31 復活の声
白けた目が刺さる。
審判も馬渡も、態度は変わらない。
単色のFm以外には――なんの生物も器具も――存在しない尭史の盤面。それを冷たく見下ろしていた。
六枚の手札を、静かに机に置く。
そして尭史は深く息を吐いた。
その様子を、ジェローナはただ見ていた。声もかけない。
青年は勝ったとき以上に落ち着いている。そう見えたからだ。
丁寧な手つきで、ゆっくりとカードを片付ける。
一枚一枚、デッキに戻していく。
(ローナ)
自らの意思を確かめるような、硬い様子で。
尭史は念じる。
(もう一度。もう一度言ってくれ)
目的語の欠けた頼み。
しかしジェローナには、訊き返す必要もなかった。
「この私がそばにいる。絶対勝てるわ」
(ああ。ありがとう)
まとめ終わったデッキを、審判に手渡す。馬渡のデッキをカットする。
先攻を宣言。六枚のカードが、机の上に裏向きに置かれる。
(もしこの手札も悪かったら、次は四連続で能力を使う)
「判ったわ」
(悪くなくても、毎ターンのドローを操作してもらうことになりそうだ。聞き漏らすなよ)
「心配無用っ」
親指を立てるジェローナ。尭史は落ち着いて、手札を確認した。
『谷底に眠る怪鳥』『メルバリスのクローン実験』『糾弾』『慨嘆』『荒れ地の猟犬』『オーネイラの長、キルネグル』。
その内容に、思わず笑みがこぼれる。
――なんだ。安心した。
思いがけない充実ぶりに、まずは胸を撫で下ろす。
(能力の代償が本物だとしても。百回のうち、まだ十回くらいしか使ってない)
そして、考える。
(だのにいきなり引き運ガタ落ちってわけではないみたいだ)
「そうね。これで今回は、しっかり闘えるわね」
尭史は頷いた。
(真っ向からのぶつかり合いになる。ちゃんとついてこいよ)
「あら。誰に言ってるか判ってるかしら!」
その間に馬渡はマリガンを行う。
準備が整ったところで、審判が二本目の開始を宣言した。
「ターン貰います。『谷底に眠る怪鳥』Fm化、『糾弾』。『天恵の乱獲』捨ててください」
『谷底に眠る怪鳥』(2)(青)(黒)
プログレ――鳥
(能力なし)
BP1500 / HR1 / RV(同種族)
『糾弾』(黒)
エポック
このカードを生け贄に捧げる; ターンプレイヤー以外のプレイヤー1人を対象とする。そのプレイヤーは手札を公開する。あなたはその中からカードを1枚選びう、墓地に送る。そのプレイヤーは四点までのダメージを自ら受けてもよい。
【二枚制限】
「ぼくのターン。『混然たる君主、ピョートル』をプラグ。エンドまで」
「ではドロー。『キルネグル』プラグから『メルバリスのクローン実験』を顕現。どうぞ」
「貰いました。『魂の軸、ストロース』プラグ、『天恵の乱獲』。通ったらエンドまで」
「通ります。ドロー。プラグ『不平等統制』、のち『慨嘆』。手札の『アスタフォーセ』、捨ててください」
流れるように試合が進む。一本目とは打って変わった展開に、審判も驚いていた。
(これがぶつかり合い、なのね。よく判らないけど、すごい)
ジェローナが口を挟む隙などない。ときおり伝わる尭史のリクエストを、淡々とこなすだけだった。
「オレのターン。『玉虫色の発頸』プラグから時代『無間旱魃』を顕現」
「カットイン『相対性の看破』!」
『相対性の看破』(2)(青)(緑)
スプレー
Fmになるときアンステディされる。
反芻2(顕現のコストに青と緑のそれぞれ二つのシンボルを払ったとき、自分のデッキの上から二枚を公開する。その中に青と緑のカードがある場合、以下から二つまで選ぶ。ない場合、どちらか一つを選ぶ。その後公開したカードを任意の順番でデッキの下に置く)
・あなたのデッキの上からカードを1枚Fmエリアに配置する。
・青でも緑でもない顕現を一つ対象とする。それを無効にする。
「通ります」
「反芻判定。……達成です。トップをマナにして『無間旱魃』を無効にします」
「ではターン渡します」
「ドロー、プラグ。『青空泳ぎの大蛇』を召喚」
「カットイン『魂の囲い込み』。召喚無効で」
「はい」
そういえば、とジェローナは思う。
『青空泳ぎの大蛇』が出て来たいま、すでに4ターン目に突入していることになる。
試合前の話によればここからが本番だ。
(がんばれ、尭史)
声には出さずに、尭史を見上げた。




