表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
32/106

32 応じ返し

 選手(オタク)たちのプレイをよそに、実況は叫び続ける。

「みなさんお待ちかねェー! 早くも準々決勝進出者が一人決まりましたアアアアっ! 栄えある先駆けはゴーストアグロの頭目・佐藤誠ォ~~~~!!!!」

 盛大な拍手に包まれて、佐藤はガッツポーズをした。

「では他の試合を観てみましょうッ! どうやら鮎川対馬渡のテーブルは白熱しているようですッ!」

 メイン・チャンネルのカメラが尭史たちに向けられた。



「オレのターンですね。ドロ、プラ」

 もっとも当の尭史たちは、それに気付いていない。

 スピーカーが調整されているし、みなゲームに集中しているからである。

「『まどろむ兎耳』を魂幹(こんかん)コストでプレイ。二枚ドローのち生贄(いけにえ)にして、プラグ。馬渡さんどうぞ」


「ドロー。『天恵の乱獲』を追加。二枚を生贄にしてさらにFm追加(ブースト)します。残ったFmで二体目の『青空泳ぎの大蛇』を」

「待った」


 ここで初めて、尭史の手が止まった。

(参ったな。ここで貴重な『抹消』を使っていいのか。普通なら絶対に召喚を許しちゃいけないカードだけど)

 一枚だけの手札をちらと見る。



『抹消』(青)(1)

スプレー

 多色の召喚をひとつ選ぶ。それを無効にする。



 何を悩んでいるんだろう。

 ジェローナはそう尋ねたかったが、尭史の集中を切らしてしまいそうだった。


(相手のFmは、すでに合計八枚だ。『大蛇』を通すと更に増やされる。ここから十二枚になって、6コスト級を一度に二枚召喚されるとお手上げ。でも相手の手札はもうないし、それは勘繰りすぎ……だよな?)


 肘棒を付きながら、なお考える。

 馬渡が指をパチパチと鳴らす音も、もう尭史には聞こえていない。


(8コスト以上の超重量級を召喚される可能性はどうだ。一本目ではそんなものは確認できなかったけど。でもサイドチェンジで投入……不可能じゃない。とはいえ青緑ランプのサイドは、たいてい速攻と即死コンボへの対策に向けられてる。もし一、二枚入ったとしても、この局面で今引き(トップデッキから)する(持ってくる)可能性は低いはずだ)


 可能性と確率。

 その二つを尭史なりに考え、ようやく答えを出した。


「では召喚に際し、『メルバリスのクローン実験』の起動効果を使用します」



『メルバリスのクローン実験』(青)

エポック(ファーリーチ)

 (青): 対戦相手の召喚ひとつを対象とする。各プレイヤーのフィールドに、そのプログレのコピーであるトークンを1体戦場に出す。



「了解しました。『大蛇』の召喚時(Come Into)効果(Play)でFmを二枚増やした後、ターン終了時に二枚墓地に送ります」

「ドロー、『乱暴な瀉血』(11話参照)後、コンバット」

「じゃぼくも。コンバットどうぞ」

「『大蛇』トークンで攻撃。起因効果でFmブースト」

「『大蛇』トークンでブロック」

「ダメージ前ステップ、『ジェローナ』(11話参照)の【解放3】。トークンを生贄に種族蛇の生物を皆殺しです」

「はい」



「鮎川選手、これはいいプレイングっ! 脅威の筆頭『大蛇』を逆手にとってFmを伸ばしつつ、『抹消』を温存。さらに除去もこなしましたっ! 見事。実に見事ぉー!」

 相変わらず実況が、観客とネットユーザーへとマイクを握る。

「絶対有利かと思われたマッチながら、フタを開ければ馬渡選手の手札はゼロっ! このまま鮎川選手が押し切るかーッ!?」



 実況者があおり立てると、観客席がざわめく。

 疑惑のジェローナ使いが、不利なはずのランプを下すのではないかと期待が寄せられたのだ。


「ぼくのターン」

 もっとも当人たちは、そんなことまったく気にしていない。

 だから馬渡の一手が呼んだ歓声も、彼らにとってどこ吹く風だった。

「手札から『(まが)つ牙のマンモス』を召喚します」



『禍つ牙のマンモス』(緑)(緑)(6)

プログレ――古代生物

 このカードの召喚は無効にされない。

 鋭敏(えいびん)(このカードは場に出たターンから攻撃したり、アンステディして能力を使うことができる)

 このカードが召喚されたとき、プログレおよびフォアフロント以外の、戦場にあるカードを最大三つまで対象とする。あなたはそれを破壊してもよい。これにより墓地に置かれたカード一枚につき、それのコントローラーはBP4000 / HR3 の象・プログレ・トークンを場に出す。

BP15000 / HR10 / RV(点数で見たコスト6以上)



 尭史は芝居くさく、頭を抱えた。

「え、なになに」

 その身振りがさすがに気になって、ジェローナが尋ねる。


(どうもこうもあるか。無効にされない超重量級だぜ。思いっきりアテが外れた)

「……あー、せっかくの『抹消』が使えないんだもんね」


 二人の掛け合いをよそに、馬渡は続ける。

「効果対象はあなたの『クローン実験』と、ぼくのFm二枚。カットインありますか?」

「ずいぶん珍しいカードを入れてるんですね」

 しぶしぶカードを墓地に送りながら、尭史が言った。


「悪名高い14弾のカードだから、まるで注目されてませんけど。個人的に気に入ってるカードじゃん、です」

「じゃんです」

「後半無意味になった『天恵の乱獲』を生物に変えられるし。こうしてドレッサーの掃除もできるし」

「自分のFmを象に変えて、ビートダウンへのブロック要員にもできます、ね」

「おっと。『死ノ杜』の起因効果も使いますよ。クローズした『大蛇』を墓地に送ったら、コンバット入ります」



『隠密の統領、死ノ杜』

フォアフロント――人間 / 忍者

 点数で見たコストが6以上のプログレがあなたのコントロール下で場に出たとき、あなたは『隠密の統領、死ノ杜』があなたにそのHRに等しいダメージを与えることを選んでもよい。

【解放5】プログレを一つ対象とする。それの上に、元々のHRの値に等しい数だけHR+1カウンターを置く。

【解放8】ターン終了時まで、このカードは即斬(あなたがコントロールするHR6以上のプログレが攻撃したとき)を得る。(即斬をもつカードは、発動条件を満たしたとき、バトルエリアのカード一枚をクローズする)

LP30



「戦闘開始ステップ。『死ノ杜』の解放8を使用します。『マンモス』を攻撃者に指定。即斬が発動するので、象さん破壊してください」

 トークンはクローズすると消滅する。尭史はそれをボードの外に置いた。

「防御者ありません」

「ダメージ前ステップ、今度は【解放5】を使用します。『マンモス』のHRを20点に」


 大量のカウンターが、ジェローナの上に乗せられる。

 『乱暴な瀉血』を使用したこともあり、残るライフはたったの5となった。



「信じられますでしょうかァ~~~~っ! なんとォ! たった一頭のマンモスが戦場を蹂躙(じゅうりん)ッ! 仲間の象まで率いてッ! にわかに巻き返しましたぁぁぁぁッ!!」

 絵に描いたような逆転劇に、観客が盛り上がる。

「鮎川選手、これはキツいッ! 次のターンで決めなければ絶望的だァーーーーーっ!」


 実況はそう言って、可能性を示唆するものの。

 その場の誰もが、ここからの逆転は不可能だと思っていた。

 そう何度も上手く行くものかと。各々のゲーム経験から、諦めていた。


 だから今や、希望の灯を消さずにいる者は。

 尭史とジェローナの他にはいなかった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ