来なかった席
【本文】
最初の授業に、名簿上の児童が一人来なかった。岩田の親族で、川の音を聞くと外へ出られないという。
佳乃は欠席を登校拒否と記さず、現在地と連絡希望だけを確認した。教材を届けても、提出期限や復帰日を付けない。
学校で見つかったことは、児童名を外して地域網、体育館、病院へ共有する。発見者を特別な能力者として登録せず、授業と休息の時間を変えない。
教室では岩田の事故を詳しく語らず、「戻っていない人」と「亡くなったと確認した人」の違いを説明する。質問へ分からないと答えることも認めた。
教室を調査区画だけにせず、予定していた読み書き、計算、遊びを続ける。壁の音が鳴っても、児童全員を観測当番へ集めない。
世界の声が報酬や即時解放を表示しても、地上の図面、避難経路、本人同意を先に確認する。分からない部分は推測で埋めず、次の観測時刻を決めた。
空いた席を誰かで埋めず、その子が戻るか戻らないかを自分で選べる場所として残した。
佳乃は授業記録と設備記録を別冊にし、子どもの言葉を大人向けの管理用語へ勝手に書き換えなかった。
欠席した子の友人が迎えに行きたいと言ったが、子どもだけでは行かせない。佳乃が家族へ連絡し、教材、遊び道具、返事の要らない短い手紙を届けた。教室では欠席理由を共有せず、席へ物を積まない。翌日の名簿にも出席予定を勝手に入れず、いつでも連絡できる窓口だけを残した。
観測後は教室の換気、電位、児童の体調を確認し、異常がなくても記録した。発見した子だけへ褒美を与えず、参加しなかった子の遊びと学習時間も同じように守る。
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