような主張をすれば! きっとそれは、すげー説得力」


 尭史はもう、言葉を失っていた。

「そうなったら、鮎川くんどうする? 妹さんのことを第一に考えるなら、焔村くんとは闘わない方がいいかもしれねーよ」


 二人の間に、しばし沈黙が下りた。

 それを先に破ったのは、月居の方だった。


「まーなんだかんだ言って、仮定に仮定の上乗せだかんね。焔村くん案外、準決勝とかで負けちゃうかもだし」

「そ、それもそうか。北田気(前回チャンプ)か、あいつを倒したヤツと闘うわけだしな」

「鮎川くんがそーなっちゃ元も子もだし、早く寝なきゃダメだよ」

「……ああ」


「じゃ、ね。今日はありがと! あっ」

「どうした?」

「鮎川くんがどのやりかたを選んでも、わ、わたしは応援するからね!」

「そっか、ありがとう」



 通話が終わると、尭史はベッドに直行した。

(ローナ? 起きてっか?)

 枕に顔をうずめながら念じるが、返事はなかった。

(なんだ、寝てるのか。電気消すぞ)


 腕だけ伸ばして照明のスイッチを押す。

 尭史はゆっくりと、眠りに落ちていった。

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