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13 数の力

「月居さん、いい子ね」

 しばらく立ちすくんでいると、ジェローナが言った。


(ホモ趣味にさえ目をつむれば、純朴で可愛げあるヤツだよ。ホモ趣味にさえ目をつむれば)

「応援してくれたし」

(そうだなあ)

「そういうわけだから上下元に戻して。吐きそう」

(どういうわけだよ)

 まいいけど、と胸のカードを取り出した。



「空気読んで黙ってたせいで、気持ち悪さが通常の三倍よ」

(うん、今回は褒めてやってもいいな)

 のんびりと会場に戻りながら、二人は話す。

「そういえば彼女がオネツのレク様って、どんなカードなの? 一本目は出てこなかったし、二本目はすぐ戦闘不能になったしで全容を知らないんだけど」

(あ、そっか)

 尭史はスマートフォンを手早く操作し、レクトルの情報を表示した。



『狡知なる魔皇子、レクトル』(黒)(黒)(1)

プログレ(ネームド)――悪魔 / ならず者 / 皇族

 リンゲージSスーパー(このカードを手札から正規のコストを払って召喚するか、他のプログレが自分の場に出るに際し、カード名を一つ宣言する。このカードは場を離れるか他の名前を指定するまで、『狡知なる魔皇子、レクトル』であると同時に宣言されたカード名として扱う。その後、宣言されたカードとリンゲージ可能な、あなたがコントロールするプログレ一体とこのカードをリンゲージしてもよい)

 フィールド上の『狡知なる魔皇子、レクトル』がリンゲージ状態でないとき、これを追放する。

 このカードがリンゲージしたとき、あなたは3点のライフを支払ってもよい。そうした場合、デッキからリンゲージLまたはRをもつカードを一枚、手札に加える。

 このカードがリンゲージ状態にある場合、BP+2000する。

BP4000 / HR1 / RVなし【一枚制限】



「テキストながっ!」

(それは否定できないな。オレも初めて見たときは読む気がしなかった。読んだら読んだでいい気持ちはしなかったけど)


「で、どこがどう強いの?」

(そいつは『捨て鉢のマイル』(第10部分参照)と比べると判りやすい。ある程度TCGの知識があるヤツが見たら卒倒モンだぜ。とりあえず同じ部分を挙げてみな)


「えーっと。ネームドってのと、ならず者って種族と、リンゲージしたときのBP上昇値と、枠の色」

(そうなるな。それと点数で見た召喚コストも同じだ。どちらも召喚時に三枚のFmをアンステディ(横向きに)する必要がある。あとどちらも左側にリンゲージするってのも同じっちゃ同じだ。逆に言えば、それ以外はすべて違う)

 ジェローナは大人しく聞いていた。


(その内マイルが勝っている点は四つだけ。|HRが高い《ライフへの攻撃力が高い》ことと、献身能力を持っていることと、単独で戦場に出ても自壊しないことと、色拘束がゆるいことだ。どれもレクトルの利点と比べたら月とスッポンだぜ)

「色拘束ってなによ?」

(召喚時のコストの制限。(黒)のコストを払うには黒いFMを一枚US(アンステディ)する必要があるけど、(1)のコストを払うのには何色のFMでも構わない。言い換えると色のついたシンボルが多いほど、コストを払うためのFmの縛りがきつくなる。これが色拘束さ)

「レクトルは黒2枚となんでも1枚、マイルは黒一枚となんでも2枚だから、マイルの方が縛りが緩いわけね。必要なFmの枚数はどちらも三枚だから、引き合いに出してるってことかしら」


(対するレクトルは、とんでもない長所を二つ持ってる。一つはリンゲージS。リンゲージRをもつプログレとなら、誰とでも合体しやがる。これのせいで、リンゲージデッキは序盤からかなり簡単に大型のプログレを呼ぶことが可能になっちまう)

「見境なく合体して大きくなるのね。それは大変」

(おまえそれわざと言ってる?)

「なんのことかしらー」


(もう一つはサーチ能力だ。リンゲージするたびデッキから他のプログレを呼んでくる! しかもその対象はめちゃくちゃ幅広いときた)


「でも、使うたびライフ減らさなきゃいけないんでしょ?」

(むしろそれが強さに拍車をかけてんだよ)

「え、なんでよ。ライフが無くなったら負けなんでしょ?」

(そりゃ、たとえば初期ライフが20点で、ライフを減らすことにこれといったメリットがないルールだったら別だぜ。3点のライフはそこそこのデメリットとして機能する。でもSNoWは勝手が違う)

「あ、魔力変換か」


(そう。このゲームでは、ライフが減れば減るほどFFフォアフロントの能力を使いやすくなる。だから能動的に自分のライフを削れるってのはメリットになることの方が多いんだよ。それこそ、『乱暴な瀉血』(前回参照)なんてカードが普通に採用されるほどに!)

「た、確かに。そう考えるとホントに強いのね」

(そうなんだよ。この能力どっちかだけなら、全然許容範囲なんだけど。両方付いたからおかしいんだ。相手を問わずリンゲージしては、その度魔力を増やして後続も呼ぶ。まさに化け物!)

「それで一枚制限になったのね」


(その強さ、特に誰とでもリンゲージする特性ゆえ、何かと渾名を付けて揶揄(やゆ)したもんだ。『肛恥なるアッー皇子』『ホモセクトル』なんてのはまだ良い方で、『国民的穴きょ「いい。もう聞きたくない」

(あ、そう)

 ポケットを閉じたままだったので、ジェローナの顔が真っ赤なことに尭史は気付かなかった。



「答えの予想はつくけど、一枚制限になるとどうして弱くなるの?」

(いい質問だ。理由は存外にある。まず単純に、手札に引き込める期待値が下がる。どれだけ強力なカードであろうとも、引き当たらなければどうということはない)

「手札に加わるアテが少ないと、戦いが有効に行えないのね」


(次に、これも単純なんだけど。連続して召喚するのが難しくなる。四枚フル投入出来れば、除去されても再展開が容易ってわけだ。さっきの試合でも、月居はわざわざ『人身御供の対価』なんて使いにくいカードでの回収をせざるを得なかったわけだし)

「そっか。複数体一緒に召喚することも出来ないわね」

(確かにそうなんだけど、レクトルに関しては元から不可能なんだ。(ネームド)のプログレは、場に複数体存在できないっていうルールがあるからさ。対消滅ルールってのがあって、二体以上場に出た瞬間に二体とも破壊される)

「あら、そうだったの」


(以上二つの理由から、制限を受けたカードを中心にしたデッキの構築がとても難しくなる。出すのが難しい、出しても除去された後が辛くなる、ってんでさ。制限を受けることでカード自体の強さが変わるわけじゃないんだけど、それを用いた戦術やデッキ構築が難しくなるから、結果的に弱体化するってワケさ)

「なるほどねー」


 そうそう、と尭史は胸元を見る。

(レクトルは他のリンゲージがあってこそ強さが発揮されるタイプだから、枚数制限の影響はかなり大きい方だ。一方で単体でも強力なカードは、たとえ枚数制限を受けても強力なままだったりする。今後、そういうカードを見ることは間違いなく増えるぜ)

「それは尭史も使うってこと?」

(そりゃ、もちろん)

 そうこうする間に、二人は会場へと到着した。


「おう鮎川」

 会場への入り口では、やたらとニヤついた中村が出迎えた。

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