魔王公邸侵入
「レイ、ベンさん。感じたか?
今、遥か彼方…恐らくは森の惑星で、何億もの命が一瞬にして失われた。それも、星系丸ごと消し飛ばされたようだ。
皇国が戦端を開いたのだろうが、かなり強力な兵器を投入できるらしい。
連中がそのような兵器を使用する前に、一気に終わらせよう」
「ええ…チキュウにも来るかもしれないしね」
「星系丸ごと…。まさか、伝説の古代兵器、デス・フラワーか?」
「ベンさん、知っているのか?」
「皇国側が、かつての戦争の際、サン・キラーと称していた、最終殲滅兵器だ。恒星に膨大な量の魔力を送り込んで、人工的に超新星爆発を引き起こし、星系を丸ごと吹き飛ばしたという。
尤も、1000年前の戦争では大きな役を果たしたものの、今では伝説に過ぎず、実在しない恐怖のシンボルという扱い…に表向きはなっているはずなんだけどね」
それを聞いて、レイが言う。
「サン・キラーなら、聞いたことはあるわね。魔装機兵と並ぶ、皇国の力の象徴とされているはず」
「ああ。だが、あれは巨大な人工惑星とでもいうべき兵器のはず。花とは、似ても似つかない気がするけど…」
「デス・フラワーは、攻撃を行う際には、球状の表層が大きく開いて、アンテナ状になるのだ。
表層は八つに裂け、真ん中から巨大な棒が出ており、裂けた表層の間を埋めるように電光が走る。
その姿は、見た者からすれば、まさに死の華だったという。想像するだに恐ろしい兵器だが…それを実際に使ったというのであれば、皇国も今回は本腰で反乱をつぶそうとしているのかもしれないね」
そう言って、ベンは顔をしかめる。
スナ族のシェイは、黙り込んで、何か考えているようであった。
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チキュウ魔王公邸。
チキュウ魔王は、サイバネティック監視辺境伯に語りかける。
「サイバネティック伯。感じるか?」
「ええ…。サン・キラーが使用されたようですね。
…映像が届きました。どうやら、ドラグーン監視辺境伯が、今回の騒乱の中心をボラピークのケブカ族だと断定したうえ、ボラサン星系丸ごと殲滅という手段に出たようです、陛下」
「そっちも重要だが、もう一つの動きだ…。マハク使い達は、直接ここに乗り込んで来ようとしている。
サイバネティック伯。麾下の魔装機兵を連れて、彼らを迎撃せよ」
「了解。サン・キラーはどうしますか?」
「そのまま待機だ。強力なマハク使いがいる以上、うかつに使用するべきではない」
「お言葉ですが、全てを吹き飛ばしてしまえばいいのではありませんか?陛下」
「ならぬ。かつて、大賊アマカケは、サン・キラーの魔力を跳ね返して、これを破壊したと伝えられている。
実際に彼がそれをやったのかは今となっては不明だが、それでも原理的な話としては、強力なマハク使いなら、理論上そういうことも可能だ。
だから、使うなら、奴らを確実に仕留めてからにせよ」
「仰せのままに、陛下」
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宇宙に浮かぶ魔王公邸には、本来はこれを包囲するようにして強力な識別結界が張られている。
このため、皇国の高官か、事前に謁見予定が立てられている場合かでなければ、通常は侵入できず、侵入を試みただけで塵になってしまうのであるが…。
リンは、そんなことを知ってか知らずしてか、スナ族が所有する小型魔宙船を操縦し、何事もなかったかのように平然と、公邸の魔宙船停留場に着陸させたのであった。
レイが言った。
「リン、さっき、何か鍵穴付きの壁のようなものを感じなかったかしら?」
「感じたよ。だから、それに沿う鍵をイメージして、差し込んだ。そしたら、あっさり開いちゃったでしょ?」
「壁に当たらずには入れたのは、そういうことだったのね。あれは、結界魔法の類だったのかしら?」
そこで、ベンが口を挟む。
「恐らくは特定の識別記号を持つ者のみを通す、高度な識別結界だ。
私にも感じられたが、かなり強力で、私には到底解除できそうもなかった。
仮にも魔王公邸だ、並みの結界よりはずっと強力だったはずだが…、流石だね、リン。
さて…お出迎えが来たようだ。露払いは、私にさせていただきたい」
ベンがそう言って指さした方向からは、魔装機兵の一団が彼らに向かって迫ってきていた。





