↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
断罪予定の悪役令嬢なのに、最推しの氷の公爵が「お前のすべてを独占する」と異常な過保護で迫ってくる  作者: 黒崎 隼人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
16/16

エピローグ「溶け合う温度と始まりの鐘」

 辺境の短い春が終わりを告げ、鮮やかな緑が領地を覆い尽くす頃。

 公爵邸の広大な庭園に、領民たちを招いての盛大な結婚式が執り行われていた。

 王都の貴族たちは一人も呼ばれず、ただ辺境の冷たい風に耐え抜いてきた者たちだけが、新しい女主人の誕生を祝っている。

 純白のウェディングドレスに身を包んだレティシアは、控室の鏡の前で深く息を吐いた。


「本当に、夢ではないのね……」


 乙女ゲームの悪役令嬢として転生し、破滅の運命を回避するために奔走した日々。

 そのすべてが、今日この日のためだったのだと思えるほど、今の彼女の心は深い幸福感に満たされていた。

 扉が開き、正装に身を包んだユリアンが入ってきた。

 普段の漆黒の衣服とは違う、白を基調とした軍服のような意匠の礼服が、彼の長身と銀色の髪にひどく似合っている。


「レティシア」


 彼が歩み寄ってくるだけで、室内の空気がピンと張り詰めるような気がした。

 だが、それは彼から放たれる冷気ではなく、抑えきれない熱情のせいだと、今のレティシアにはわかっていた。


「ユリアン様、とても……素敵ですわ」


 レティシアが頬を染めて言うと、ユリアンは彼女の前に膝をつき、その手を取った。


「その言葉は、私が言うべきだ。お前は、信じられないほど美しい」


 彼の青い瞳が、レティシアのドレス姿を焼き付けるように見つめている。

 その視線の熱さに、レティシアの鼓動が早くなった。


「行こう。皆が、私たちの誓いを待っている」


 ユリアンが立ち上がり、レティシアをエスコートする。

 二人が庭園に姿を現した瞬間、領民たちから割れんばかりの歓声が上がった。

 かつては恐れられていた氷の公爵が、これほどまでに穏やかな表情を見せていることに、誰もが驚き、そして心から祝福していた。

 祭壇の前に立ち、誓いの言葉を交わす。

 神父の厳かな声が響く中、ユリアンはレティシアの手を強く握りしめていた。


「……病める時も、健やかなる時も、互いを愛し、敬い、生涯を共にすることを誓いますか」


「誓います」


 二人の声が重なる。

 ユリアンがヴェールを上げ、レティシアの顔を覗き込んだ。

 彼の瞳の奥にあるのは、もはや狂気めいた執着だけではない。

 レティシアという光を手に入れたことで、彼自身が真の意味で人間としての感情を取り戻した、穏やかで深い愛情。


「お前は、私の運命だ」


 ユリアンが囁き、レティシアの唇に誓いの口付けを落とす。

 その瞬間、庭園を囲むように配置されていた氷の彫刻たちが、太陽の光を受けて一斉に輝き始めた。

 ユリアンの魔力が制御され、周囲に祝福の光の反射を作り出しているのだ。

 歓声と拍手が最高潮に達する中、レティシアはユリアンの胸に顔を埋めた。


(ええ、あなたも私の運命ですわ。私が選び取った、最高の結末)


 王都での陰謀も、かつてのヒロインの光も、もうここには届かない。

 あるのは、彼と彼女だけの、冷たくて熱い、完璧な世界。

 遠くで、新しい時代の始まりを告げる鐘の音が、辺境の澄んだ空に響き渡っていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。