第六補助槽
【本文】
三日分の録音を重ねると、十一秒周期の文が一つだけ再現した。
《第六補助槽、児童避難区画、封鎖待機》。冷たい世界の声ではなく、掠れた保守音声と同じ響きだった。
学校で見つかったことは、児童名を外して地域網、体育館、病院へ共有する。発見者を特別な能力者として登録せず、授業と休息の時間を変えない。
現在の第六迷宮は薬局地下にある。だが《児童避難区画》は旧小学校を指す可能性がある。壁を壊さず、反響探査で奥行きを測る。
教室を調査区画だけにせず、予定していた読み書き、計算、遊びを続ける。壁の音が鳴っても、児童全員を観測当番へ集めない。
世界の声が報酬や即時解放を表示しても、地上の図面、避難経路、本人同意を先に確認する。分からない部分は推測で埋めず、次の観測時刻を決めた。
学校は血獣災害後に選んだ避難所ではなく、最初から何かを避難させる補助槽として作られていた疑いが生まれた。
佳乃は授業記録と設備記録を別冊にし、子どもの言葉を大人向けの管理用語へ勝手に書き換えなかった。
《第六》が迷宮番号か設備番号かも確定していない。薬局地下の第六迷宮と決めれば、学校側の区画番号を見落とす。奈々は図面へ候補を二つ残し、朔は壁の方向と距離だけを記す。児童避難区画という語も、子ども専用施設か、過去に児童がいた記録かを分けた。
観測後は教室の換気、電位、児童の体調を確認し、異常がなくても記録した。発見した子だけへ褒美を与えず、参加しなかった子の遊びと学習時間も同じように守る。
候補名はまだ仮のままにした。
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