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サラの回想:不良どもとヒーロー

 二人の回想は続き、サラは思う。


----


 ある日、私達が、レイも一緒になって、下校していた時のこと。


 歩いていると、いきなり曲がり角から、わらわらと、学校の不良連中が出てきた。

 その一人が言う。


「おい、貧乳、この前はよくも俺をずぶ濡れにしてくれたな」


 そう言えば前もこいつそんなこと言ってたけど、貧乳って連呼しないでよね。レイと一緒にいると、嫌でも気になるんだから。


 私はイラっと来たけど、相手にしたくなかったから、言った。


「リン、レイ、行こ。時間の無駄よ」


 すると、いつの間にか私達を取り囲んでいた不良連中の中の一人、ひときわ大きな男が、話から一歩出て、私の服をつかんで言った。


「てめえ、俺の弟分に手出しやがって、それでただで済むと思ってんのか?」

「やめてよ。群れなきゃ何もできない弱虫は嫌いだわ」

「何だと?」


 男は、こぶしを振り上げる。


「生意気な口抜かしていると、てめえのお得意のそのお顔をつぶしてやるからな?貧乳の上に顔も見苦しければ、てめえのクラスカーストは一気に最下位に転落だな!ああん?」


 私は、男を睨みつけた。


 レイは、こんなことになると思ってもいなかったようで、怯えて震えている。

 リンは、男に対する怒りで、これまた震えている。


 二人は、私の大事な人。だから、せめて…。


「私を殴りたければ殴ってもいいわ。でも、せめて、この二人は行かせて頂戴。彼らは、関係ないでしょ?」

「てめえには選択権はねえよ、バーカ!」

「そうだそうだ、兄貴の武勇伝、しっかり目撃者がいなければな!」


 何なの、周りまで合唱して。…ウザイわ。

 でも、私が使える水の魔法で、この状況を覆すのは難しい。


「へえ、これだけ囲まれて、てめえの顔が潰されるってのかもしれねえのに、てめえはまだ俺を睨むだけの力があるのか。

 おもしれえな。てめえの泣き顔が、今から楽しみだ」


 男の拳が、私の顔に迫る…と思ってつい目をつぶる。

 が、その拳は、腹に入れられた。


「グッ…」

「まあ、女の泣き顔は、きれいなまま見るに限るからな。顔は最後まで取っておいてやるよ」


 そして、男は、乱暴に、今度は私の胸をもみくちゃにする。


「や、やめてよ!」

「フン、試してみたがその価値もねえな、こんな貧乳。あっちの女の方がまだ楽しめそうだ」

「ひっ…」


 レイが、より一層怯えて、つい声を出す。

 それを見て、私は、言う。


「レイには手を出さないでよね。お願いだから…」

「あ、兄貴、今ちょっとこいつ泣きそうになったぞ」

「へえ、そうか、てめえは仲間想いの口か。だったら、先に仲間からやろうかな…」


 そして、男は、私を乱暴に突き放す。

 私は、こんな奴らに負けたくないと思って、溢れそうなものを懸命に堪えた。


 その時、心の中で、一つの声が響くのが、聞こえたの。


 …お願い、助けて、リン。


 男が、レイに向かっていく。


 その時、リンの声が響いた。


「サラとレイを傷付けることは、許さない。大事な仲間だから。焼き尽くせ、魔炎球」


 炎の球が、男に直撃する。


「ウガアア…」

「兄貴!」

「貴様、やっぱり魔族だったか」

「畜生!いじめられっ子風情が、何で学年ツートップと一緒なんだよお」

「違うだろ、そこよりも兄貴のことを心配しようぜ?」


 もだえる男を見て、てんでバラバラなことを言いながら、何人かがリンめがけて飛び出す。すると、リンは、迷いなく、


「魔炎放射」


 相手は、炎をまともに浴びて、みな悶えていく。

 残った男たちは、様々な逃げ口上を口にして、蜘蛛の子を散らしたかのように逃げていく。


「ば、化け物か!」

「魔族が、覚えてろよ!」

「ひ、貧乳風情が!」


 だから、何でそこにこだわるのよ。腹が立つわ。


 そんなことを思っていると、リンは、未だに悶えている大男に顔を寄せて、言った。


「これに懲りたら、二度と私達に関わるな。次はない。いいな?」

「へ、へい!」

「よし、じゃあ、レイ、ちょっとした回復魔法が使えるんだったよな。痛み止めぐらいはしてあげよう」

「え?」


 レイは、驚いていた。

 いや、私だって驚いたわ。どこまでお人好しなのよ…。


「仲間を傷付けるやつらは許す気はない。でも、だからと言ってむやみに彼らを傷付けたままにしていいということにはならないと思うんだ」

「でも、サラがそれでいいと言うかしら?」

「言わなければ、別に無理にとは言わないけどね。でもサラは、きっとわかってくれると思う。いいよな、サラ?」


 リンが、私を見つめる。

 心の底まで見抜いてしまいそうな眼光。


「リンは、やさしいのね。でも、私は、」


 言いながら、未だに呻いている男の、腹を一発蹴った。


「これだけはお返しさせていただくわ。まだ、そこまで大人じゃないからね。

 リン、後は、好きにしていいわ」

「分かった。レイ、後は頼んだ」

「任せて」


 そして、リンは、私に向きなおって、言った。


「怖かったな。でも、もう大丈夫だよ、サラ」

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