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戦争開始

 ベンが、リンに向かって問う。


「さて、リン。今後の行動を考えるにあたって、まずは聞きたい。

 君はサラがどこの誰にさらわれたか、心当たりはあるのか?」

「皇国の魔族が突如彼女を囲んで、散々暴言を吐いた挙句、ひっ捕らえていったんだ。

 彼女は魔族好みのルックスだったし、恐らくチキュウ魔王に目を付けられて、その妾にするためにさらわれたんだと思う。嫌な記憶だけど、彼らもそんな感じのことを言ってたのを何となく覚えているし。

 実際、彼女は今も魔王公邸にいるようだ…私には、そう感じられる」

「ふむ。そうすると、アイノコ目当てかもしれんな」

「アイノコ?」

「ニンゲン族のただ一つの取り柄と言ってもよい。

 ニンゲン族と他部族が混血した場合、元の部族が秀でている点について、その混血児は更に秀でる傾向があるのだ。

 だから、言い伝えでは、初期の魔宙皇国の上層部は、より強力な子孫を残すべく、軒並み争ってニンゲン族の妻を求めたと言われている。

 だが、一つ弱点があってな。産まれた混血児、アイノコは、かなりの確率で繁殖能力を持たないのだ。

 極稀にキセキノコと呼ばれる、繁殖能力を持ったアイノコも生まれないでもないのだが、彼らとてその更に次の世代までは、優れた資質を引き継げないという。

 それ故、現代では表向きはアイノコは殆ど途絶えたはずなのだが…。皇国軍がわざわざ一介のニンゲンを捕らえに出向いたとなると、理由はそれぐらいしか考えられんのだ。

 犯罪の名目での捕縛であれば、末端の駐屯憲兵が対処するだろうしな」


 すると、レイが、微かに震えた声で尋ねる。


「だとすると、サラは、もう…」

「孕まされていたとしてもおかしくはないね。だが、貴重なアイノコを産む存在と認められている以上、殺されてはいないだろう、という見込みも立つ。

 その意味では、決して悪いニュースでもないだろうさ」

「だが、これ以上サラを苦しめないためにも、一刻も早く奪還したいところだな。

 これから、少人数で魔王公邸に乗り込んで、奪還作戦を行いたいと思う。レイとベンさん、及びシェイは、私についてきて欲しい。

 スナ族の諸君は、地上で陽動も兼ねて、オアシス都市にある皇国軍基地を攻撃してくれ。向こうがうまくそっちに気をひかれている間に、私達は宇宙に上がろうと思う」

「シェッ!(了解!)」


 リンは、すっかり指揮官の役にはまっているようであった。

 ベンが、秘かに、流石アマカケの血を継ぐ者だ、とまたもや思ったのは、言うまでもない。


----


 首都惑星ダヴィリオーニ。

 宇宙魔皇は、皇国軍総司令より、報告を受ける。


「大陛下、各地の監視辺境伯や魔王より報告が上がっており、チキュウのスナ族が皇国軍基地を襲撃開始し、それに呼応するように、常夜惑星コンクインのヨウコ族、海洋惑星ネプルのタコ族など、各地の辺境部族が皇国軍や憲兵に対して攻撃を仕掛けているということです」

「そうか。やむを得ん。反乱軍の指揮系統は森林惑星ボラピークにあるのだろう?

 ボラピークを含むボラサン星系を、サン・キラーによって殲滅せよ。指揮系統が消えれば、連中は烏合の衆に成り果て、鎮圧も容易になるであろうし、星系丸ごと消してしまえば、いい見せしめになるからな」

「了解です。ドラグーン伯、サン・キラーによるボラサン星系の殲滅を許可する。ついでに、その様子を映像として記録し、反乱が起こっている各惑星に送信するように」

「承知しました、総司令殿!」


----


 森林惑星ボラピーク。ケブカ族には、動揺が走っていた。


「閣下、皇国軍が、デス・フラワーを本星系に向かって派遣してきたようです!」

「何?あれは大英雄アマカケの時代にのみ存在した、古代兵器ではなかったのか?」

「私もそう思っていましたが、どうやらいまだ健在のようです。既に球状形態から花弁状形態に変形しており、攻撃は時間の問題だと思われます」

「ボラサンごと吹き飛ばす気か…。我々には、サン・キラーに抗うだけの戦力はない。

 全ての指揮系統を大英雄アマカケの末裔だというマハク使いと、彼を奉ずるスナ族に移す。

 それだけは、全宇宙の辺境部族に向けて発信するんだ。いいな?」

「了解!」

「我々は、覚悟を決めよう。我らが滅びても、辺境部族同盟は滅びぬ。彼らに全てを託すのだ…」

「閣下、発信しました」

「よし、これで、全て良い…」


 そして、空を閃光が走り、彼らは、跡形もなく蒸発した。

2018.11.14. 後続の話の関係上、若干改稿しました。

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