リンの回想:お友達
サラが過去に思いを巡らせているとき、リンもまた、過去をたどっていた。
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いじめられていた私を救ってくれたのみならず、彼女は、ニッコリとほほ笑んで、私にこう言ってくれた。
「リン。いい名前ね。良かったら、お友達にならない?」
私は、びっくりして、彼女のことを穴が開かんばかりに見つめた。
「私は、いじめられている。本気でそんな私に?」
「本気よ。多分、あなたは、私に似ているから。類は友を呼ぶっていうじゃない」
「えっと、そう言われると嬉しいけど、正直私だって、噂を全く知らない訳じゃない。君は、2組のアイドルだとさえ言われているっていう話じゃないか。
それに引き換え、私は、ただの路傍のいじめられっ子だ。今回君を巻き込んでしまったことで、君に飛び火しないか心配だし、これ以上…」
「そんな理屈、どうだっていいじゃない。いざとなれば吹き飛ばすだけ。私が知りたいのは、あなたの気持ちよ。
気持ち」
彼女の眼差しが、真っ直ぐ私を射抜く。
済んだ瞳。
「う…、正直、私には友達はいないから、それがどんなものかは分からない。
それに、色々不安はある。でも、君が差し出してくれた好意に、嘘はないと思うから、それを信じたい。
そういう関係がお友達だというのなら、オーケーだ」
「やった!リン、よろしくね」
「あ、ああ」
彼女の底抜けに明るい笑み。
差し伸べられた手を握ると、フッと視野が霞んだ。
「う、うっ…」
「どうしたの?」
「人の手って、こんなに暖かくて、心地いいものなんだなって、いや、違う…分からないけど、色々込み上げてくるんだ…」
「そうか。いろいろ辛かったのね。でも、もう大丈夫よ」
彼女は、そのまま私を抱きしめる。
私の頭を胸に寄せて、そっと撫でながら。
私の中で、何かが堰を切ったようにあふれ出した。
「ううう、あああ、ええん、えぐっ、えぐっ、…」
「大丈夫よ。たった一人で、今までよく頑張ってきたわね」
「…す、すまない。君のかわいい服を汚してしまって」
「いいのよ。それが、お友達というものだから」
「寂しかった。ずっと一人で。火の魔法が使えるというだけで、無駄に恐れられ、避けられ、更にはひどくいじめられて。でも、そういえば君も、水の魔法を使ってたね」
「私ね、昔湖と、それに調和した田園風景とが綺麗な、スコッツっていう惑星に住んでいたの。その時に、ちょっとだけ、エルフの友達に教えてもらったんだ。
確かにニンゲン族だと、魔法を使える人は少ないし、そもそもニンゲン族が通う学校では、魔法教育自体随分おろそかにされやすい。でも、私はたまたま他の星にいたから、運が良かったのよ」
「そうなんだ…」
「リン、この宇宙は広いわ。あなたは、こんな辺境の星で腐る人じゃないと思う。だから、他の人に何と言われても、私達は自身の力を磨き続けましょ」
「本当に、類は友を呼ぶものなのかもね。少なくとも、こうして一つ共通点が見つかった」
「そうね」
「だから、私は頑張ろうと思う。ありがとう、サラ」
「…私こそ、あなたに会えてよかったわ」
私は、その言葉にサラの寂しさを感じ取り、顔を上げた。
「そうか。2組のアイドル。そうして祭り上げられる側になるのもまた、寂しい話なんだね」
「やっぱり、あなたは分かってくれるのね」
「能力があることは基本的には素晴らしいことだ。でも、ない人から見れば、様々な形で距離を置くしかない。いじめも、祭り上げも、本質は同じ。
だから、君と私とは、こうして惹かれ合った訳か」
「…やっぱり、あなたは、私と似ているわね」
「そうか?」
「そうよ」
それから、私とサラとは一緒に登下校するようになり、私は、サラの親友であるレイとも仲良くなったのだった。
私へのいじめは、さっと潮が引くように、一気に終息した。
ただ、まだ、これが、嵐の前の静けさだとは、私は知らなかった。





