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世界の声が鳴る前に、俺たちは十のダンジョンを攻略していた――崩壊した日本で家族を守る高校生たちの拠点防衛記  作者: 竜太郎


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百二十を越える

【本文】

 午前二時までに、地域隔離網へ百二十六人が入った。

 表示上限を六人越えている。第四迷宮の空気循環が落ち、第八迷宮の水量警告が黄色に変わった。

 追い出す選択はなかった。千鶴は廊下を寝床へ変え、不要な区画の照明を消す。奈々は飲料水と生活用水を分け、トイレの洗浄回数を制限した。

 湊がポイントで収容上限を増やそうとしても、十人分に必要な値は現在の保有量を越えている。空欄報酬は反応しない。

 リブラが六本の腕で秤を示した。空気、水、熱、食料、寝床、管理者。どれか一つだけ増やしても収容人数にはならないという意味だった。

 鉄平は工場から換気扇を運び、ベルクが配管を作る。文は食料を一日三食で割るのではなく、年齢と作業量に応じて配分した。小春は体調の悪い人を第七迷宮へ集め、健康な避難者へ清掃と運搬を頼む。

 助けられた人をすぐ労働力として数えない。休息を取り、状況を理解し、本人ができることを選んでから担当を決めた。

 夜明け前、上限表示は百三十人へ変わった。

 迷宮が勝手に広がったのではない。人間が運び込んだ設備と役割分担を、隔離網が新しい維持能力として認めた結果だった。

 超過者が増えた原因は、入口担当が断れなかったからではない。救助班が連れ帰る人数を予測できず、地上側と地下側の点呼がずれたためだった。冬一は救助班が出発、発見、帰還するたび人数を無線で読み上げる方式へ変えた。受け入れ側は寝床と水を先に準備し、突然の増加を少しでも減らす。

 換気扇が動くと黄色の警告が消えた。上限は迷宮の気分ではなく、維持できる生活条件で変わると改めて確認できた。


(次話へ)

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